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竹田風太は押しが弱い。

入学式が終わり、新入生がたくさん入ったことでいつもの学校よりは賑やかだった。俺はいつもどおり自分の席につき、レポートをせっせと仕上げていると、後ろからトントンと肩を叩かれて振り返ると加藤さんがニコニコしていた。

「今日はがんばろうね?」

「え、何を頑張るんですか?」

「覚えてないの?今日はみんなを生徒会に勧誘する日だよ。」

「あ、忘れてました。」

そう、今日は加藤さんの「たのしそうだから生徒会の人数増やそう」発言により、手当たり次第に生徒会に勧誘するという重大なミッションが課せられたのだ。まあ、加藤さんとヒナに関してはコミュ力があるから心配なさそうだし、中島はコミュ力があるかは微妙なところだが、美人なのでそれに惹かれてやってきそうな野郎どもが多そうだ。それに比べて俺ときたら・・・デブだし、コミュ力ないし、運動神経ないし、なので今回は活躍できなさそうだ。自分から話しかけるのなんて特に苦手だしね。3人に任せよう!

「俺は、みんなに任せますね。こういうの苦手なんで。」

「だめだよ!1人は絶対に連れてきてもらうからね?」

「マジですか・・・」

「マジだよ。」

くそ、どうすればいいんだよ。と知らない人に話しかけるという恐怖で蒼ざめていると、加藤さんが早く行こうと急かしてくる。

「朝のホームルームが始まる前にはやく行こうよ。」

俺は渋々加藤さんの後ろをついていった。






昇降口につくと、たくさんの学生で溢れかえっていた。

「めちゃくちゃ多いですね。」

「今がピークだね~。」

「ですね。」

この学校にこんなにいたっけ?と思って登校してくる学生を眺めていると中島とヒナが2人で歩いてきた。

「おはよう。」

「オハヨー!」

中島は小さく会釈をしながら、ヒナは両手を大きく振りながら挨拶していた。俺たちも適当に挨拶を済ませると、加藤さんが今日のことについて話す。

「今日は、勧誘がんばろうね。」

「うん!」

「そうですね。」

なんで2人ともそれを聞いて普通でいられるのだろうか。知らない人に話しかけるとか不安感じないの?と2人のメンタルがどうなっているのか理解に苦しんでいると、早速加藤さんが移動して1人の学生に話しかけにいった。

「加藤さんすげえな。」

「そうだね。」

中島と加藤さんのコミュ力に感動していると、横にいたヒナも違う学生に話しかけにいった。

「ほんと、なんなのあの2人。」

「あそこまでいくとこわいね。」

「だよな、俺ぐらいがちょうどいいんだよ。」

「ふーちゃんは心配になるレベルだから治した方がいいよ。」

となんのためらいもなく言われて、ショックを受けてしまった。でも本当のことなので反論できなかった。なので謝ることしかできなかった。

「すんません。治療に専念します。」

「うん。それでいいんじゃない。」

とニコニコしながら言われた。その笑顔は可愛いけど言われてること結構キツイよな。メンタルブレイクしていると、加藤さんが声をかけた学生を連れてこっちにやってきた。

「入ってくれるって!」

「はやっ!」

思わず声を出してしまった。どうなってんだよこの人・・・

すると入会希望者が口を動かす。

「うち、西川 英玲奈っす。よろしく。」

「よ、よろしく。」

「よろしく。」

と俺と中島も挨拶と軽い自己紹介をした。しかし、こんな子見たことないなぁー。容姿は金髪でロックっぽい格好だな。胸はデカイなオイ!胸が強調される服着てるからなおさら。しかも服がゆるゆるだから見えそうなんだよなぁー。と西川をジロジロ見ていると目が合ってしまい、さっきジロジロ見ていただろと言わんばかりに睨んでくる。俺はすぐに目を逸らして見てなかったよ感を出した。すると加藤さんが

「えれなちゃんは、同じ2年生で、趣味でバンドやってるんだって!」

「やめて・・・恥ずかしいから。」

「あ、ごめん。言っちゃダメだった?」

「ま、まぁいいけど。」

怖そうだけど恥ずかしがる時はかわいいな。加藤さんグッジョブ!!!!と喜んでいるとチャイムが鳴り、一旦終了だ。ヒナも勧誘に失敗したみたい・・・コミュ力だけではダメみたいだ。






昼休みになり再び4人集合し、勧誘をはじめる。西川にはいきなりやらせるわけにはいかないので次からお願いすることにした。

「思ったより勧誘って難しいね。」

と苦笑いしながら加藤さんが言った。俺はそれを見て目標変更を促す。

「1人が1人連れてくるのは厳しいかもですね。目標変えた方が・・・」

「だね。中島さんもヒナも苦戦しているみたいだし。」

と加藤さんは仕方ないと息を吐き

「もう1人だけ連れてこれたらオッケーにしようか。」

「ですね。」

よし!これであとは3人に任せればいいじゃん。そんなことを思っていると、勧誘に失敗した中島が戻ってきた。

「ふーちゃんさ、一回もやってなくない?ダメだよ、仕事しなよ。」

とため息を吐きながら言われた。俺はやりたくないので言い訳をする。

「いや、俺が話しかけてもなんの足しにもならないって。」

「そんなのやってみないとわからないよ。一回やってみてよ。」

と中島に言われてしまい、それを聞いた加藤さんもうんうんと頷いて

「見せてもらいたいねふーちゃんの実力ってやつ。」

「わ、わかりましたよ。やってみればいいんでしょ?」

と親に勉強しろと言われた時みたいな返しをした。てか何、加藤さんシャアなの?まあいい、俺はキョロキョロと周りを見渡し、目についた人に声をかける。

「あ、あの生徒会に入ってみないですか?あの、結構楽しいですよ。たぶん。」

「いいです。そういうの興味ないんで。」

と言うと足早に去っていった。約10秒で断られ涙が出そうなのを堪えていると、その無様な姿をそれ程遠くない距離から見ていた2人が駆け寄ってくる。

「押しが弱すぎるよ。断られても押さないと・・・押して押しまくるんだよ。」

「想像以上だね。」

と加藤さんと中島に言われてしまった。俺には無理だよこんなの。




        



