#1 俺の布団とプロローグその1
前書き
主にガラケーから強引に投稿しているので1000文字きつきつ投稿です。
――初夏の日差しに新緑が輝き、その輝きに負けじと、子ども達からは若葉のような瑞々しい笑顔がこぼれている。
実に、平和な光景だ。見ているだけで優しい気持ちになれそうな、そんな、木漏れ日のような、穏やかな日常。
窓の外から見えるそのまほろびの景色を、目を細めながら眺めると、俺は、憂いを帯びた溜め息をついた。
「今夜も、ヤバくなりそうだぜ……」
振り返ると、そこには畳敷きの部屋に敷かれた一組の布団。その上には、丸くなって寝ている、一匹の黒猫。
いかにも潜り混んでみたくなるような、惰眠を貪りたくなるような、そんな雰囲気を醸し出しているが、今はそうも言ってられない。
誘惑に駆られていてはいけないのだ。何故なら――。
◇
「ッらっしゃーせぇー!」
「はい鳥カラ上がッてぇー!」
……居酒屋でバイトだからである。
「オーダー入ります! 鳥鍋3、塩串セット5、タレ串セット5、イカ焼き3!」
「あ、あいよ!(し、しんどー!)」
気化した油と汗と何かにまみれながら、俺はぶひひふひふひぃぃと厨房を駆け回る。
こんなにもヘロヘロになっている原因は、他でもない。昨日の夜は“特段イカレた奴が布団に来やがった”から、俺は寝不足なのだ。
「はい鳥鍋上がッてぇー!」
……それにしても、アカン。眠すぎる! このままでは、ヒヤリハットで済まんかもしれん!
俺の平和の為にも、今夜はまともな人物でありますように……!
◇
帰宅後、猫の《クロ》に飯をやり、シャワーを浴びた後、気付けば夜の12時を回っていた。
さっさと爆睡したい所だが、俺の場合はそうもいかない。俺の布団、いや、俺の“寝ようとする意思の強さ”に秘密があるからだ。
「ったく、毎日がロシアンルーレットだぜ……」
うんざりしながら布団に入り、視界の反対方向を見ると、そこには。
『……』
「……おっさんかよ……」
顔面がボッコボコになった見ず知らずのおっさんが、俺の隣で静かに寝ていた。その頭には、ベコベコのベコに凹んだボロい王冠が乗っかっている。
『……』
「……で、アンタ誰?」
『……王だが、何か?』
「……そっか。じゃあお休み」
物静かで無害そうなおっさんだし、無視してさっさと寝るとするか。
『――そう、あれは、ワシが50歳になった頃であった……』
ちょ、何も聞いてないのに突然語り始めたぞ!?