第五十三話
「とりあえず、運べるだけ運ぼう」
互いの絆をしっかりと感じ取った二人は、この場所を教えてくれたキラーメイルに感謝しながら、それぞれのカバンの中に詰め込めるだけ財宝を詰め込んでいく。
それに加えて、ハルとルナリアはなんとか少しでも多く財宝を運び出せるようにと、色々と工夫をこらしていた。
ハルは筋力強化のランクが上がったため、甲羅の盾を呼び出してその上に乗せられるだけ財宝を乗せてそれを筋力頼りで持ち上げる。
ポーター時代の経験に加え、レベルもあがったため、全体的な力も強化されており、強引に持ち運ぶことができた。
一方でルナリアは土魔法で器を作って、更にそれを氷魔法でコーティングし、その上に財宝を乗せていく。
さすがにハルのようにそれを持ち上げるわけにはいかないため、風魔法で浮かしながら運んでいた。
女神たちとの邂逅により、正しいギフトが開花したおかげで魔法の発動はとても滑らかだ。
これらによって、かなりの量の財宝を二人は馬車に乗せることができる。
ファロスが引く馬車に乗せされる量も限られているため、二人は一回ぶんだけ乗せて街に戻ることにする。
二人が無事であることにファロスはとても喜んでおり、大量の荷物を抱えて戻ってきてもやる気を見せてくれた。
念のためにと、残りは誰かが廃城に行っても、すぐには見つからないように土魔法で壁を作ったりして、わかりづらいようにしてある。
「さて、それじゃあスイフィールに戻ろう。あの街で財宝を換金できるといいんだけどな……」
「ですねえ、うふふ」
ルナリアは左の手首にはめた腕輪を優しく撫でながら笑顔になっていた。
これは装着者の魔力量を隠す効果のある装備だが、それ以上に施された意匠が愛らしい精霊をイメージしたもので、可愛らしいものだった。
「気に入ったみたいでよかったよ」
そう口にしたハルも足首に足輪を身に着けていた。
こちらは、反応速度を上げるもので緊急的に回避をしなければいけない場合などに、少しではあるが確実な差が生まれることになる。
財宝の中にはレアな武器、防具、アクセサリ、魔道具などがあり、二人は自分たちが必要だと思うものはより分けていた。
「いやあ、レベルとギフトだけじゃなく色々強化できてよかったよなあ」
ハルは足輪以外に、もう一本予備となる剣と胸当てにマントを財宝の中から自分のものにしている。
剣は少量の魔力を流すだけで、風を巻き起こすことができる魔剣。
胸当ては、ミスリル銀でできているもので防御力もかなり高い。
加えてマントは耐火、耐熱の効果を持つマントで、丈夫な布でできてている。
「ですねえ」
ルナリアは腕輪に加えて、使用する者の魔力を強化して魔法の威力を上げることのできる魔法の杖。
そして、装着者の防御力を上げるローブ、更には魔法の威力を軽減するマントを確保していた。
二人は自らの装備を確認して改めて、自分たちの変化を感じていた。
「まあ、何にせよ一旦街に戻って情報集めてから次に動こうか」
ハルが手綱を握り、ファロスに意思を伝えると彼はゆっくりと歩を進めていく。
ハルたちが戦いを終えてきたことを理解しているため、負担を少なくしようというファロスの配慮だった。
一度平原の手前の野宿をしてから、再び出発してスイフィールの街に到着する。
「はあ、やっと帰ってきた……とりあえず宿に、と言いたいところだけどアレをなんとかしないとだなあ」
「ですねえ……どこにいけばいいのでしょうか?」
困ったような表情のルナリアは以前立ち寄った時には食堂と宿と冒険者ギルドくらいしか立ち寄ってなかったため、買取をしてくれる店の心当たりもなかった。
「……冒険者ギルドでそれとなく相談してみるか」
「そうですね、もしかしたらお店を紹介してくれるかもしれませんし、ギルドで買取もしてくれるかもしれませんね」
二人は疲れているため、自分で探すという選択肢を消去して、ギルドで聞くことにする。
ファロスはゆっくりと馬車を引いていく。
ハルとルナリアは道行く人々を見るが、やはり人の数は少なかった。
「うーん、やっぱりなんとかしないとだなあ」
ハルは今の状況を再確認して、やはり良くない状況だと理解していた。
