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才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『成長』チート~  作者: かたなかじ
第四章「人獣王都へ」

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第百十七話


 ハルはベッドに座ったエミリの頭に軽く手を乗せる。

 一瞬ビクリと震えたが、ハルの手のぬくもりにエミリの身体の力が抜けていく。


「いくぞ……【解呪】!」

 スキル名を口にすると、ハルの手が光り、続いてエミリの身体が淡い光を放っていく。


「わ、わわわっ! な、なんか光ってるよ!?」

 驚いて声を出すエミリだったが、ハルは解呪することに集中しているため、反応をすることができない。


「エミリさん、ハルさんを信じて動かずにいて下さい」

 いつの間にかルナリアがエミリの隣にきており、優しく微笑みながら手を握って声をかける。

 真剣な表情で言われたエミリは、静かに頷いて返した。


 次第にエミリを包む光が強くなって、そして徐々にそれが収まっていく。


「ふう、これで完了だ。どうだ? 何か変わった気がするか?」

 解呪が終わったため、ハルはエミリに自身の身体に変化がないか尋ねる。


「う、ううん? どうだろ? 変わったような、変わってないような……?」

 何かが変わった、そんな感覚はある――しかし、それがなんのかわからないといった様子のエミリ。きょとんとした表情で自分の身体をペタペタと触っている。


「エミリさん。その気持ちすごくわかります。私も同じ経験をしました」

 柔らかく微笑んだルナリアが、エミリの肩に手を置いてうんうんと何度も頷いていた。


「一応確認をしておくか……」

 ハルは鑑定でエミリの能力を確認する。




*****************

名前:エミリ

性別:女

レベル:-

ギフト:体術2、格闘術2、魔闘術1、先読みの魔眼

加護:武神ガイン

*****************





「あぁ、ちゃんと解呪されてるな。まあそのままじゃきっとわからないだろうから外に行こう」

 ふわりと表情をやわらげたハルは立ち上がると、部屋を出て行く。

 顔を見合わせたエミリとルナリアも慌ててそのあとをついていった。


 先を歩いていくハル、しかしその速度は歩幅の小さなエミリを思いやったもので、二人はすぐにハルに追いついていた。


「どこに行くの?」

 隣に来たところで、左手でハルの手を握りながら質問をするエミリ。


「あぁ、言ってなかったな。エミリの力を確認しようと思ってな。何かぶん殴るものがあるところに移動しよう」

 詳しい説明をしていなかったことを思い出して、ハルが答える。


「魔物、ですか……?」

 子どもであるエミリにいきなり実戦で試させてもいいものかとルナリアが心配する。


「いや、とりあえずは俺が相手になってもいいし、木を殴ってもいいかと思ってる」

「なるほどです。それで力を確認したら、実戦ということですね」

 ハルの案にルナリアは納得したように微笑みながら頷いていた。


「楽しみだなっ」

 これまで自分の力を発揮することができなかったエミリは、ワクワクしていた。

 具体的に何が変わったのかは本人もわかっていないが、それでも何か変化はあるように感じている。そしてハルも呪いが解除できたと言っている。


 ならば、きっと自分には大きな変化が起きているのだろうと信じている。


「まずは街から離れた場所で色々試してみよう」

 ハルの言葉に二人は頷いて、街の外へと向かっていく。






 一行は、街から数十分歩いた場所にある草原に生えている木のふもとにいた。


「さて、この木には申し訳ないけどエミリの練習台になってもらおう。準備はいいか?」

「ふっふっ! 任せて!」

 ハルが声をかけると、エミリはぐっと力を込めた表情でパンチの素振りをして準備していた。


「いきなり全力はやめておけよ? まずは軽くあてることを考えるんだ。自分の身体がちゃんと動くか、攻撃に使えるか、それが重要だからな」

「うんっ!」

 ハルの言葉を聞いて、しっかりと自分の中で理解して返事をするエミリ。

 気合の入った表情でこぶしを握る。


 その拳にはルナリアが用意した布が巻かれていた。

