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才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『成長』チート~  作者: かたなかじ
第二章「旅立ち」

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第三十八話


 ハルが質問をすると、店員は暗い表情でゆっくりと口を開く。

「この街では、湖で獲れる魚を名物として色々な店で提供していました……。うちのようなお店はもちろん、出店で焼き魚を出すお店も――でも、今はそのほとんどがメニューを変えるか、休業中です」

 改めてこの街の状況を聞かされてハルもルナリアも驚いている。


「なぜそのようなことに? 以前この街に来た時は、とても美味しいお魚料理が出されていたと記憶していますが……」

 ルナリアは確かにこの店で、その料理を食べており、彼女の記憶にある中で最も美味しい魚料理だった。


「……もう、数か月前の話になります」

 以前のことを知っているルナリアに悲しげな笑みを浮かべたあと、店員はうつむき加減でポツポツと語り始める。


 数か月前に、最初に起きたのが湖の色が薄っすらと赤くなったこと。

 その程度であれば特に気にする者もおらず、みんないつものように生活をしていた。

 しかし、徐々にその色は濃くなっていき、元気に泳いでいたはずの魚たちがどんどん死んでいった。

 自分たちの生活に一番身近な存在である湖の異変に、おかしいと思った有志が湖の調査に乗り出した。


 巨大な湖であるため、まずは湖の状況を目で確認していく。

 最初見られていたうっすらとした赤色が、街の人たちにはなにか嫌な気配を感じさせるもののように思えた。


 湖面に何か変化はないかと、船を出して徐々に調査の範囲を広げていった。

 最初は変化なしの報告しかなかったが、徐々に範囲が広がるにつれてなぜか戻ってこない者が現れ始める。


 そんな中、みんなが戻ってこない原因を突き止め、なおかつ戻ってこれた者がいた。


 彼は元冒険者で今はこの街に定住している人物だった。


 彼の話では、湖の中央あたりに小さな島ができているとのこと。

 その島から何か魔力のようなものが流れ出して湖を変異させている。


 そして、その島には多くの魔物がいてみんなその魔物たちに襲われたのだろうということだった。

 もう一つ、不確定な情報があり、その魔物の中には人のような姿もあったとの話もあった。


「なるほど……」

 話を聞いたハルが腕組みをして何やら考え込む。

「そんなことが……」

 口元を押さえたルナリアは困っている店員さんの表情を見て、悲し気な表情になっている。


「うちはお肉を扱っても一流なので、問題なくやっていけてるんですけどね……厳しいお店も少なくなくて……」

 彼女の言葉は決して強がりというわけではなく、夜になるとそこそこの客が入っている。

 しかし、書き入れ時の昼なのに、このありさまなのは店にとっても大打撃なのも真実であった。


「……なるほど、なかなか大変なようですね。とりあえず、肉料理も一流と聞いたら注文をしようと思うんですが」

「あ、はい! もちろんです! ご注文伺います」

 ハッとしたように我に返った店員に、ハルはメニューを見ながら注文をしていく。


「あ、私も!」

 ハルをみて慌ててメニューとにらめっこを始めたルナリアも続く。


 二人は、店員から情報を得ながらこの店の一押しメニューをそれぞれ注文することにした。


 しばらく二人は談笑しながら外の景色を眺めて、料理を待つことにする。

 店が混んでいないこともあってか、すぐに料理は運ばれてくる。


 ハルが選んだのは牛肉のステーキ、ルナリアが選択したのは鶏肉の煮込み料理だった。


「いただきます」

「いただきます」

 手を合わせて恵みに感謝するハルの言葉にルナリアも続いて挨拶をしてから、食事を開始する。


「それで、どうする?」

 食べながら、ハルが質問する。

「どう、しましょうか……?」

 それに質問で返したルナリア。もぐもぐと咀嚼しながら小さく首を傾げている。


「俺たちだけで調査してってわけにもいかないからなあ、とりあえずはこの街の冒険者ギルドに行って、湖関連の依頼がないか確認してみよう」

「そうですね! 何か力になれるといいんですけど……」

 ハルの提案に嬉しそうに笑ったルナリアは根が善人であり、思い出のあるこの街の助けになれればと考えている。


 一方のハルはこれまで冒険者になることができ、最初のうちは力を手に入れたことで慢心する気持ちや、周囲からの冷たい仕打ちに対して、無意識の怒りのようなものがあった。

 しかし、ルナリアと共に過ごし彼女の為に行動をして、更に自分が冒険者になろうと思った理由などを彼女に話したことで改めて誰かを助ける、憧れのあの人のような冒険者になりたいという気持ちが再度強くなってきている。


「あぁ、冒険者はその力を持って困っている人間を助けないとだからな……もちろん報酬は必要だけどな」

 助けるという思い、そして仕事であるという事実。

「もちろんです!」

 この二つは冒険者である以上、切り離せないものであるため、ルナリアも理解しているようだった。


「まずは……」

「はい……」

「食事を続けよう」

「はいっ!」

 ハルの提案にルナリアは大きく頷いて、食事に手をつける。


 最初は綺麗に食べていた二人だが、気付けばどんどん手が進んで、口いっぱいに料理を味わっていた。


「やばい!」

「美味しい!」

 魚料理に期待していた二人だったが、肉料理の期待以上の味にとろけるような表情で舌鼓を打っていた。


 そこからは、会話もなく黙々と二人は手を動かしていく。

 その様子を離れた場所から見ていた先ほどの女性店員はふわりと笑顔になっていた。


「――ふう、食った食った」

「お腹いっぱいです……」

 二人はそれぞれがメインの料理を一品ずつとパンを頼んだだけだったが、なぜか食べ終えた時にはそれ以上の空の皿が並んでいた。


 二人がとても美味しそうに食べるのを見ていた女性店員はそのことをシェフに伝えていた。

 すると、客が少ないこともあって、サービスとして色々な料理を追加で出してくれていたのだった。


「いやあ、美味かった。シェフにもお礼を言っておいて下さい。まさか、こんなにたくさんの料理が出てくるなんて……」

「そうですそうです! とっっっっっっても美味しかったです!」

 満面の笑みの二人の言葉に女性店員もわがことのように嬉しくなっていた。


「肉料理でここまで美味いんだから、是非とも魚料理も食べないとな!」

「です!」

 そう言うと、二人は料金を女性店員に支払って店を出て行く。


「――あのお二人、もしかして……」

 嵐が去っていったかのように呆然と二人を見送った店員はぼそりと呟く。


 彼らがこの状況を打破してくれるかもしれない。

 そんな淡い期待が女性店員の胸に沸いていた。

 もちろん彼らの実力は全くしらないし、彼らがこれから冒険者ギルドに行くというのも知らない。


 しかし、それでも彼らには何かあるように思えていた。




*****************

名前:ハル

性別:男

レベル:1

ギフト:成長

スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、耐雷1、氷牙2、帯電1、甲羅の盾、鑑定、皮膚硬化、腕力強化1、火魔法1、爆発魔法1、解呪

加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


*****************

名前:ルナリア

性別:女

レベル:-

ギフト:火魔法1、氷魔法1、風魔法1、土魔法1、雷魔法1

*****************


お読みいただきありがとうございます。

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