#6 俺の布団と女騎士と……夜の来客。
『……殺せ』
「は?」
――俺の布団の中に現れた謎の自殺志願者は、雨上がりに太陽の光を透して見た紅葉のような、瑞々しい萌ゆる赤髪をした美しき少女。
白銀の鎧を身に付けていることから、恐らくは女騎士だろう。
その美少女女騎士が、この世の終わりみたいな顔で、俺に向かって意味不明な命令を吹っ掛けていた。
「いま、なんて?」
『……だから、早く私を殺せと言ってるだろうッ!! このスットコドッコイがッ!!』
「帰れっ!!」
なんなの!? 俺に殺人の片棒を担がせたいの!?
昨日のおっさんといい今日といいなんなのよ!?
俺なにか天罰受けるようなことした!?
『……シラを切るな!! 私は既に、ブタ野郎の貴様に、薄汚いブタ野郎の貴様に、散々蹂躙されて、は、は、孕んだ後だというのは判明しているッ!!!! 早く一思いに殺れーーッ!!』
「いいから出てけ!」
なんなんだコイツは!? ああもう、どうしよう!? どうすればいいだろう!?
そうだ!
「じゃ、俺は寝るから起こすなよ。おやすみ」
俺はそう言うと、頭まで布団を被ってワレ関せずモードに入った。
『……な、なんて奴だ……。私を弄んだくせに、なんの責任も取らずにその余裕の態度……』
俺の背中越しに何かワナワナと震えている気配を感じるが、どうでもいいな。
とにかく俺は、安眠が欲しいのだ。クレイジー系女子の相手をするよりも睡眠欲が勝る。
なんせ、睡眠不足すぎて目の下に熊の動物園が出来そうなほどだからな。
『……突如、我が星が謎の侵略生命体《DOPA(でかいおおきいパワーあるの略)》に襲われ、人類は私一人だけになり、やっと見付けた希望の遺跡で運命の異性に巡り合って、我が種を増やすはずだったのに……』
聞いてもないのにまた語り始めたぞってか、無駄に重い話だな。それマジ? マジなの?
「大変そうだな。まあ頑張れよ。必要なら俺の部屋にあるメシは持って帰っていいぞ」
『……手切れ金か?』
「なんのだよ!!」
『養育費も出せ!!!!』
「おいやめろ! きゃっ、ヘンなとこ触らないでーっ」
人類が一人なら養育費とか今さらいらんだろ!! それより剥ぐな、俺の布団と服を剥ぐな!!
俺と女騎士が揉みくちゃになりながら争っていると、玄関から控え目なノック音が聞こえてきた。誰だよこんな遅くに。
「……先、輩? いますか?」