 彼女の小さな拳を傷めないようにするためだった。


「それじゃ……開始!」

 ハルの言葉を合図に、エミリが木に駆け寄って拳を繰り出していく。


 無言で放たれる拳。

 木に当たらないギリギリを狙っているように見える。

 しかし、拳から放たれる衝撃波が木の表面にその爪痕を残していた。


 最初の一撃をきっかけに次々とエミリは攻撃を繰り出した。


「――すごいな」

 エミリの動きが徐々に素早くなっていくのを見て、ハルは思わずそう呟いていた。

「はい……」

 見惚れるようにぼんやりとエミリを見るルナリアも驚いていた。


 身体が温まってきたエミリは、徐々に拳を木に当てていく。

「せやああああ!」

 何発か拳を当てたところで、大きく振りかぶって渾身の一撃を繰り出す。


 ドゴンという大きな音とともに繰り出された拳。

 次の瞬間、メキメキと音をたてて木が真っ二つに割れていく。


「わ、わわあああああぁ!」

 自分でやったことだというのに、エミリは驚いて声をあげていた。

 真っ二つに割れた木の半分が斜めに倒れ、近くにいるエミリを巻き込もうとしている。


 しかし、驚いているエミリはその場を動けずにいた。


「危ない!」

 それを見たハルは飛び出すように走り出して、エミリを庇う。


 ミシミシという音を立てながらハルの背中に木が倒れてくる。


「きゃああああああ!」

 エミリは自分だけでなくハルまで巻き込んでしまう恐怖に怯え、悲鳴をあげる。


「大丈夫だ」

 倒れた木はハルの背中にぶつかるが、皮膚硬化、筋力強化、そして竜鱗を背中に発動しているため、大したダメージを与えることなくハルの背中に乗っている。


「ふう、なんとかなりましたね」

 少し遅れて、ルナリアが風魔法で風の障壁を作り出して重さを軽減させていた。


 木の重量のほとんどをルナリアが受けてくれている間に、ハルはエミリを抱えて横に移動して木を回避する。


「エミリ、怪我はなかったか?」

 安全な場所でエミリの怪我を確認するハル。

 その言葉を聞いたエミリの目にはみるみるうちに大粒の涙が浮かんでいく。


「どうした?」

「どうしました?」

 その様子を見たハルとルナリアが気遣うように声をかける。


「――わ」

「「わ……?」」

 こみ上げる涙に唇をかみしめたエミリの言葉を聞き返す二人。


「っ……わあああああああああああああああん!!」

 次の瞬間、大きな瞳いっぱいに溜め込んだ涙腺が決壊し、次々にぼろぼろと大粒の涙が流れていく。

 大声をあげて涙を流すエミリに、戸惑いながらもハルは頭を撫で、優しく微笑んだルナリアは背中をゆっくりとさすっていた。



*****************

名前:ハル

性別:男

レベル:3

ギフト:成長

スキル:炎鎧4、ブレス(炎)3、ブレス(氷)4、ブレス(毒)1、ブレス(闇)1、

     竜鱗4、鉄壁2、剛腕1、統率1

     耐炎3、耐土3、耐風3、耐水3、耐氷3、耐雷2、耐毒4、

     氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、

     皮膚硬化、腕力強化4、筋力強化4、敏捷性強化3、自己再生

     火魔法4、爆発魔法3、水魔法3、回復魔法1、解呪、

     骨強化3、魔力吸収3、

     剣術5、斧術3、槍術1、弓術1、短剣1

     開錠1、盗み1、


加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


*****************

名前:ルナリア

性別:女

レベル:-

ギフト:オールエレメント

スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法3、雷魔法2、

     水魔法1、光魔法2、闇魔法1

加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


*****************

名前:エミリ

性別:女

レベル:-

ギフト:体術2、格闘術2、魔闘術1、先読みの魔眼

加護:武神ガイン

*****************


お読みいただきありがとうございます。

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