第九十話
「まず、ルナリアが魔法を使えなかった理由は呪いによるものだということはわかっている。魔封じの呪いで、魔法をうまく使えないようにされていたんだ」
ここまで話して、ルーナは真剣に、ミーナは妖艶な笑みを浮かべて頷く。
「その呪いを解除したことで、ルナリアは魔法が使えることになった。解除したのは俺で、解除方法は内緒だ」
説明するつもりはないとハルが言うが、ルーナもミーナも気にしていないようだった。
ルナリアは冷静に話すハルの言葉に何一つルーナたちが反論せず聞いている状況に次第に動揺し始めていた。
「……さて、ここで問題になるのはその呪いがなぜルナリアに付与されていたのか? というところなんだが、俺の予想では、ミーナがその犯人だと思っている」
ルナリアが長い間、魔法を使えずに苦しんでいたことを考えて、あえて犯人という強い言葉を使う。
「ふふっ、まあ怖い。犯人だなんて、私、そんなに悪い女に見えますか?」
妖艶な笑みを深めたミーナが冗談めかしながら口元に手を当てて言う。
それに対して、ルナリアは手をギュッと握っていた。
ルナリアは伯母のことを尊敬しており、好きだった。
しかし、その伯母のせいで自分が魔法を使えなくなったと聞いては、その気持ちのままでいるのは難しかった。
もちろん、ルナリアとてその可能性を考えなかったわけではない。
だがそれを否定してほしいという気持ちもあったのだ。
なんで? どうして? まさか! 母も知ってたの!? など様々な思いがルナリアの心の中を駆け巡っていた。
「正直なところを言えば……見えない。ルーナもミーナも血筋だけあってルナリアによく似ていて、いい人そうに見えるよ。エルステッドも俺のことを睨むのは困ったけど、悪い人には見えない。――まあ、いい人に見えて実は、なんてこともあるけど……まあ、それにしてもみんなを悪い人だとは思ってないよ」
ルーナもミーナもルナリアも、ハルの言葉が意外だったため、悲しげに表情を変える。
「まずさ、ここまで話を聞いてルーナはルナリアのことを思っているし、複雑な思いがありながらもルナリアが魔法を使えるのを喜んでいるようだった。そんな人が悪い人なはずがないだろ?」
「あ、あら、うふふ……」
考えていたことを当てられた上に急に褒められたため、ルーナは頬を赤くして照れていた。
「で、そのルーナが魔法を使えない理由がミーナにあるとわかっていて、それでも責めている様子はない。むしろ理解を示しているようだ。もしかしたら、ミーナに頼んだのはルーナなのかもしれない」
ハルの指摘は図星だったのか、ルーナとミーナの動きが一瞬止まる。
「はあ、ハルさん。あなたは本当に一体どこまで知ってるの?」
痛む頭を押さえながら大きくため息をついたミーナは次々に的中させるハルにややあきれているようだった。
「念のため言っておくが、知ってることは一つもない。事実として確認したことじゃなく、状況や反応から想像しただけだ」
「っ……あ、あの! ど、どういうことなんですか!? 伯母さんのせいで魔法が使えなくなって、それをお母さんも知ってて、みんなグルで私を苦しめていたってことなんですか?」
冷静になれていないルナリアが今にも泣きそうな表情でハルにすがる。
ここまで聞いている限り、ハルが言っていることは全て当たっていることから、自分の抱える答えもきっと教えてくれるだろうと思ったのだ。
「あー、それは早合点しすぎだ。……いいか? 優しいお母さんが納得したうえで、魔法を使えないようにしてもらった――ということは、ルナリアが存分に魔法が使えると困ることがあると考えたってことだ。ルナリア自身にな」
なだめるように優しい声音を心掛けるハルの言葉に、再び三人が驚く。
「あなたという人は本当に……」
呆然とつぶやくようにミーナはそこで言葉を止める。
なんでも知ってるのね。どこまで知っているの? なぜすべてわかるの? などという言葉が恐らくは続くだろうと思われる。
「これも完全に予想になるけど、尻尾の数が関係しているんじゃないかな? ルーナの尻尾は四本。そして、魔法をかなり高いレベルで使える。魔力量が高いと尻尾が増えるんじゃないかな」
ハルは獣人について詳しいわけではなかったが、そんな噂を昔聞いたことがあった。
ルーナの背にはふわふわの尻尾が四本揺れている。
