第百二十三話
実際の入札は翌日の夜行われるため、その時に再度オークション会場に向かうことになった。
ハルたちは昼間はゆっくりと街を見て回って、食事や買い物などを楽しみ、最後に冒険者ギルドへとやってくる。
「あぁ、お待ちしておりました。みなさん素敵な服装ですね」
既にチェイサーは準備を終えてハルたちがやってくるのを待っていた。タキシードに身を包まれており、しっかりとした服装になっている。
チェイサー同様、三人もオークションに合わせて服を新調しており、ハルは同じくタキシードに、女性二人はドレスに身を包んでいる。
「俺はともかく、二人はよく似合ってるよな」
ハルが何気なく褒めると、二人はそれぞれの反応を見せる。
「えっと、ありがとうございます」
ルナリアは頬を赤く染めてややうつむき加減に礼の言葉を口にする。誰から見ても嬉しさがあふれているのが伝わってくる。
彼女が選んだのはシックなデザインのドレス。女性らしさを上品に出しており、伯爵令嬢の彼女の品の良さを引き立てていた。
「ありがとうなの!」
元気に返事を変えるエミリだったが、照れと嬉しさはその頬の赤さに現れている。
エミリが選んだのは彼女の愛らしさを引き立てる淡いブルーのリボンの大き目なデザインが特徴的なドレスだ。お揃いの髪留めが彼女の髪をまとめている。
「ふふっ、仲がよろしいようで微笑ましいですね。さて、それでは早速出発しましょうか」
チェイサーは馬車の準備もしてあり、いつでも出られる用意をしていた。
「わかった、馬車の中で色々と気をつけたほうがいいこととか教えておいてくれ。俺も二人もこういった場所に参加するのは初めてだからな」
落札側で参加するのはハルもルナリアも、もちろんエミリも初めてのことでありルールを知らない。
「もちろんです!」
それを理解しているチェイサーの返事は、任せろという気持ちのこもったものだった。
道中、馬車に揺られながら、チェイサーはオークション会場における注意点をいくつか説明してくれる。
・入札は代理人のみが行える(今回の場合はチェイサーのみ)
・オークション会場には多くの人がやってくる(例えば貴族、騎士、商人、冒険者)
そこでは、差別主義者や貴族主義者などもおり、獣人のルナリアやエルフのエミリが嫌な思いをする可能性が考えられる。
・入札において、相手が大金持ちである場合、一気に差をあけられてしまう可能性がある。
・狐の獣人は比較的珍しく、エルフはかなり珍しいので、二人は絶対にハルの傍を離れないこと。
・貴族とはもめごとをおこさないように。
「基本的にはこれらを守って頂ければ問題ありません」
その説明を受けて、ハルは腕を組んで何か考え込んでいる。
「えっと、何か疑問がありますか?」
その様子を見たチェイサーがハルに質問する。何か疑問、不満、問題点などがあるならば事前に解消しておきたかった。
「今の注意点だけど、いくつか矛盾点があるような気がして……」
顎のあたりに手をやったハルはどこか不満そうな表情をしている。
「どの、部分でしょうか?」
もしかしたら、そう思う部分はあったが、チェイサーはあえて質問する。
「俺が嫌な思いをするのは別に構わない。だけどルナリアやエミリに手を出そうとするやつがいたとしたら、俺はどう対応すればいいんだ? そもそも、何かしてくるとしたら権力者、つまり貴族がやってくるだろ? そうしたら、最後の貴族ともめごとをおこさないようにが引っかかってくる」
ハルが口にした疑問にルナリアもなるほどと頷いていた。
「そう、ですね……それでは注意事項にも優先順位をつけて、少し修正しましょう」
そういうと、先ほどの注意点をベースにチェイサーが改めて修正した注意点を説明する。
①入札は代理人のみが行える(今回の場合はチェイサーのみ)
希望の品であっても、元々の資金が違うため、大きく入札されたら落札できないこともある。
②狐の獣人は比較的珍しく、エルフはかなり珍しいのでハルの傍を離れないこと。
問題が起きた場合は、二人の身柄の確保が優先。相手は問わない。
③手を出されないにしても、差別などを受けることもある。
④上記のような問題があった場合を除いて、なるべく貴族とはもめごとを起こさない。
これが新しくチェイサーが提示した注意点だった。
「あぁ、これならいいな。極力貴族とのトラブルは避けるつもりだ、ただし二人に何かあればその限りではない」
「はい、それで構いません」
三人の間には絆があり、それを抜かして考えた注意点は意味をなさないとチェイサーは気づいていた。
「それでは、中に入ったら一緒に行動をしましょう。バラバラに行動していては、その隙をつかれてしまいますから」
あくまで女性二人の安全性の確保を第一にしようというのがチェイサーの判断である。
「わかった。それでいこうルナリア、エミリ、何かあったらすぐに声をあげてくれ」
ハルの言葉に二人は大きく頷く。
そんな話をしていると、オークション会場が見え始めてきた。
「――それでは、みなさん気をつけながら行きましょう」
中まで馬車を乗り付けることができるのは貴族だけであり、そのほかの商人や冒険者は敷地前で降りて馬車は別の場所におくことにきまっていた。
そのあたりのルールを守ってハルたちは中へと入っていく。
昨日の雑多な感じとは打って変わり、高貴な雰囲気を醸し出していている。
どこからか音楽が流れており、参加者たちもさほど大きくない声で談笑しているのがみえる。
チェイサーの話通り、さまざまな人がおり、互いの腹の探り合いをしているような不思議な空気に満ちていた。
「ここからが勝負になりますので、皆さま良い結果でも悪い結果でも顔に出さないようにお願いします。ほっとした表情を見せれば、ギリギリで相手が入札に参加してしまうかもしれません」
今までで一番真剣な表情のチェイサーに、ハルもルナリアもエミリも無言のまましっかりと頷いていた。
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名前:ハル
性別:男
レベル:3
ギフト:成長
スキル:炎鎧4、ブレス(炎)3、ブレス(氷)4、ブレス(毒)1、ブレス(闇)1、
竜鱗4、鉄壁2、剛腕1、統率1
耐炎3、耐土3、耐風3、耐水3、耐氷3、耐雷2、耐毒4、
氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、
皮膚硬化、腕力強化4、筋力強化4、敏捷性強化3、自己再生
火魔法4、爆発魔法3、水魔法3、回復魔法1、解呪、
骨強化3、魔力吸収3、
剣術5、斧術3、槍術1、弓術1、短剣1
開錠1、盗み1、
加護:女神セア、女神ディオナ
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名前:ルナリア
性別:女
レベル:-
ギフト:オールエレメント
スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法3、雷魔法2、
水魔法1、光魔法2、闇魔法1
加護:女神セア、女神ディオナ
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名前:エミリ
性別:女
レベル:-
ギフト:体術2、格闘術2、魔闘術1、先読みの魔眼
加護:武神ガイン
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