#3 俺の布団とプロローグ。その3。
『――――友よ。お主は、ワシに似ている』
「似てないぞ」
『だからこそ、我が国最後にして最大の至宝、《ゲスリヌスの冠》を授けるのだ……』
まるで、憑き物が落ちたような、穏やで、キラキラとさせた瞳を俺に向けながら、おっさんが俺の頭にベコベコにへっこんだ王冠を乗せる。
って、よく見たら血まみれじゃねえか、コレ!?
『……フフ。似合うな。まるで、若い頃のワシを見ているようだ……。これで、この冠と我が国はお主の物だ。おめでとう、ゲスリヌス十三世よ』
「おいちょっと待て。アンタの国がなんだって? そんなもん受け取れる訳が」
『ちなみにこの秘宝1つで、国の1つや2つは軽く買えるのだが、』
「イエス。マイ・ロード。有り難く頂戴した。おっさんの、いや、我が友の意志は、確かにこの俺が受け取ったぜ!」
俺はおっさん、じゃなくて我が心の友の手を強く握り返すと、熱く頷いた。ククク。これを売れば、俺が億万長者になるのは間違いないだろう。
俺のこの糞みたいな能力も、たまには役に立つもんだな。ありがとう、俺。ありがとう、俺の能力。前祝いに、僅かに残った貯金で盛大に祝うとするか!
『――買えるのだが、その価値を知らぬ民草が、オモチャの王冠などいらぬと言って、ベコベコにしおってな』
「なんてふてぇ民草なんだ! 許せねえな! もっと大砲ブチ込んでやればいいのに!」
『わかるか、友よ!』
「わかるさ、友よ!」
布団の中で、俺は顔面ボコボコの全裸のおっさんとガッシと抱き合うと、二人で涙を流し始めた。
なんという美しい光景であろうか。これが、真の友情だ。これが、子ども達が学ぶべき、大人の姿なのだ!
『良いか、友よ。その冠は、絶対に売ってはならぬぞ。絶対の絶対に、売ってはならんからな』
「ああ、任せろ友よ! それで、他に金目の物はあるか?」
『すまぬな、友よ。ワシを裏切った大臣達が、隠していたヘソクリすらも奪いおったのだ』
「な、なんてクソ共なんだ! 許せねえな! もっと寝取られたらいいのに!」
『わかるか、友よ……』
「わかるさ、マイ・フレンド……」
涙を流しながら、友は俺の手を包み込むと、その額にそっと寄せていく。
理解者が現れたことが余程嬉しかったのか、肩を震わせながら小さく泣いているおっさんの姿は、まるで幼い少女のように儚げに見えた。
『友よ。最期に、良い夢を見れたよ……』