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竹田風太は初めて女の子とランチに行く。


俺は、通学路を歩いているが、いつもと周りの様子が違う。なんてったって今日は月曜日だからだ。学生服を着た高校生たちがうじゃうじゃとチャリンコに乗って学校に向かっている。え、なんで月曜日に登校してるかって?・・・早く単位に必要な授業数をこなしたいからだよ!なんせ、日曜と月曜は同じ授業をやっていて、日曜だけ行く人より2倍の授業数が稼げるからおトク。そう、だから行くのだ!月曜日暇だし・・・






学校につき、教室に向かっていると普通科の生徒とよくすれちがう。そう、前にも説明したが、我が綱手高校は普通科と通信制両方あるので月曜日は普通科の生徒と学校内ですれ違うことが多い。これがまたキツくて変な目で見られることが多いのだ。あいつ誰だよ的な、ヒソヒソ話してるしほんとやめて。学校ぐらい普通に行かせろ。






教室のドアを開けると、月曜日ということもあり人が疎らにいる程度だった。今日は加藤さんも仕事なので来れないはずだしな。俺は教室のドアを閉め、適当に席につき、スマホゲームに勤しんでいると、教室のドアがガラガラと開く。その音を聞いてドアの方を見やると、そこには中島がいて、そのまま歩いて俺の隣の席に座った。すると中島が

「おはよう。不正くん。」

口調は優しかったが少し棘を感じた。てか、まだ疑ってるのこの子。俺は疑いを晴らそうと口を動かす。

「おはよう。いやまだ疑ってるの?ほんとなにも悪いことしてないよ。俺がそんなことするわけないじゃん。」

「そういうことしそうだから疑ってるの。」

と疑いの眼差しで俺を見てくる。冤罪ってこんな気持ちなのね。俺は悲しくなりながらも信じてもらえるように弁解する。

「どんな奴だと思われてるんだよ・・・ほんとにやってないから。潔白だ。」

「卑屈で口の悪いのに信じるわけないでしょ?」

「じゃあ、なにしたら信じてくれるんだよ・・・」

「うーん・・・なんか奢ってくれたら信じてあげる。」

と中島がニコニコしながら言ってくる。それが目的か、策士中島!!まあ、ジュースぐらい買えばいいだろ、ここは折れて信じてもらうか。

「わかったよ!それで信じてもらえるなら安いし。」

「やった!じゃあ昼休みよろしくねー。」

中島はホクホク顔でヤッターと小声で言っている。普通なら嫌だけど、中島のその姿可愛いから許しちゃう!でも、まてよ。昼休み・・・もしかして昼飯奢れっていうのかよ。






朝のホームルームが終わり、音楽の授業を受けるため席から立ち上がると、中島も同じタイミングで立ち上がった。そうだな、同じ授業受けるなら一緒に行ったほうがいいよな、と思い問いかける。

「なに受けるんだ?」

「音楽だけど。」

「俺と一緒だな・・・じゃあ一緒に行くか。」

「そ、そうだね。」

中島はすこし恥ずかしそうにしていた。一緒に歩いてるとカップルと思われちゃうしね。俺はそういうのは気にしないタイプだ。というよりこんな美人と一緒に歩いてると普通科の生徒に変な目で見られなくて済む。目くらましだよ。やましい気持ちはないからね。

あれ、おかしいな?ずっと俺の真後ろのすこし離れたところで中島が歩いてるんだけど。一緒に行くというのは横にいるもんじゃないの?これじゃ目くらましにならないよと思い後ろを振り返ると、中島はすこしびっくりして

