3-5
翌日。僕の未来が確定する日。ロックくんに見送られ、気合を入れて学院に向かう。
僕が受ける、初級冥府魔術の試験は屋外で行われる。術を行使して、インプを召喚するというもの。高レベルのインプを召喚できれば高い評価を得られる。
試験を受けるのは僕とイオンさんの二人だけだった。
担当のキューク先生が言葉少なく説明し、イオンさんから試験が始まる。
「ん?」
見学していると、草むらからひょっこりと黒いウサギが顔を出した。右目に傷がある。怪我を治したあのウサギだ。目の傷は古いものだったようで、僕の治癒では治らなかったようだ。
そいつは僕の姿を認めると、とことことやってきて膝の上にぴょこんと乗った。
「一緒に見るか?」
イオンさんの試験をひとりと一匹で眺める。
ほどなくして、僕の番がやってきた。
「そこで僕のことも見守っててくれよ」
ウサギを残し、呼びに来たイオンさんとバトンタッチ。試験に挑む。
高いレベルのものを異界から呼び出そうとすると、弱い魔力では制御が難しく、危険が伴う。普通にやっただけじゃ合格点に達しないかもしれない。
だから。
「我が内に流れる魔力よ! 異界の門に繋がり彼の者を呼び出さん! サモン・インプ!」
土に描いた幾何学模様の魔術陣が光り出し、ゆっくりと中からそれが這い出てくる。
膝下くらいの小ささでも、異界の魔神インプだ。
これで終わりじゃない。
「続けて行使する。彼の者を呼び出さん! サモン・インプ!」
もう一度唱えると、再び魔術陣の中から小さなインプが現れた。
二匹のインプが僕の前にいる。
戦った個体とは違う、なんだか愛嬌のある顔立ちをしていた。
これが僕の考えた策。一匹のレベルが低いなら、もう一匹呼び出す。
「……ほう」
キューク先生が軽く驚いたのがわかった。今までこんなことをした学生はいなかったのだろう。どう評価してくれるかわからなかったけど、好感触と見ていいのかな?
呼び出したインプを還すと試験は終了した。
「これで試験は終わりだ。明日の朝、各寮に結果を送る。今後のことはそれに従うように。ご苦労だった」
やはり言葉少なく、先生は戻っていった。
これでやることは全てやった。結果を待つだけ。
「……終わったね」
僕の見た感じだと、イオンさんは何の不備不足はなかったように感じる。心配はいらないだろう。
この後は合流したロックくんを含めて会話をしたようだけど、緊張感とともに魂の抜けた僕は頭が真っ白でよく覚えてない。
そして。
眠れない夜が明けて。
「………………」
ガチガチに固まって結果を待つ。
今か今かとドアの前で耳をそばたて、廊下の足音にいちいちドキドキする。早く結果を知りたい、いやこのまま永遠のときが過ぎればいいのに、と気持ちがぐるぐる廻っていると、ドアの隙間から紙が差しこまれた。
追試験結果。
冷や汗で冷たい手で、その紙を開く。
『ライト・アングル――――上記の者を実力不十分と判定し、退学に処す。』
全身から汗が噴き出た。