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#4 俺の布団とプロロー……それと後輩。


 月明かりの下で、俺の手を、別れを名残惜しむように、包むようにして握る友の姿が、蛍を纏わせた燐光のような粒子と共に、霞んでいく。


 ――時間が、来たのだ。


 俺のこの厄介な力で、異世界人がこっちの世界に居られる時間は、そう長くない。


 時間が来れば、俺の非日常は終わりを告げ、普通の日常が始まるのだ。そう、まるで魔法が解けた、シンデレラのように。


「――友よ。最期なんて、言うなよ。諦めたらそこで、酒池肉林終了だぜ……? 一から頑張れば、きっとまた、やり直せるさ……」


『……お主……。そうだな、その通りだ……。ありがとう、ワシはお主に出逢えたことが、何よりの幸せであった。このことは、生涯忘れないであろう……。では、この世の運命と因果の果てで、また会おう。――――友よ。』


「ああ。良い、夢を。マイ・ベスト・フレンド……」


 我が友は、フッと笑うと、この世から姿を消した。ただ一つ、血糊ちのりで鈍く輝く、ベコベコの王冠を残して。





 ――朝。とある貴金属買取ショップにて――


「ありがとうございましたー!」


「畜生っ!! たった3円かよふざけやがって!!」


 なんてこった! あの王冠どれだけスゲーもんかと思ったら、ただの鉄板金メッキの糞オモチャじゃねえか!


 コレじゃあクロの飯どころか5円チョコも買えねーよクソが! あのおっさん民草にもっとボコボコにされたらいいのに!


 それに、よくよく考えるとあのおっさんが王様だって話も怪しい! 自称王様で、全裸の変質者が顔面ボコボコにされただけって可能性もある。むしろこっちの方が自然だな!


「畜生……。せめてあと2円あればよォー……」


 俺は自販機の下に手を伸ばすと、ゴソゴソと100円玉を探した。それを交番に届けて、持ち主が現れなければ俺の儲けになるだろう。


 意地汚くて結構。これが弱肉強食であり、自然の摂理である。俺の能力の都合上、出費が激しいので仕方ないという言い訳もある。


 まあ、知り合いに見られたら死ぬしかないが、どうせ知り合いは誰も見てないし、俺はハイエナと化すだけだ。


 ――俺が自販機の下を漁りに漁っていたその時。背後から夏の音色のような、風鈴のような声が、甘い風に乗って俺の鼓膜をくすぐった。


「……先、輩? そこで何してるんですか?」


 おッ……と。これはこれは、どうしたものか。はっはっは。


 よし、死ぬか。

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