「……えぇ、そのとおりです。尻尾の数は私たち狐の獣人の魔力量に合わせて増えるといわれています。そして、ルナリアほど才能があれば、おそらく最大の九尾にまで増えるのではないかと私たちは危惧しました」
ぎゅっと胸元を抑えるようにしながらルーナがうつむき加減で説明を始める。
「つまり、尻尾が多くなるとルナリアは魔力が多いと喧伝している状態になってしまう。そうなった場合、ルナリアは今のように自由に行動はできないかもしれない。大事な娘が一生閉じ込められてしまうくらいなら――そう考えたから、魔封じの呪いで魔法をまともに使えないように封印したんだな」
ハルの言葉は当たっているため、悲しげな表情でルーナとミーナが頷いていた。
ここまでくるとルナリアも母親たちの気持ちが痛いほど伝わり、ほろほろと涙をこぼしていた。
「恐らく、九尾ともなれば王族や貴族が目をかけると思います。そうなったら、ルナリアは窮屈な世界に押しやられてしまいます。私たちの姉がそうであったように……」
ルーナとミーナの上には姉が一人おり、彼女は八尾の魔力保持者だった。
いろんな権力者たちに求められた姉の姿は妹であるルーナとミーナから見てとても幸せそうだとは思えなかったのだ。
「だから、ルナリアが同じ目に合わないように妹に頼んだのです……」
「えぇ、魔法が使えなければ魔力量が増えることはそうそうないから、私もそれがいいと思ったのよ。でも、ルナリアは冒険者になりたいと言って、まともに魔法が使えなくても無属性魔法を使うことで見事冒険者になって旅出てしまったのよね」
ルーナはこれまで抱えていた苦しみを吐き出すようにぽつりぽつりと語りながら泣く。
その背をさすりながらミーナは困ったように笑ってルナリアを見た。
どれほど母たちが自分を思いやっていてくれたのか、直接聞けたことでルナリアの涙腺は決壊した。
あふれ出る涙を抑えきれず、冒険者として旅立ったころの自分を思い出し、無神経だった行動を少し悔やんだ。
「それでも、ルナリアが魔法を使えるようになったことを二人は喜んでいた。その理由は、呪いというものはかけるだけで基本的には解除できない一方通行なものだったんだよ。心配していたとともに、ルナリアの才能を使わせてあげられないこともつらく思っていた」
「えぇ、まさか帰ってきたと思ったら魔法が使えるようになってるとは思わなかったわ。せっかく神さまから与えていただいたギフトだもの――もったいないと思ってたのよ。ルーナ姉さんは三属性だけど、あなたはそれを上回る五属性の魔法の使い手だったから……」
ミーナはルーナやルナリアの第一成人の儀の時の結果を今でも鮮明に覚えていた。
それを聞いて、ハルとルナリアは複雑な表情になる。
「あ……えっと、その、私、今は八属性を使えるんです……」
言いにくそうに手をあげたルナリアのカミングアウトを受けて、しばらくの間、部屋に沈黙が走る。
そして、数秒、数十秒ののち、大きな声が響き渡った。
「「ええええええええええええええええぇぇえええええええええ!?」」
さらにこの数十秒後に、大声を聞いたエルステッドが慌てたように部屋にかけつけるまでルーナとミーナは驚いた表情でルナリアのことを見ていた。
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名前:ハル
性別:男
レベル:3
ギフト:成長
スキル:炎鎧4、ブレス(炎)3、ブレス(氷)4、ブレス(毒)1、竜鱗3、
耐炎3、耐土3、耐風3、耐水3、耐氷3、耐雷2、耐毒4、
氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、
皮膚硬化、腕力強化4、筋力強化4、敏捷性強化2、自己再生
火魔法3、爆発魔法3、水魔法2、回復魔法1、風魔法1、解呪、
骨強化3、魔力吸収3、
剣術4、斧術2、槍術1
加護:女神セア、女神ディオナ
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名前:ルナリア
性別:女
レベル:-
ギフト:オールエレメント
スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法2、雷魔法2、
水魔法1、光魔法2、闇魔法1
加護:女神セア、女神ディオナ
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