第八十八話
「はーい、どちら様でしょうか?」
ルナリアのノックの音のあと、扉を開けて出てきたのはメイド服姿の人族の女性だった。
優しいお姉さんといった雰囲気を持つ彼女はのんびりとした声とともに訪問者を見る。
「ただいま、です……ユリアさん」
懐かしい人の姿を見てへにゃりと笑ったルナリアが挨拶をすると、ユリアと呼ばれたメイドの女性はみるみるうちに目を大きく見開き、感極まったようにそのままルナリアを抱きしめた。
「っ、お嬢様! 無事で、ご無事でよかったです! お帰りなさいませ!」
力強くルナリアを抱きしめたユリアは目からポロポロと涙をこぼしながら、ルナリアの無事の帰宅を心から喜んでいた。
「ど、どうしたんだ、ユリア……!? ル、ルナリア! 帰ってきたのか! おーい、みんな!! ルナリアが帰ってきたぞおおお!」
すぐに戻ってこないユリアを心配したのか、シャツにベストをまとった上品な男性が慌てた様子で現れる。彼もまたルナリアの姿を見た瞬間、目を見開いたのち、家の中に向かって大きな声で呼びかける。
ルナリアを呼び捨てにしているところから、おそらくはルナリアの祖父、父親、歳の離れた兄といったところだろうとハルは予想している。せっかくの再会の場面を邪魔しないようにハルは静かに見守っていた。
「あああぁあ! ルナリア、良く帰ってきてくれたわね! ささ、早く入りなさい! ――誰か! お茶を用意して下さい!」
男性の声で部屋から飛び出して玄関に向かって走ってきたのは今度は涙で顔を濡らした美しい女性。
ルナリアによく似た姿の狐の獣人であるようだ。見事な尻尾が四本見える。
そして、ルナリアは家族に抱かれるように連れられて家の中に入っていった。
「――置いて行かれたか。まあ、ルナリア自身が歓迎されていたようでよかった。俺は……まああとで出直すか」
静かに締まった玄関のドアの前にポツンと取り残されたハルはデカい家だなと改めて思いながら、背を向けて馬車へと戻って行く。
「……ま、ま、待ってーーーーー!」
ハルが家の門のあたりまでたどり着きそうになったところで、大きな声とともに家の扉が開かれた。
「ん……?」
ハルが振り返るとそこには、ユリアの姿があった。
「お、お待ち下さい! 待って、くだ、さい!」
「えっと、はい」
前かがみになりながら息をきらしている様子であるため、ハルは足を止めて彼女の言葉を待つことにする。
「ふうふう、はあ。あの、待って下さい」
胸に手を当て、息をなんとか整えながらユリアが待つようにと口にする。
「えっと、待ってるけど……なにか用ですか?」
どうしたらいいのか戸惑うハルが質問すると、息が落ち着いてきたユリアは顔を赤くする。
初対面の、しかもルナリアと親しい人だろうとあってハルは言葉遣いに気を付けている。
「す、すみません! 私、待って下さいしか言ってませんでした!」
はっとしたようにそう言って深々と頭を下げる。
「あぁ、いや別にいいんですけど、それでどんな用ですか? ずいぶん慌ててたみたいですけど」
困ったような表情でハルが再度尋ねると、ユリアは顔をあげる。
「そ、そうでした。あの、あなたはハル様でいらっしゃいますよね?」
その言葉にハルは頷く。様をつけられていることに違和感を感じてはいたが、それはあえて言及しなかった。
「よかった。先ほどは申し訳ありませんでした。私も家の者もルナリアお嬢様が帰ってきたことが嬉しいあまり、周囲に目が向いていませんでした。先ほどお嬢様から、命の恩人であるとお聞きしました。ハル様も是非お上がり下さい」
ハルがどうしたものかと答えを考えていると、再び扉が大きく開け放たれる。
「あぁ、よかった。ユリア、ハルさんにも入ってもらってちょうだい。ハルさん、娘が大変お世話になったとのことで、ありがとうございます。是非お話を聞かせて下さい」
先ほどの四つの尻尾を持つ狐の獣人の女性も現れ、ふわりと優しく笑いかける。ユリアもその言葉に何度も頷いていた。
「……はあ。それじゃあお邪魔します」
久しぶりの家族との再会であり、あの喜びようを見てしまっては自分がいるのは無粋だろうと考えていたハルだったが、ルナリアの母から直接請われてしまっては観念するしかなった。
二人の案内で家の中に入ると、応接室へと通される。外の雰囲気と同じく中も手入れが行き届いており、とても綺麗だった。
そこには、すでにルナリアと先ほどの男性が大きなテーブルをはさんで座っていた。
