ジンジャーエール
グラスに浮かぶ氷を眺める。
炭酸がまとわりついて、
時折、からりと揺れている。
冷やされたグラスが部屋の温度で結露していく。
私はやはり、それをただ眺めている。
何をしたい訳では無い。
当然、何がある訳でもない。
口をつける訳でも、香りが楽しめる訳でも無い。
それでも、ただ眺めている。
結露した水滴で机が濡れる。
氷が溶けて、コップの中のそれが薄まっていく。
からり、溶けた氷が揺れた。
私はようやくグラスを手にして。
ゆっくり、口をつける。
ひとくち、
ふたくち、
そうして鼻を抜けるツンとした辛味に、
強い炭酸にぐっと目を瞑り、
じわりと浮かんだ涙が零れた。