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竹田風太は勉強を教えるのが上手。

初めての女の子とのランチがおわった。2人で3000円と、バイトしてない俺からすると、痛い出費だが幸せそうな顔が見れたので良しとしよう。高いランチに連れて行く彼氏の気持ちを理解しつつ、学校を目指して中島と並んで歩いていると、俺の顔を覗き込み

「ふーちゃん、ごちそうさま。」

と控えめに甘えた声で言ってくる。そんなこと言われると毎日奢っちゃう、とバカなことを考えてしまう。

「いいよいいよ。幸せそうに食べてたからいいよ。」

「そんなこと言われると少し恥ずかしいから。」

中島は顔を赤く染めていた。俺はその顔をチラッと確認しつつ、からかうように

「ほら、そうやって恥ずかしがるとこも良い。」

「ほんと、やめて・・・あなたみたいなのに言われるの腹が立つ。」

「え、ごめん。」

少し怒られたが、またそこも良い。だってドMなんだもん。






学校に着くと、4時間目の始まる時間が迫っていた。

「次、なんだっけ?」

と俺は聞いた。すると中島はうーんと思い出しながら答える。

「えーと、数学かな。」

「お!俺の得意科目じゃん。」

「そうなの!?」

と少しビックリした顔をしている。そんなにビックリすることじゃないと思うけど。

「まあ、数学は中学一年の時、100点取ったからな。」

俺はめちゃくちゃ鼻を伸ばしながら言った。

「へー、すっごーい。」

と、うわぁーみたいな顔で言ってくる。自慢できるのそれしかないんだもん、それぐらい許して。と他に褒めることがない自分の情けなさに嫌になっていると、中島が手を後ろに組んで俺の方を見るように身体を傾けながら

「じゃあ、わからないとこ教えてね。」

「いいぞ。手取り足取り教えてやる。」

と俺が得意げに言うと、中島は手を前に出して

「あ、あんまり近づかないで教えてね。」

と警戒する目つきで言ってくる。いや、手取り足取りって言う言い方は悪かったかもしれないけど、そう言う意味じゃないから。決してスケベ上司がいろいろ教えるやつじゃないから。

「いや、どうやって近づかず教えるんだ?直接脳内に伝えればいいのか?」

「そうしてもらえるとありがたいよ。」

中島はまだ警戒している。まあいい、しっかり教えてやる。グヘヘ。あ、冗談です。






俺たちは、数学の授業が行われる教室についた。ドアを開けて、席は自由なので隣同士になれる席を探し、着席した。俺と中島は、必要な教科書と筆記用具を机に広げてチャイムが鳴るのを待っていた。

「中島は、数学どれくらいできるんだ?」

と聞くと、答えにくそうにモジモジしながら

「えーと・・・九九はできるかな。」

「そ、そうか。」

あまりに予想外で、それ以上言葉がでなかった。でも九九さえできるのであれば、時間さえかければ数学なんて普通にこなせるようになると思う。多分。

「じゃあ、アレだな。月曜日は特訓の日だ。」

「嫌。数学なんて必要ないし。」

と中島は開き直った。確かに俺も昔は必要なくね?とか思ってたけど、一番必要な教科だと思う。論理的思考を養うためには必要だし。

「必要だぞー。社会に出るといっぱい使うらしいしな。」

「なんで?」

と中島は首を傾げていた。俺は手でいろいろ表現しながら

「あのだな、これがああで・・・こうなるんだよ。」

途中から何言っているのか自分でもわからなかった。中島もキョトンとした顔で俺を見つめる。

「よくわからないけど・・・。」

「それは、勉強するとわかる!多分。」

「ほんとかなー?」

中島はまだ、俺に疑いの目を向けている。

「ほんとだって。何事もやってみることが重要だ。」

「まあ、やってみるけどさ・・・」

そう、それでいい。ダイエットもやることが重要だしね。続かないけど・・・






数学の授業が始まった。といっても中学生レベルのものだ。俺は、不登校の時は暇さえあればチマチマ勉強していた。そんな俺からすればチョチョイのチョイだ。俺は出されたプリントを全て解き、フーと息を吐いてチラッと中島の方を見やると、うーんと唸りながらペンを回していた。

「ふーちゃん?ちょっとわかんないんだけど。」

「どれだ?」

俺は体を中島の方に寄せどの問題かを確認した。

「これなんだけど・・・」

と指をさした。

「あー、これな。」

俺は、先生から白紙のプリントをもらって説明した。



「ふーちゃん・・・太いのに賢いね。」

「どういうことだよ・・・てか太さ関係ないだろ?デブに失礼だ。」

「あ、ごめん。」

と中島がニヤニヤしながら言ってきやがる。こいつ教えてやったのになんなの?と、今にも某世紀末漫画みたいに服を破りそうになっていると、中島が

「ふーちゃんは、そのままの方がかわいいから言ったんだよ。」

と何の気なしに言う。突然のかわいい発言に、俺は、顔を赤くしていた。

「でも、みんなには痩せろとかよく言われからなぁー。辛い。」

「 世間的には痩せた方がいいかもね。でも、私はそのままの方がふーちゃんらしいと思う。」

と中島は少し上の方を見ながら言った。ふーちゃんらしいか・・・そんなこと初めて言われた。いつも痩せろとか罵倒されることが多かったからなぁ。

人が傷つくかもしれない言葉は簡単にはわからない。俺はデブと言われても傷つかないが、痩せろと言われると傷つく。同じことかもしれないが、痩せろは自分らしさを否定されているそんな気がするからだ。

