竹田風太は休日の過ごし方を間違える。
休日・・・
一般の人は、友達と遊びに行ったり、彼氏または彼女とデートに行ったり、家族で買い物に行ったり、休日は人と一緒に過ごすことが多いだろう。
でも、俺はそんなことしない。ひたすら家でゴロゴロ、または1人で出かけるぐらいだな。まあ、たまにあるとすれば、家族の買い物に付き合わされることぐらいだろう。
そう、今日は休日だ。バイトを始めてからというもの、働きっぱなしで休めていない。
面接に行った時、いつでも行けますと言ったばかりに、学校以外の日は8時間労働だ。コンビニバイトは思いのほかやることが多い。ここに書ききれないほどだ。愚痴はこの辺にして、今日はひたすら寝ます!おやすみ。
「ふーちゃん起きなさい。良太が帰ってきたわよ。」
と、母さんが起こしにきた。
心地よく寝てたのに・・・なんで、今日兄ちゃんが帰ってくんだよ。俺は起き上がり、自分の部屋からリビングに行くと
「風太、久しぶり!元気してたか。」
兄が清潔感ある笑顔で俺を迎えた。
「ま、まあ元気だけど。てか、なんで急に帰ってきたの?」
というと、兄は、俺に近づいてバシバシ俺の腕を叩きながら
「そりゃあ、風太に会いにきたからだよ。学校ちゃんと行ってるのか?」
「ちゃんと行ってるよ。」
というと兄はオォーと驚いていた。
「そんな驚くことじゃないでしょ?」
「いやいや、あんなことがあったのに、風太がしっかり学校通えてるのはすごいよ。」
兄は感心していた。たしかに、そうかも。
兄は当たり前だが不登校になっていない。顔はイケメンで、細マッチョとかいう理想の体型で、友達もたくさんいて、頭もよくて、彼女もいて、神戸で公務員として働いている、いわゆるリア充ってやつだ。正直嫉妬している。なぜ、同じ血が流れているはずなのにここまで違うのだろうか。ほんと自分が嫌になるんだよ、兄ちゃんがいると。
兄が帰ってきて、しばらくが経った。兄は持ってきた荷物を片付けおわり、ソファーに座って深いため息を吐いた。
「いやぁー、ツカレター。」
「あっそ。」
俺が素っ気ない反応をすると、兄は急に立ち上がり
「疲れたから、買い物行くか!風太、一緒に来い。」
「は?」
「いいからついてこいって。」
俺は兄に腕を掴まれ連れていかれた。
「どこ行くんだよ?」
「んー、とりまイオンだな。」
何その考えなし。姫路市民のとりあえずイオン行っとけ感は異常。まあ確かに、ここぐらいしかまともなショッピングモールないしな。俺は兄の車に乗せられイオンへと向かった。
兄は、最近新車を買った。結構高いやつで、親よりいい車を乗ってるから、親父がブチ切れてたよ。でも高いから乗り心地最高だな、寝れるぜ。
俺はその高級車のフワフワした乗り心地に感動していると、兄が
「風太、彼女できたか?」
と聞いては行けない質問をしてくる。
「い、いないよ。いたことすらない。」
というと、兄はケラケラ笑いながら
「そりゃそうだよな。風太にできるわけないよな。」
とバカにしてくる。俺は、腹がたったので言い返そうとしたが、結局負けてしまうので
「そう。できるわけがない。でも、痩せたらできるかな・・・」
「おい、風太。外見が重要なんじゃないぞ、気持ちとコミュ力だ。」
と恋愛マスターが言ってくる。それ言ってるやつ大抵イケメンなんだよなぁ・・・と世の中の不思議に嫌気がさしてしまった。
「兄ちゃんがいうとイラっとする。」
「なんでだよ!本当のことを言ってるぞ。」
イケメンには、俺たちの気持ちなんて一生わからないぜ。てか、わかられてたまるか。