「え、なに?」

「いや、わざわざ真後ろで歩かなくても。」

「だって、普通科の人に見られるのが恥ずかしいんだもん。」

とモジモジ手を動かしながら恥ずかしそうにしている。たしかにそうだなと思い

「そりゃそうだ。こんなデブと歩くの恥ずかしいよな。」

と言った。イケメンだったらそう思わないだろうけどと考えていると、中島はちがうと首を振った。

「そういうことじゃなくてさ、普通科の人に誰?みたいな感じで見られるじゃない。あれが苦手なの。」

「あー、そゆこと。まあ、たしかにあの目は苦手だな。」

「だよね!わかってくれる人がいてよかった。」

中島は微笑みながらそう言った。俺は

「俺もよかったよ。同じこと思ってる人がいて。」

デブと一緒に歩くの大半は嫌がるんだけどなぁ。まあ少なくとも彼女はちがうみたいだ。すこし嬉しいなと思いつつ俺は再び歩きだした。俺は中島が変な目線で見られぬよう巨体で守りながら、俺たちは再度音楽室を目指した。







みっちり2時間音楽の授業を受けた。ちょっと疲れたがあと1時間で昼休みだな。頑張るか。えーとつぎはなにを受けるんだとプリントを確認していると、中島が横にきてプリントの一点を場所を指差す。

