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才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『成長』チート~  作者: かたなかじ
第四章「人獣王都へ」

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第百十六話


 エミリを伴って、街に一旦戻ることにするハルとルナリア。


「しかし、どうしたものかな」

 一頭の馬に三人でまたがって街へとゆっくり向かう三人。


 ハルの前に座るエミリは小さなその身をハルに預けて眠っていた。

「どう、とは……?」

 不思議そうな表情でルナリアが言葉を返すが、既にエミリを送っていくのは決定事項だと考えているため、ハルが何を悩んでいるのかわからなかった。


「エミリをエルフの国に送ること自体はいいんだけど、俺たちは少人数パーティだ。だから何かあった時に果たして守りながら戦えるのかと思ってな」

 これから向かうにあたっての、安全性の確保についてハルは悩んでいた。


「なるほど、確かにそれはそうですね。エミリちゃんを守りながらとなると、どちらかは逃げに徹して、どちらかが戦闘、という状況が多くなるかもしれません」

 それは一方にのみ負担を強いるため、良い状況とは言えなかった。


「――わたしも戦うの」

 それはエミリの声だった。


「寝ていたと思ったけど、起きていたのか」

 ハルに身体を預けたまま、エミリは首だけ振り返る。


「うん、さっき起きたの。二人の足手まといにならないように、わたしも戦うの」

 両手で拳を作る様子はかわいらしく、戦うことを宣言するその姿は微笑ましいものだった。


「で、でもエミリさんはその、子どもですよね?」

 子どもだから戦えないということもないが、一般的に子どもは庇護の対象であるため、ルナリアは戸惑っている様子だった。


「うん、でも戦うの!」

 ルナリアの言葉を意にも介さず、戦う宣言をするエミリ。

 無邪気さいっぱいの彼女からは役に立ちたいという気持ちが伝わってくる。


 そんな二人のやりとりを見て、ハルは一つ気になることがあった。


「もしかして……」

 ここまで関りは極々短い関係ではあったが、エミリがなんの考えもなくそんなことを口にするとも思えなかった。

 それゆえに、ハルは彼女の能力を確認する。




*****************

名前:エミリ

性別:女

レベル:-

ギフト:体術2、格闘術2、魔闘術1、先読みの魔眼

加護:武神ガイン

呪い:弱体の呪い

*****************




「――って、エルフで武術かよ!」

 能力を確認したハルは思わず大きな声で突っ込んでしまう。


 エルフ種は魔力が強く、魔法系のギフトを持つものがほとんどである。

 武器を使って戦う者もいるが、筋力に特化しているわけではない彼らは弓術や細剣術を使うものが大半だった。


 その中にあって、エミリのギフトは異端であった。


「すごーい、ハルはわたしの力がわかるの? うん、私ね、武術が得意なんだ。……ただ、身体が小さいからまだまだ力を使いこなせてないの……」

 戦う力はあるが、それが使えないことに歯がゆさを感じている。そんな悔しさがエミリの顔に滲みでていた。


「……どうしてこう、俺のもとには呪い持ちが集まるんだ」

 ため息交じりのハルの呟きにルナリアが驚く。


「――えっ!? もしかして、エミリさんも?」

 ルナリアも以前呪いがかけられており、それをハルに解除してもらった。

 そして、目の前にいる少女も同じ呪い持ちであるとのこと。

 その事実は、ルナリアからエミリに対して妙な親近感をもたらすことになる。


「の、ろい……?」

 聞きなれない言葉にエミリが首を傾げる。その瞳は不安そうな色に揺れている。


「あぁ、身体が小さいからっていうのは確かに理由の一つだとは思う。しかし、エミリが本来の能力を使いこなせない最大の理由は呪いがかけられているからだと思う」

 のろいというのがなんなのかわからないエミリ。しかし、ハルの話からどういうことなのか理解していた。


「そののろいがなんとかなれば、わたしは戦えるの?」

 縋るように見上げるエミリの瞳に強い光が灯る。


 ハルは『成長』に目覚めるまで戦う力を持たなかった。ルナリアは呪いが解けるまで満足に魔法を使うことができなかった。


 二人と似た境遇にある少女。

 彼女も力を使えずに悩んでいた。苦しんでいた――そんな彼女に見えた光明。


「あぁ、そうなれば戦う力は既に宿っているはずだ。それに、呪いは俺がなんとかするから安心していい」

 エミリを安心させるように胸にどんと手を当てて力強く言うハル。


「っ……う、うぅっ……」

 ハルの言葉に一瞬目を大きく見開いたエミリはふるふると震えたのち、顔を隠しながら涙を流している。

 彼女の気持ちが伝わってきたハルは何も言わずに彼女の頭を撫でた。




 街に到着した頃にはエミリも泣き止んでおり、その顔には無邪気な笑顔が戻っていた。




「まずは宿に行こう。そこで解除するぞ」

「うん!」

 馬は街の入り口で返却し、歩いて宿に向かうがエミリの足取りは軽く飛び跳ねるかのように、ステップを踏んで二人の少し先を行く。


「ほら、後ろ向きで歩くと転ぶぞ。こっちに来るんだ」

「うん」

 ハルの指示に従ってエミリは隣にやってくる。そして右手をハルに差し出す。


「あぁ、それが安全だな」

 エミリの笑顔につられるように表情をやわらげたハルは左手で握り返す。


「ルナリアも!」

 にぱっと笑ったエミリは左手をルナリアに差し出して、ルナリアも笑顔でそれを握り返した。


 人族、獣人族、エルフ族――三人の種族は異なるが、はたから見たらまるで親子のようであり、道行く人々も仲良く歩く三人のことを微笑ましく見ていた。


 宿にたどり着くと、エミリの分の料金を追加で支払って部屋へと向かう。


「それじゃあ、エミリ。そのベッドに座ってリラックスしてくれ」

「はい……」

 緊張しているのか、言葉遣いもいつものものとは違い、表情も固い。


「ははっ、リラックスって言ってるのに反対の反応だな」

「うぅ、だってぇ……」

 緊張でガチガチのエミリを見て思わずハルは笑みをこぼす。

 これまでの自分から大きく変化するかもしれない。それが彼女に緊張をもたらしていたようだ。


「まあ、いいさ。今から解除するから目を瞑ってくれ」

「は、はい」

 緊張が抜けないエミリだが、ぎゅっと目を瞑りながらも怯えている様子はなく、ハルのことを信じているようだった。

 

*****************

名前:ハル

性別:男

レベル:3

ギフト:成長

スキル:炎鎧4、ブレス(炎)3、ブレス(氷)4、ブレス(毒)1、ブレス(闇)1、

     竜鱗4、鉄壁2、剛腕1、統率1

     耐炎3、耐土3、耐風3、耐水3、耐氷3、耐雷2、耐毒4、

     氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、

     皮膚硬化、腕力強化4、筋力強化4、敏捷性強化3、自己再生

     火魔法4、爆発魔法3、水魔法3、回復魔法1、解呪、

     骨強化3、魔力吸収3、

     剣術5、斧術3、槍術1、弓術1、短剣1

     開錠1、盗み1、


加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


*****************

名前:ルナリア

性別:女

レベル:-

ギフト:オールエレメント

スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法3、雷魔法2、

     水魔法1、光魔法2、闇魔法1

加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


*****************

名前:エミリ

性別:女

レベル:-

ギフト:体術2、格闘術2、魔闘術1、先読みの魔眼

加護:武神ガイン

呪い:弱体の呪い

*****************


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