あんなことを何気なしに言える中島は、本当に人の気持ちというものを理解しているのだろう。まだ俺には人の気持ちを理解することはできないが、少なくとも中島の気持ちだけは、今でも理解できるのかもしれないと感じた。






数学の授業が終わり、俺は今日受ける授業がなくなった。

「俺、今日受けるやつ終わったわ。」

と言うと中島は少し悲しそうな顔をしながら

「そ、そう。私はあと1時間受けないといけないから・・・」

普段の俺なら帰っているだろう。でもあんなこと言われたから、帰れない。

「1時間ぐらいなら待つよ。自習室でレポートでも仕上げとく。」

と言うと悲しい顔をしていた中島に笑顔が戻った。

「ほんと?じゃあ待っててね。すぐ終わらすから。」

と言い、次の授業がある教室に走っていった。すぐ終わらすって・・・ちゃんと授業は50分受けてね。俺は1人心の中でツッコミながら自習室に向かった。





自習室では、各々生徒がレポートを仕上げていたり、グループで談笑していたり様々だ。俺は、そんななか黙々とレポートをやっていた。

すると誰かが、俺の肩をトントンと叩いた。俺が振り返ると、ロック好きなヤンキーぽい胸がたわわなやつがいた。そう、西川 英玲奈だ。すると西川は恥ずかしそうにしながら

「あ、あのさ、レポートでわかんないとこあんだけどおしえてくれない?」

「い、いいけど。どこだ?」

と言うと、西川は机にレポートをドンッと置いてきた。

「ここなんだけど、どうやんの?」

「ちょっと怖い・・・」

と俺が怯えていると、あん?と言わんばかりに睨んでくる。さっきの恥ずかしそうな乙女な感じどこいったの?

「あ、ここはですね・・・」

とレポートの空いているところに書き込みながら教えた。




「竹田だっけ?あんたすごいじゃん。」

と認めたように言ってくる。もしかしてヤンキー検定合格ですか。

「すごいでしょ?ハハハ・・・」

と言うと、うんうんうんと頷いてた。そして俺の机に手を乗せて、前のめりになりながら

「今度から・・・その・・・よろしくね。」

と顔を赤くして俺を見つめていた。俺は見つめられていて恥ずかしくなり、顔の下の方を見ても、エベレストが2つあり、目のやりどころに困ってしまった。俺は横の方に目をやり

「お、おう。いつでも言ってくれ。」

それを聞いた西川はにっこりしながら頷き、自習室から出ていった。嵐のように去っていった。いや、山か。






そんなことをしていると、5時間目がそろそろ終了する時間だった。俺は片付けてリュックに荷物を詰めて準備万端だった。だが終了まで少し時間が余り暇をしていたが、あ!と思いつき、中島にジュース買っておこう!と、学校内に1つだけある自販機を目指した。

自販機にたどり着き、中島はなにが好みなんだろうと考えていた。

「とりあえず、女の子は紅茶系だな。ミルクティーにしよう。」

と独り言をブツブツ言いながら買っていた。俺はコーヒーが好きなのでいつもの虹色コーヒーを買った。これでもし紅茶が嫌いでもコーヒーを渡せばいけるな。我天才。と自画自賛していると少し考えてモタモタしていたのでチャイムが鳴ってしまった。早く戻らないと帰ったと思われてしまう。






俺は少し小走りしながら自習室を目指した。すると前から中島がキョロキョロ探しながら歩いてくる。俺は気づいてもらうため大きく聞こえるように

「おーい。」

というと中島は手を大きく振っていた。俺は早く中島の元に行くためスピードを上げた。

中島のもとまでたどり着くと、中島が頬を膨らまして

「先に帰ったと思った。」

と少し怒っている。

「あー、すまんすまん。これ買ってたからさ。」

と俺は買ったミルクティーを差し出した。すると中島はキョトンとした顔で受け取った。

「ミルクティーでよかったか?コーヒーが良かったら交換するけど。」

と俺がいうと、中島は首を横に振り

「ううん。私、ミルクティー好きだから・・・あの、その、ありがとう。」

と顔が赤く鳴っているのを隠そうと下を向きながら言う。

「いや、いいんだよ。今日は感謝してるしな。」

「感謝されるようなことしたかな?」

と中島が思い出していた。

「いや、したんだよ。俺がそう思ってるから。」

「そう、まあいいけど・・・じゃあ帰ろっか?」

中島はニコニコしながら言った。

「そだな。」

そう言って、俺たちは下校した。俺はコーヒーを開けて飲んでいると、中島が

「開けて?」

とペットボトルを差し出してくる。俺はそれを受け取り、開けて、渡した。

それを受け取った中島はホッコリした顔で、見つめてから飲んだ。

俺も中島もつめたいものを飲んでいたが、温かいものを飲んでいるくらい、それぐらい心が熱くなっていた。そんな気がする。



























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