「私は地学受けるよ。」

「また一緒だな。」

「不満でもあるの?」

とすこしムッとした顔をしている。こういう時は質問をして誤魔化そう。

「てか、今年はどの教科受けてるんだ?」

それを聞いた中島は指で数えながら

「えーと、音楽と地学と数学と体育と・・・・・・・・英語かな。」

「ほとんど一緒じゃん。」

とあまりの一致にすこし引いてしまった。でも、話をしながら受けたら授業も退屈ではなくなるしな。

「じゃあ今日はほぼ一緒に受けることになるな。」

「そうだね・・・一緒で良かった。」

なにが良かったのかよくわからないが、まあいいか。またなんでもない話をしながら、2人で授業に向かった。







3時間目終了のチャイムが鳴った。ようやく昼休みだ。長かったような短かったような・・・

「ねえ、ご飯の時間!」

と中島がわざとらしく言ってくる。俺はわかってるよと思いながら

「そうだな、俺が奢るご飯の時間だったな。」

「そう!」

みたことのないルンルン姿だ。しかしどこで食うべきなんだ。ここら辺あんまり食べるとこないしな、と考えていると中島が

「あそこで食べようよ。」

とスマホをぽちぽちしながら言ってくる。しばらくすると画面をこちらに見せてきた。

「あー、みなと亭か。」

「そう!一回食べてみたかったんだよねー。ふーちゃんは食べたことある?」

「あるよ。超うまい。」

「ほんと?じゃあ決まり。」

こんな中島見たことない。まあまだ会ってからそんな経ってないけど・・・

そんなの見たらそこに行くしかないでしょ。

「行くか。」

「うん。」

俺たちは準備を整えて学校を後にした。





みなと亭は学校から5分歩けば着くぐらい近い。海鮮料理が美味しく、漁港が近くにあるので新鮮なものが楽しめるから昼時はいつも行列ができるくらい人気だ。

「ついた。」

俺は店のドアを開けると、満席で何組か待っている状態だった。

「結構人が多いね。」

中島は目を丸くしていた。

「そだな。まあ人気だし、仕方ない。俺、紙に名前書いてくるからここで待ってて。」

「う、うん。」

俺は名前を書き終わり、中島の元に戻った。

「4組ぐらい待てば入れるぞ。」

「そっか。」

俺たちは店の外で名前が呼ばれるのを待っていた。てか、よく考えたら女の子とご飯一緒に食べるなんて初めてだな。なんの躊躇いもなくきたけど今更緊張してきたよ。






「2名でお待ちの竹田様ー。」

「はい。」

「こちらへどうぞ。」

案内された席に座り、メニューを見ながら2人で何にするか悩んでいた。

「どれが美味しいの?」

「全部。」

「それじゃますます決められない・・・」

中島はうーんと両手で頭を抱えながらメニューと5分間くらいにらめっこしていたので俺は助け船を出した。

「みなと定食がオススメかな。いろんなの入ってるし」

「うーん、でも海老フライ定食も捨てがたいし・・・」

「じゃあ俺がそれ頼むから分けてやるよ。」

それを聞いた中島が嬉しそうな顔をして前のめりになり

「ほんと?じゃあそうする!」

「決まりだな。」

俺は店員さんを呼んでその2つを頼んだ。注文が済むと、中島が頬杖をつきながらこちらをじっと見ていた。俺はなんかついてるの?と恥ずかしくなり

「なんだよ。恥ずかしいじゃん。」

「いや、なんか慣れてるなと思って。」

中島はちょっと意外みたいな顔をしていた。俺はいつもどおりだしなぁと思い

「いつも通りだと思うけど。」

「そう?なんかこういうのめんどくさがりそうだと思ってた。」

と中島は微笑みながら言ってきた。たしかにそうだな。こういうめんどくさいのは嫌いだし、いつもならやらなかった、でも彼女の時は自然にやってしまう。どうしてなんだろう・・・そんなことを考えているうちに料理が到着した。

「うわー!すごーい美味しそう。」

中島はキラキラ目を輝かせて、カバンからスマホを取り出しパチパチ写真を撮り始めた。

「ふーちゃんこっち向いて。」

スマホをこちらに向けて写真を撮ってきた。やめて、美人のインスタとかにあげないで、この汚物を載せないでと思い

「それ、インスタとかにあげないでね。」

すると中島は首を横に振った

「ううん。ただ撮ってるだけ。思い出に残しておきたいじゃない。」

と柔らかい口調で言っていた。

「ならいいけど・・・」

ひとしきり撮り終わったのかカバンにスマホをしまい

「さ、食べよ!いただきます。」

「いただきます。」

女の子らしいところもあるんだな。

俺たちは時折会話をしながら食べ進めていた。しかしやっぱうめえ。エビがぷりっぷりだよ・・・と楽しんでいると中島が物欲しそうな顔でこちらを見ている。あ、そういえば分けてやらないとなと思い、海老フライがのっている皿を差し出すと中島がヒョイと箸で掴み自分の皿に持っていった。あれ?この子遠慮とかないのね、いい根性してやがるぜと感心していると、中島が天ぷらののった皿をこちらに差し出してくる。

「好きなのとっていいよ。」

「じゃあ・・・・これで。ありがとう。」

と遠慮してレンコンの天ぷらをもらった。ほんとはイカ天が良かったけどとるの可哀想だし。子供の好物を残してあげる親の気持ちになっていると、中島が子供のように喜びながら問いかけてくる。

「ほんと、美味しいね。」

「そだな。毎日食べたいぐらい。」

「それはないけどね。」

と中島は少し困った表情を浮かべながら答える。冗談なんだけど、真面目に答えられると恥ずかしいじゃん。冗談って難しいなぁ思っていると、中島が

「ふーちゃんって、中学のときどうだったの?」

となんの躊躇いもなく聞いてきた。通信制あるあるだがあまり過去の話は聞いてはいけない。#なにか__・__#あったからここにきているのだ。俺はどう答えればいいのか分からず濁して答えた。

「どうだったと言われてもな、まあいろいろあったからここにきてる。」

それを聞いた中島は少し俯きながら

「そう・・だよね。私もそうだからさ。」

こんな美人でも過去になにかあったのだ。どんなことがあったのかはわからない、どんなことがあったの?と聞くべきでもない。少し沈んだ空気だったが中島が俯きながら口を動かす。

「私さ、中学生の時・・・」

過去について話そうとしているだろう。でも今聞くべきではないと思い、俺は遮るように口を開く。

「まあ、過去はいいじゃん。現在が大切なんじゃないの?あ、俺めちゃくちゃいいこと言ったな。」

自分でも少しわざとらしいと思うくらい、演技臭かった。でも、そうするしかなかった。彼女の過去を聞いてしまうとなにか変わってしまうと本能的に感じてしまったからだ。もっと時間をかけてからでないと・・・そんなことを考えていると中島は困り笑いをしながら

「・・・だよね。たまにはいいこと言うじゃん。」

「たまにじゃない、常に。」

「常に悪口の間違いじゃない。」

彼女も言おうと思えば言えたはずだ。多分彼女も感じたんだろう、心の何かに。

































この話は次回も続きます。

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