第百十九話
「装備も用意できたことだし、次はギルドに報告に向かうか」
ハルたちが村を襲った盗賊たちを倒したあと、冒険者ギルドから援軍がやってきた。
しかし、彼らは何が起こっていたのか詳細には知らないため、ハルたちが報告するのが一番だった。
そう判断したハルとルナリアはエミリを連れ立って冒険者ギルドへと向かう。
到着したハルが受付で簡単な説明をすると、すぐにギルドマスタードラクロへと話を通してくれて、部屋へと案内された。
「――それで、一体何があったんだ?」
険しい表情で質問するドラクロを見て、エミリは思わずルナリアの陰に隠れる。
「おいおい、女の子がいるんだから少しは笑顔になってもいいんじゃないのか?」
呆れ交じりのハルの指摘を受け、ドラクロは余計難しい表情になっている。
「そんなことよりも、早く説明をしろ」
ドラクロはハルの言葉を冗談と判断して、話を促すことにする。
「わかったよ。俺たちは街の入り口が騒がしいから駆け付けてみた。そこにいたのは、一番近くの村の住人で身体もボロボロだった」
ため息を吐き、ことの始まりから説明するハル。
ドラクロは事前に聞いていた情報と照らし合わせるようにハルの話に耳を傾ける。
「俺とルナリアは近くにいたやつに馬を借りて村へと急いだ。見ていた人には冒険者ギルドへ連絡するように伝えて、その後は話が来たと思う」
あとから冒険者がかけつけたことから、そういうやりとりがあったのだろうと予想する。
「その通りだ。話を聞いた俺は、すぐ動ける冒険者を募って村に向かわせた。ただ、話を聞いて、それをもとに募集をかけて、更に集まったやつらに指示を出してと、動き出しは遅くなったがな」
もっと早く動けなかったものかと悔しげな表情のドラクロは反省しながら自分の行動を振り返っている。
「あぁ、おかげで色々と手伝ってもらえたから助かったよ。早く動いたとしても、状況が好転していたかはわからない……とにかく、俺たちは馬に頑張ってもらって村へと急いだ」
ハルは話を続ける。
「そこは地獄のようだったよ。村は焼け、人は死に、盗賊と魔物が闊歩していた。俺とルナリアは、盗賊と魔物たちを倒しながら村の中央に向かって行った」
村での光景を思い出しながら話すハルの表情は険しいものになっている。
「頭目の男はひと際強そうな魔物を連れていた。そいつとの戦いの最中に彼女と出会ったんだ。――エミリ、挨拶をするんだ」
ハルに促され、ルナリアの影から顔を出したエミリは立ち上がって少し服を整えたのち、自己紹介を始める。
「私の名前はエミリです。見てお分かりのとおり種族はエルフです。村で盗賊に襲われそうなところを、ハルとルナリアに助けてもらいました。よろしくお願いします」
緊張しながらもエミリがしっかりと挨拶をして、再びハルとルナリアの間に座る。
ふっと表情をやわらげたハルはそんな彼女の頭を撫で、聖母のように微笑むルナリアは背中を撫でていた。
当のエミリは笑顔で、頬を赤く染めていた。
「なんともはや、うまくてなづけたものだな」
三人を見て呆れるように言うドラクロ。
しかし、この言葉はよくなかった。
「っ……てなづけられてなんかないの!」
大声を上げながらエミリは顔を赤くして立ち上がる。今度は先ほどの照れた様子とは異なり、怒りの表情だった。
「二人はてなづけようとなんてしてないの! ただただ優しくしてくれただけなの!」
我慢できないと言わんばかりにドラクロを怒鳴りつけるエミリ。
彼女は息荒く、今にもつかみかからんばかりに敵意をむき出しにしている。
「エミリ、いいんだ。わかってるよ。ドラクロだって何も本気で言っているわけじゃないんだ、座ろう」
「そうです、エミリさん。ドラクロさんは悪い人じゃないです。落ち着いて下さい」
二人に声をかけられて、エミリは渋々着席することにする。
「エミリだったな……すまない。失礼なことを言った」
ドラクロの決断は早く、すぐに深々と頭を下げてエミリに謝罪する。
この反応は予想していなかったらしく、きょとんとしたエミリの怒りはどこかへ消えて、それ以上に驚きに満ちていた。
「ははっ、こういうやつなんだよ……といっても、俺もこんなにあっさりと頭を下げたのには驚いたけどな」
ドラクロの誠実な対応に笑顔になるハルは、いかにも自分はドラクロのことを知ってますといった反応をした。
しかし、反応してみたものの言うほどドラクロのことを知らないなと思いなおす。
「ふふっ、でもこれだけ素直に謝罪をされたら受け入れないわけにはいかないですよね?」
意固地にならないでという思いで、ルナリアがエミリに声をかける。
「……うん、わかった。ドラクロの謝罪を受け入れる。怒鳴ったりしてごめんね」
気持ちが落ち着いたエミリも自分の行動を反省して謝罪をする。
「いや、俺が悪かったからいいんだ。ふう、いかんな思わず口が悪くなってしまう。気をつけんとな」
それに対して自分の頭をパンパンと叩いて、自分を戒めるドラクロ。
「さて、それじゃあ話を戻そう。とにかく頭目と魔物を倒した俺たちは、援軍が来てから戻ってきた。エミリの保護者は既に亡くなっていたから、俺たちが連れていくことにした。彼女の目的地に」
細かい戦いの部分を端折って説明するハル。
その部分はドラクロもどうでもよかったらしく、ツッコミはいれない。
それよりも気になったのが、エミリを目的地に連れていくというものだった。
「どこに? それにお前たちはそこに行くまで同行するのか?」
ギルドマスターとして、実力のある二人がこの街からいなくなってしまうのは損失であると考えていた。
「――中央大森林」
一言だけ告げるハル。
聞いたドラクロはそれなら、仕方ないと言葉を飲み込むことにした。
「とにかく、これが今回の一連の事件の報告だ。あの盗賊たちがなんで魔物を連れていたのかはそっちで調査してくれ。俺たちは少し疲れたから休ませてもらう。じゃあな」
「あぁ、助かった。まだオークションのことで街にいるだろうから、何かあったらあとで聞かせてもらうぞ」
その言葉にハルは手をひらひらと振って返し、部屋を出て行く。
ルナリア、エミリはペコリと頭を下げると、ハルのあとを追いかけていった。
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名前:ハル
性別:男
レベル:3
ギフト:成長
スキル:炎鎧4、ブレス(炎)3、ブレス(氷)4、ブレス(毒)1、ブレス(闇)1、
竜鱗4、鉄壁2、剛腕1、統率1
耐炎3、耐土3、耐風3、耐水3、耐氷3、耐雷2、耐毒4、
氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、
皮膚硬化、腕力強化4、筋力強化4、敏捷性強化3、自己再生
火魔法4、爆発魔法3、水魔法3、回復魔法1、解呪、
骨強化3、魔力吸収3、
剣術5、斧術3、槍術1、弓術1、短剣1
開錠1、盗み1、
加護:女神セア、女神ディオナ
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名前:ルナリア
性別:女
レベル:-
ギフト:オールエレメント
スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法3、雷魔法2、
水魔法1、光魔法2、闇魔法1
加護:女神セア、女神ディオナ
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名前:エミリ
性別:女
レベル:-
ギフト:体術2、格闘術2、魔闘術1、先読みの魔眼
加護:武神ガイン
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