「難しいな~。みんな私が勧誘すると引き気味なんだよね。」

とヒナがうーんと考えている。

「相手が引くってどんなことやってるんだ?」

俺は素朴な疑問を投げかける。するとヒナがこっちにやってきて

「あの、生徒会に入って欲しいんだけど・・・どう?ねえ?ねえ?ねえ?どうする?・・・」

とどんどん近寄ってくるので後ずさりしていると、背中が壁に触れ逃げる場所がなくなった。それでも近寄ってきて、吐息がかかるくらい近くにある顔と女の子特有のいい匂いがしてもうダメだと目を瞑ったとき、勧誘から戻ってきた中島が

「何してるの?」

と怪訝な顔をしてこちらを見て、浮気を見つけた妻のような声を出している。やましいことではないので俺は、正直にあったことを話す。

「いや、あのどんな感じで勧誘してるのか聞いたらこうなりまして。」

「ふーん、そう。まあいいけど。」

中島はそれを聞いてどこかに行ってしまった。てかなんでヒナはなんも言わないのよ。勘違いされるでしょ?とヒナの方を見ても知らんぷりしてやがる。

「おい、なんで何も言わないんだよ。」

「だって別にやってって言われたからやっただけじゃん。」

「実演しろとは言ってないぞ。」

「でもよかったでしょ?」

「んなわけないだろ。」

嘘です。男はあれでイチコロですよ、ほんと。やめてくださいね。と男の気持ちを代弁していると、またヒナがこちらにきて、少し背伸びをして俺にいつもと雰囲気が違う色っぽい声で耳打ちする。

「また、今度シテあげるね?」

「へ?」

なんだよそれ・・・ハーレムアニメですか?







もう。昼休みもあと10分で終わってしまう。でも西川以外見つかっていない。みんな苦戦しているみたいだし、俺も頑張ってみようかなと周りを見渡すと、もう昼休みが終わりかけのせいか人の姿はあまりない。なので教室を攻めることにしよう。俺は2年B組だからA組を攻めてみるか。

A組の教室につき、話しやすい男に声かけてみるか・・・よし!アイツにしよう。俺は近づいて話しかける。

「あの、生徒会とかに興味ない?」

というと目線がスマホから俺に変わった。あれ、この顔どっかで見たことあるな・・・と思っていると向こうが「あ!」と気づいて

「あ!体育の時一緒にペア組んだ人じゃん。」

「へ?あ、あーそうだよ。」

「だよね!いやあれからなかなか見かけなくてさー。まぁ僕が学校サボってだだけだけど。てか、本当に覚えてるの?」

俺はそいつの名札を確認して答える。

「佐々木だろ?ちゃんと覚えてるよ。」

「下の名前は?」

「正大じゃなかったっけ?」

「そうだよ!ちゃんと覚えてんじゃん。僕嬉しいよ。」

声でかいな、もうちょっとボリューム抑えてくれないかな。てか、思い出せてないのに咄嗟にそうだよって言っちゃったよ俺。名前も覚えてなかったし。と少し罪悪感を感じていると

「で、要件はなんだっけ?」

「生徒会に入ってくれということを言いにきた。」

「うん、いいよ!君の頼みなら。」

「お、おう。ありがとう。」

なんかよくわかんないけど入ってくれることになりました。ラッキー?






俺は佐々木を連れて、みんながいる昇降口へ向かった。到着すると3人とも疲れた顔をしていた。俺は早く知らせようと声をかける。

「ついに見つかったよ。この俺が。」

というとまた中島が怪訝な顔をしている。

「ふーちゃんどんな不正をしたの?正直に吐いた方が楽になるよ。」

と不正前提で言ってくる。どんだけ期待されてないんだよ。とショックだったが、俺はあったことをそのまま話す。

「話しかけたら、入ってくれることになった。だよな佐々木。」

「そうだよ!僕たち友達だしね。」

「そ、そうだな。」

前から友達でした感を出していると、中島が頭を抱えながら言う。

「ふーちゃんに負けるなんて・・・ほんと信じられない。」

勝ったぜ。ハハハ。勝つってこんなに嬉しいのね。と人生初めての勝利をあじわっていると、加藤さんが俺の両肩を揉みながら

「いやーよくやったね。やってくれると思ってたよふーちゃんなら。」

と少し棒読みで言ってくる。それに続いてヒナも

「さすがだね。」

と俺の袖を掴みながら言ってくる。なんなのこの子ほんと・・・すると中島も俺の目の前にきてもじもじしながら

「まあ、今日は色々あったからね?負けるのも仕方ないというか・・・」

なにその意味深な言い方。マジで勘違いされるからやめてね。








俺の活躍もあり、新たなメンバーが2人加わった。頼りになるかどうかはわからないが、また個性のあるのが増えたことでまた賑やかになるだろう。しかし活躍するのも気分がいいな。今日はよく眠れそうだ。








































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