イオンについた。姫路の中ではデカイ方だ。「何か買いに行こうぜ」ってなると大抵「イオンで買うか。」ってなる。あとは中学生になると、まずはチャリでここに行くことになる。やっと校区外に出れる喜びから、みんなそうすることが多かった。やばいやつだと毎日行ってたよ。と姫路あるあるを言いたくなっていると、兄が
「何する?」
「え、決めてないの?」
と逆質問する。すると兄は当たり前じゃんって顔をしていた。かといって俺も別にすることないしなぁーと思ってると
「そうだ!風太の服買おう。」
「は?今ので充分だよ。」
「だめだめ、ダサすぎるよ。」
と今のジャージ姿をバカにしてくる。そんなにダサいの、俺?どんどん自信がなくなっていると
「とりあえず、見に行こう。」
兄に腕を引っ張られ連れていかれた。
しばらくまわったが、兄がうーんと頭を抱えながら、悩んでいた。
「兄ちゃん、どうした?」
「いや、姫路なめてたわ。」
と訳がわからないことを言っている。
「いや、どういうこと?」
「いや、神戸はもっといっぱいあるんだけどなぁー。なんせここは服屋が少なすぎる。」
どうする?みたいな顔でこちらを見てくる。いや、わかんないよ。服なんて親まかせだし・・・俺も一緒に悩んでいると、兄がブツブツ言っている。
「姫路駅周辺の方が良かったか。いやいやあそこもあんまりなかったしなぁー、いっそのこと神戸に行っちゃう方が・・・」
最後のは絶対阻止しないと、1日潰れちゃう。と思い
「もう、いいじゃんここで。ここでできる最高のファッションでいいよ。」
「そう?じゃあそうしよう。」
切り替え早すぎん?兄ちゃん。
「今は、アウトドア系ブランドが流行ってるんだよ。」
と、得意げに兄は言ってくる。
「こんな、山登りしてます感丸出しの服が?」
「よく見るだろ?ほら、これとかさ。」
と掛けてあった服を兄は取り出して見せてくる。
「たしかに、見たことあるかも。」
「だろ?だからこれ買おう。着ていて楽だし。」
見たことあるって言っただけで買うとは言ってないんですけど・・・
「え、俺が買うの?」
「風太・・・兄ちゃんはそんなクソ野郎じゃないんだけどなぁ。」
兄は少し落ち込んでいた。
「買ってくれるんだね。ごめん。」
俺は申し訳なくなった。でも、この服2万するんですけど、高すぎない?
そのあとも、兄はズボンや靴など、ほぼ一式揃えてくれた。全部で5万くらいかな・・・ほんとありがとう、兄ちゃん。俺もいずれ何かお返ししないとな。
「兄ちゃん、服買ってくれてありがとう。」
「いいんだよ。これで、風太に彼女出来たら。」
兄がニコニコ、俺を見ながら言ってくる。
「これでできたらみんな苦労しないよ・・・」
「でも、印象はバッチリだな。」
と兄は手をグッドにしている。ほんと、明るいな兄ちゃん。
俺と兄は、車に乗り、なんでもない会話をしながら、家を目指していた。
「服買ってくれてほんとありがとう。」
と俺は、5万も使ってくれた兄に再び感謝した。兄は笑顔で
「いいってことよ。」
と言った。いい兄を持ったなぁ、俺もいい弟にならないとなぁと考えていると、笑顔だった兄が真面目な顔になり
「それに、今まで兄ちゃんらしいことしてやれなかったし・・・」
そんなことはない。むしろ俺の方が弟らしくなかった。兄に嫉妬して、頼ることなく今までやってきた。
「そんなことない・・・俺の最高の兄ちゃんだよ。」
不器用だが、兄に今までの感謝の気持ちを伝えた。すると兄は少し恥ずかしそうにしながら
「・・・そうか。ありがとう。」
俺たちの伝え方は少し不器用だった。だが、これが兄弟の証拠なのだ。今まで伝えれなかった感謝を伝えることができた。こんな休日もたまにはアリなのかもしれない。そう思ってしまった。
「あ、そうだ!兄ちゃんもうすぐ結婚するからな。」
「は?」
こんなところも兄ちゃんらしいな・・・