ルナリアもこの街の状況を憂慮している表情になっていた。
しばらくして、冒険者ギルドに到着するとルナリアを馬車に残してハルだけが中へ入っていく。
万が一のことを考えて財宝の見張りとして残ることにしていた。
「あっ、ハルさん、でしたよね?」
すると、ちょうどハルに気づいた受付嬢のランが声をかけて近づいてくる。
「あぁ、どうも。この間は色々情報を教えてくれて助かったよ」
「無事みたいでよかったです! もう一人の、ルナリアさんは……」
胸元でギュッと手を握るランはあれからハルたちがどうなったのかを心配しているようだった。
これまで数多くの冒険者たちが湖の問題に立ち向かおうとして姿を消しているのを知っているからこその心配だ。
「あぁ、ルナリアも無事だ。今は外の馬車のほうにいるよ。ちょっと事情があって、少し聞きたいことがあるんだけど……」
「そうでしたか……それではこちらへどうぞ」
無事であることにほっと息を吐いたランは、ハルの様子を見て、何かあるのだと感じ、前回と同じ奥の部屋へと案内してくれる。
他に冒険者の姿はないため、この部屋を使ってもハルが優遇されてるととる者はなく、自由に使えていた。
「――それではお話を聞かせてもらえますか?」
テーブルを挟んで対面に座ったランが真剣な表情でハルに質問する。
「実は、少しお宝が手に入ったんだ。それもちょっと量が多くてな、できれば買い取ってくれる先がないか聞きたいんだ。この街には来てからそんなに時間が経ってなくてわからないんだ」
ハルは困った様子で教えを乞う。それを聞いたランは記憶をたどりながら考え込む。
「なるほど、お宝ですか……。うーん、いくつか買取の方法があるのでそれを説明します。まず、当ギルドでももちろん買取をすることができます。できますが……高額買取はなかなか難しいですね。その、こんな状況ですので……」
言いにくそうな様子でそれだけ言うと、ランは口ごもる。
依頼が少なく、それを受ける冒険者も少ない。
日常運営することはできるが、大きく金を動かすことは難しい状況にあるということを指し示していた。
「次に、商会で買取をしてもらうという方法もありますが、こちらもこの街の状況ですのでなんとも……」
ランの様子から見るに、どちらの方法にしても、この街では難しいというのがわかる。
「となると、どっちにしても難しいか……他の街に行くにしても、離れてるからなあ」
このまま持ち運ぶにしてもまだ財宝はあの廃城にあり、それを残して他のところに行く余裕はない。だがすぐには売りにだすのは難しい。
どうしたものかと唸るハルを見たランは、硬い表情で口を開く。
「……一つ方法があります。この街の人の出入りは以前よりも少なくなってきているのですが……それでもお金持ちの方々の出入りは依然と変わり有りません。その理由の一つが――オークションです」
元々多くの人が流入するこのスイフィールの街は、オークションでも発展していた。
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名前:ハル
性別:男
レベル:2
ギフト:成長
スキル:炎鎧3、ブレス(炎)2、ブレス(氷)3、竜鱗2、
耐炎3、耐土2、耐風3、耐水2、耐氷3、耐雷2、耐毒3、
氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、
皮膚硬化、腕力強化2、筋力強化2、
火魔法3、爆発魔法2、解呪、
骨強化2、魔力吸収2、
剣術3、斧術2
加護:女神セア、女神ディオナ
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名前:ルナリア
性別:女
レベル:-
ギフト:オールエレメント
スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法2、雷魔法2、
水魔法1、光魔法1、闇魔法1
加護:女神セア、女神ディオナ
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