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才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『成長』チート~  作者: かたなかじ
第四章「人獣王都へ」

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第百二十二話


 部屋を出た一行は、あの胸当てのことには触れないようにして他に興味があるものがないか見てまわっていた。


 その中でルナリアは魔法の威力を強くする杖【ルナティックケーン】が気になる様子だった。

 夜空を切り取ったような深い色の滑らかな素材でできており、月のモチーフとキラキラと輝く星空のエフェクトがとても綺麗な杖だ。

 

「あの、私の名前の一部がついていますし、それになんだか惹かれるものがありまして……」

 ルナリアはじっと見ていたことに気づいたハルにわたわたと手を振りながら困ったように笑う。

 明確にこれという理由は言えないが、それでも彼女には何かこの武器が欲しいと思わせるものがあるようだ。


「なるほど、エミリだけ買ってルナリアに買わないというのは不公平だから狙ってみよう。チェイサー、メモしておいてくれ」

「承知しました」

 ハルの言葉に笑顔で頷いたチェイサーは手際よくメモを取る。


 エミリの胸当て、ルナリアの杖――ハルたちはオークションで二つの装備を狙うこととなる。


「えっと……ハルさんは何か欲しいものはないのでしょうか?」

 そっと伺うように尋ねるルナリアは自分たちばかりでハルが何も選んでいないことを気にしているようだ。

「そうなの、ハルも何か買わないと、それこそ不公平なの」

 くいっとハルの裾を引きながらエミリが加勢する。


「どうなされますか?」

 これで何もないというのはバツが悪いですよ? と少々意地悪な笑みを浮かべてチェイサーが質問してくる。


「あー……わかった、わかったよ。俺も何か探してみるよ」

 三人からの視線に敵わないなと思ったハルは肩を竦めてそう言うと、再び館内を最初から見て回ることにする。

 二人の欲しいものが落札できれば十分だと考えていたため、そこまで真剣に見ていなかったのに加え、ざっくりと見た限りでは心惹かれるものがなかったためである。


「なければ無理にではなくてもいいですよ?」

「うん、ハルが本当に欲しいものを見つけよ?」

 ハルの心の内を読んだのか、ルナリアをエミリは的確な言葉をかけてくる。


「あぁ、わかったよ。みんなはここかさっきの部屋で待っていてくれ」

 ここまでしばらく見て回ったことでみんなが疲れているだろうと考え、ハルはそう言い残してすたすたと行ってしまう。


「あら」

「行っちゃったの」

 その背中を見送るルナリアとエミリはどこか寂しそうにしている。


「ふふっ、お二人ともハルさんのことが好きなようですね」

 主人に置いて行かれた小動物を思わせる二人の様子にチェイサーは楽しそうに笑う。


「そ、そそそ、そんな……!」

「うんっ、大好きなの」

 ルナリアはわかりやすく動揺し、エミリは素直に感情を口にする。


「ふふっ、お二人ともわかりやすくてよろしいですね。さぁ、先ほどの部屋に行きましょう」

 チェイサーは二人の反応をそれぞれ微笑ましく思い、さっきの部屋へと二人を案内する。





 一人になったハルはじっくり品物を吟味しながら見ていく。

 ざっと見るだけではなく、各出品物の説明も確認している。


「うーん、これといったものはないなあ」

 剣、槍、ツボ、宝石、服、絵画……たくさんの品が並べられているが、どれもハルの興味をひくものではなかった。


 ルナリアたちの表情を思い出すと、手ぶらで戻るのは気がひけるハルは弱ったなと表情をゆがめながら歩いていると、目立たない場所にポツンと展示されている品物がある。

 誰も目にとめず素通りされているそれにハルはなぜか何か惹かれるものがあった。


「……なんだ?」

 近づいてみると、そこには銀色の腕輪が三つある。


 説明はシンプル――『お揃いのデザインの腕輪』


「ほう、これはすごいな」

 商品の魅力を引き出すようにライトアップされて輝くその腕輪をじっと見ながら、ハルは感嘆のため息を漏らす。


「びっくりするくらいに何もないな。でも、何か気になる」

 説明からも、見た目からも何も伝わってこないため、ハルは驚いてしまう。しかし、それでも何か引きつけられるものがあった。


「注目度も低そうだな。俺はこれにしておこう」

