第百五十二話
リカのおかげで他の候補者の情報だけでなく、前回までの情報を得ることができたエミリはハルたちと協力して準備万端で当日を迎えることとなった。
巫女たちは早朝から神殿に集まり、行われる試練の説明を受けることとなる。
ハルとルナリアも同行していったが、同行者用の待機室へと案内される。
「ここに案内されるってことは、俺たちは見やすい場所で観覧できるとか？」
ハルが疑問を口にすると、近くにいた別の候補者についてきたであろう人物が答えてくれる。
「君たちは今回の試練の情報をあまり知らないみたいだね。事前に来ていた巫女には色々伝えられたみたいだけど……もしかして、君たちの巫女候補が一番最後に来たのかな？」
その人物は優しい笑みを浮かべた青年で年齢はハルと同じくらい。綺麗にセットされた金髪で、服装はハルのような冒険者のソレではなく貴族のような服装である。
「数日前に来たから多分そうだと思う。しかし、その情報を知らされてないのは不公平だなあ……」
彼の口ぶりからハルは遅くきたからといって、もらえる情報が異なることに不満を覚える。
「あー、まあ二人が一緒についてきてるから、それほど情報の有無は関係ないかもしれないね。まあ、ざっくり言うと最初の試練は……」
「――ゴホンッ！」
青年が説明をしようとすると、別のグループの男性がそれを遮るように大きな咳払いをする。
三人が彼に視線を向けると、その男性は神経質そうな表情で三人を睨みつけている。
「仲良しごっこは虫唾が走る。そもそもそいつらが情報を得られなかったのは遅く来たからという自業自得によるものだ。だったらわざわざ情報をくれてやることもないだろ」
そう吐き捨てた男性は細身でくいっとあげた眼鏡の奥の冷たい眼差しでハルたちを見ていた。
他にも同行者はいたが、おおむね同じ考えのようであるようで、ハルたちの会話を快く思っていないようだった。
「あー、まあ考え方は色々なんだけどねえ。良く思われていないみたいだから、このへんで引き下がることにするよ。ごめんね」
困ったような笑みを浮かべつつ青年は謝ると、自らの仲間のもとへと戻って行った。
「……なるほどな」
しかし、ハルはそれで何かを納得、理解したらしく頷いていた。
「なにかわかりましたか？」
ルナリアは周囲に聞こえないように小さな声でハルに質問する。
「あぁ、いくつかはな。最初の試練には恐らく俺たちも参加することになる。だから、同行者はこの部屋に案内されたんだ。俺たち以外のやつらもみんな戦えそうなやつらだろ？」
平然とした表情のハルは反対に声を小さくせずに普通のボリュームで話す。
説明を受けたルナリアはというと、ゆっくりと周囲を見ていた。
その説明のとおり、みんながみんな武器を持っていて、明らかに戦う力をもっているようだった。
「そう考えると、俺たちが付き添いにきてよかったよ……。それで、話を続けると恐らく初日はレースのようなものか、各人がバラバラの場所からゴールを目指す形になるんじゃないかな」
なぜハルがその結論に至ったかが分からず、ルナリアは首を傾げる。
「巫女の力を計る試練のはずだから、俺たちが直接あいつらと戦う可能性は低いんじゃないかと思う。ただ、仲間の資質っていうのも重要だろうからそれを初日に確認するんだろう」
その予想は全て的を射ており、その声が耳に入っていた他の同行者たちは目を丸くしてハルのことを見ていた。
ちなみに、説明しようとしていた青年は肯定するように穏やかな笑顔でそれを聞いていた。
そんなやりとりをしていると、部屋がノックされ神官の服装をした男性が入ってくる。
「みなさん、試練の準備が整いました。巫女の同行者の方はこちらへどうぞ」
無表情の神官はそれだけ言うと、すっと背を向けて歩き始める。
全員参加するらしく、部屋は空になった。
神官に案内された先にはエミリたち巫女候補の姿があった。
その中には街で揉めていた二人の姿もあった。どこか空気がピリピリしているように見える。
「巫女には説明したが、これから行われる試練は同行者の力も試される。大いにその力を発揮して巫女の助けとなるように。では、神殿に来た順番に出発してもらう」
神官の説明を聞いた後、一組目が一歩前に出る。
「それではこちらの魔方陣に乗るように」
神官の指示に従って魔方陣にのった巫女候補たちは、姿を消し、どこかへと転移された。
「さあ、どんどん出発してくれ。転移先はそれぞれ異なるから同じ魔法陣に乗ってくれれば問題はない」
同じ場所に飛ぶのではないかという同行者たちの不安を読み取った神官が指示を出す。
街にやってきた順番どおりに転移するということは、当然ながらハルたちが最後の組になることを現している。
「さて、最後の組となるが、一つ説明をしておこう。全員がバラバラの場所に転移されて、森の中央にある大神殿を目指すこととなる。たどり着くまでにいくつもの難関が待ち構えている。それらから巫女を守るように」
それ以上は話すつもりはないと、神官は口をつぐんだ。
「わかった。教えてくれてありがとう。ルナリア、エミリ、行こう」
二人は無言でいたが、ハルたちのやりとりをしっかり聞いていた。
三人で魔法陣に足を踏み入れると魔法陣が光を放ち、三人を包み込む。
光が収束すると、三人が転移する。
「――ふむ、最後の彼ら……やるかもしれないな」
一人残った神官はすっと目を閉じるとそうつぶやく。
神官は基本的に私情を挟まない。しかし、ハルたちからは他とは違う特別な何かを感じ取っていた。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
名前：ハル
性別：男
レベル：４
ギフト：成長
スキル：炎鎧４、ブレス（炎）３、ブレス（氷）４、ブレス（毒）１、ブレス（闇）１、
竜鱗４、鉄壁４、剛腕３、統率１
耐炎３、耐土３、耐風３、耐水３、耐氷３、耐雷２、耐毒４、
氷牙２、毒牙２、帯電２、甲羅の盾、鑑定、
皮膚硬化、腕力強化６、筋力強化６、敏捷性強化５、自己再生
火魔法４、爆発魔法３、水魔法３、回復魔法１、解呪、
骨強化５、魔力吸収３、
剣術５、斧術３、槍術１、弓術１、短剣１
開錠１、盗み１、精霊契約
加護：女神セア、女神ディオナ
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
名前：ルナリア
性別：女
レベル：－
ギフト：オールエレメント
スキル：火魔法４、氷魔法４、風魔法４、土魔法５、雷魔法４、
水魔法３、光魔法４、闇魔法３
加護：女神セア、女神ディオナ
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
名前：エミリ
性別：女
レベル：－
ギフト：体術２、格闘術２、魔闘術１、先読みの魔眼
加護：武神ガイン
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
お読みいただきありがとうございます。
ブクマ・評価ポイントありがとうございます。