「ハルさんはルナリアの隣にどうぞ。私はお父さんの隣に座るわね」
ふわりとほほえむルナリアの母に促されるようにソファに腰掛けるハル。
こうして、ルナリアの両親と対面することになったハルだったが、どことなく座りの悪さを感じる。
「あー……えーっと、その、ルナリア?」
「はい、なんでしょうか?」
家族に久しぶりに会えたため、ややテンションがあがっているルナリアはハルの顔を見ながら笑顔になっている。
「その、なんで俺は睨まれてるんだ?」
ハルが部屋に入った瞬間、ルナリアの父親の表情は険しいものになってハルのことをぎろりと睨みつけていた。
「え……? あ、もう、父様! やめて下さい! ハルさんは私のことを助けてくれたんですよ!? ハルさんがいなかったら、死んでしまっていたかもしれないし、魔法を使えるようにだってなってなかったんです!」
まさか自分の父がハルを睨んでいるなどと思わなかったルナリアは慌てたように立ち上がって、本気で父親を注意する。
「っ……お、お前……」
そんなルナリアを見た父親は驚いて目を見開いて呆然としている。
彼はルナリアがここまで声を荒げるところを見たことがなかったため、ビックリしているようだった。
「ほ、本当なの……?」
しかし、母親の反応は違った。
母親は、魔法が使えないはずだったルナリアが魔法を使えると宣言したことに驚いていた。
「とりあえず、そのあたりの話はもう少し落ち着いてからしたほうがいいんじゃないか? それよりも、ルナリアのお父さんが俺を睨むのをやめてくれると助かる」
居心地悪げに申し出るハルはルナリアの父親の視線が未だ気になっていた。
「あ、あぁ……申し訳ない。娘の恩人に向かって失礼な態度をとってしまったな……しかし、娘が初めて連れてきた男性となると、私も少々冷静ではいられなくてな――すまなかった」
あらたまった態度で頭を下げる父にハルもその謝罪を受け入れることにする。
「それじゃあらためて……俺の名前はハル、冒険者です。冒険者ランクはルナリアと同じCランク。ルナリアとはパーティメンバーとして一緒に冒険者ギルドの依頼をこなしています。旅の仲間です」
まじめな表情で語るハルの説明を父親は厳しい表情で、母親は笑顔で聞いている。
「ゴホン……私の名前はエルステッド。ルナリアの父で爵位は伯爵だ」
「なるほど。貴族か何かだとは思ってましたが、まさか伯爵だとは驚きです」
さほど驚いていない様子のハルを見て、エルステッドはわずかに表情を曇らせる。
伯爵という地位を言っても、なんの変化も見せないハルに対して困惑しているようだった。
「ふふっ、お父さんはすぐに権威を振りかざしたがって、子どもみたいね。いいんですよ、ハルさんはそんなもの気にしないで下さいね。言葉遣いもいつものものでいいのよ、そうそう、私も自己紹介しないとね。私の名前はルーナです。娘の名前は私の名前からとったのよ」
上品にくすくすと微笑みつつ、嬉しそうに語るルーナ。娘のルナリアのことを心から愛している様子が伝わってきた。
それから、この場の主導権をルーナが握り、和やかに話が進んでいく。
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名前:ハル
性別:男
レベル:3
ギフト:成長
スキル:炎鎧4、ブレス(炎)3、ブレス(氷)4、ブレス(毒)1、竜鱗3、
耐炎3、耐土3、耐風3、耐水3、耐氷3、耐雷2、耐毒4、
氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、
皮膚硬化、腕力強化4、筋力強化4、敏捷性強化2、自己再生
火魔法3、爆発魔法3、水魔法2、回復魔法1、風魔法1、解呪、
骨強化3、魔力吸収3、
剣術4、斧術2、槍術1
加護:女神セア、女神ディオナ
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名前:ルナリア
性別:女
レベル:-
ギフト:オールエレメント
スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法2、雷魔法2、
水魔法1、光魔法2、闇魔法1
加護:女神セア、女神ディオナ
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