 腕輪にしようと決めてからも、いくつか見て回ったがこれといったものは見つからず、結局腕輪三つに決めてみんなが待つ部屋へと戻って行った。


「みんな戻った……ぞ」

 最後の『ぞ』だけ、聞き取れるかどうかのレベルの小さな声で言う。

 部屋の端の方に控えていたチェイサーが口元に手をやってくすくすと笑っていた。


 そのままチェイサーが指差した先にハルが視線を向けると、優しい表情で目を閉じるソファに座ったルナリアの膝枕で、穏やかな寝息をたてるエミリの姿があった。

 可愛い寝顔を見たハルは、ふっと表情をやわらげて数秒考えると指で合図をする。


 まず一つ目、ルナリアはそのままでエミリを寝かせてやるように。

 二つ目、自分を指さし、次にチェイサーを指して、最後に扉を指し示す。

 つまり、外に出て話をしようという合図である。


 頷いたチェイサーを伴ってハルは部屋をあとにする。


「……何か、いいものがありましたか?」

 まだ部屋が近いため、声を抑えてチェイサーが質問する。


「あぁ、腕輪なんだけど見てもらってもいいか?」

「もちろんです」

 二人はハルが目的とする腕輪のもとへと向かう。

 相変わらずそこには誰もおらず、閑散としている。ただ静かに腕輪が照明に照らされ、輝いているだけだ。


「ほう、このような場所にも展示されていたのですね」

 チェイサーは今回出品される商品をひと通り見ていたが、見落としていたものだった。


「どう思う? 俺はこれが気になっているんだけど」

 近くにいるのはハルとチェイサーだけであるため、声を抑える必要もなく話をする。


「そう、ですね……すみません。うーん、特別な代物とは言えないと思います。ですが、ハルさんが目をつけたのもわかるような気もします。何かがある……漠然としていてすみませんが、そう思います」

 数多くのアイテムを見てきたチェイサーでも、この腕輪についてはなんなのか把握できないようだった。


「でもまあ、そういうことならきっと入札も少ないだろ。俺の資金はこれだけなんだけど、三ついけるか?」

 所持金から算出したおおよその数字を紙に書いてチェイサーに見せる。周囲に人がいないのを確認してるがゆえの行動だった。


「えぇ……おそらくは大丈夫だと思います。私のほうでも別の品に入札予定ですので、三つを狙い撃ちにしているとは思われないはずです」

 優秀な代理人が入札するものは注目されやすいため、チェイサーはそれを散らしていく。


「なるほど、うまくとれるといいんだが。最悪の場合、エミリの分を優先で頼む」

 ハルの頼みにチェイサーは笑顔で深く頷く。

 彼らがエミリを思う気持ちを感じとったチェイサーは、絶対に譲れない条件であるということはよくよく理解していた。



*****************

名前:ハル

性別:男

レベル:3

ギフト:成長

スキル:炎鎧4、ブレス(炎)3、ブレス(氷)4、ブレス(毒)1、ブレス(闇)1、

     竜鱗4、鉄壁2、剛腕1、統率1

     耐炎3、耐土3、耐風3、耐水3、耐氷3、耐雷2、耐毒4、

     氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、

     皮膚硬化、腕力強化4、筋力強化4、敏捷性強化3、自己再生

     火魔法4、爆発魔法3、水魔法3、回復魔法1、解呪、

     骨強化3、魔力吸収3、

     剣術5、斧術3、槍術1、弓術1、短剣1

     開錠1、盗み1、


加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


*****************

名前:ルナリア

性別:女

レベル:-

ギフト:オールエレメント

スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法3、雷魔法2、

     水魔法1、光魔法2、闇魔法1

加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


*****************

名前:エミリ

性別:女

レベル:-

ギフト:体術2、格闘術2、魔闘術1、先読みの魔眼

加護:武神ガイン

*****************


お読みいただきありがとうございます。

ブクマ・評価ポイントありがとうございます。

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