表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/171

第百一話


 全員が集まるとかなりの大所帯となり、それが固まって街に戻ることは街の人々の注目を集めることとなる。


「これはさすがに目立つなあ……」

「なんだか、分不相応な注目のされかたのような……」

 ハルとルナリアは落ち着かない様子だが、街中で馬車を急がせるわけにもいかず、ゆっくりと冒険者ギルドへと向かっている。


「まあ、仕方ないんじゃないかな? 今回の一番の功労者は二人だからね」

 そんなことをいうゼンラインのことを二人はジト目で見る。

 本来の一番の功労者はゼンラインであることは、ハルもルナリアも、そしてエリッサも知っている。

 彼は街に帰るというハルの馬車にいつの間にか相乗りし、外からはわからないように顔を隠していた。


「いやあ、俺がいることが知られたら大騒ぎになるからねえ。今回、あの場所にいたのもギルドの依頼じゃなく俺個人で素材を集めにいっただけだし」

 SSSランクがいるとなると、あることないこと吹聴して大騒ぎする者も出てくるため、おいそれと自らの正体を明かすことができない。そう言ってゼンラインはいたずらっ子のように笑った。


「まあ、わかるけど……なんで俺たちが先頭を行くことに……」

 ゼンラインの事情を察したハルは仕方ないと割り切っていたが、注目の的になるのは勘弁してもらいたいと思っていた。


 現在ハルたちの馬車は冒険者たちの一団の、一番前を進んでいる。

 それゆえに、最も注目されるのがハルたちの馬車となっていた。


 これはエリッサの提案であり、戦闘に最も貢献したハルたちの馬車が先頭を行くのが一番だと、他の冒険者たちも納得した結果だった。


「まあ、一番長く戦闘していたのは二人だし、状況を説明するのも二人とあっちの馬車のエリッサの三人がするのがいいと思うよ」

 ゼンラインはなだめるようにハルに助言する。

 ちょうど彼が目線を向けた先、エリッサたちの馬車はハルたちの一つ後ろをついてきていた。


 ただでさえ集団で目立つ状況で、しかもベヒーモスに関しての報告というだけでも大騒ぎしそうな案件であるため、これ以上驚く要素はないほうがいいだろうというのが、事前に話した内容ではあった。


「まあ、わかるんだけどさ。そうなんだけど、それでも、こう、ね……」

「ですです、わかります。アレを倒したのは、ですよね!」

 二人とも思っていることを明言したいところだったが、なるべく聞こえても大丈夫な言葉を選んだ結果がこの、謎な会話となっていた。


「はいはい、気持ちはわかるよ。まあ、一応俺もついていくけど、変装しておいて、かつ発言は最小限でいくつもりだから、そこのところよろしく」

 あくまで自分は第三者的な立場で静観するつもりであるゼンラインに対して何か言おうとしたハルだったが、冒険者ギルドに到着したところであるため、言葉を飲み込むことにした。


 全員でギルドの中に入っては大騒ぎになってしまうため、代表としてハルとルナリアとエリッサが入ることになった。また、ゼンラインは関係ないふりを装って建物に中にいた。


 外に冒険者たちが集まってきている情報は既に受付嬢たちには伝わっていた。


「あ、あの、これは一体どういうことなんでしょうか……?」

 それはハルたちの依頼の受付を担当したカナの言葉だった。


 ハルたちが受けた依頼は幼体黒鉄竜の素材集め。

 それがなぜこんな大所帯で戻ってくることになったのか? そして、これからハルたちが何を報告するのか? それらについて困惑した表情のカナは質問している。


「あー、何から説明したらいいのか……」

「とりあえず、みなさんの注目を集めていますので静かな場所で話したほうがいいかと……」

 ハルはどこから報告するか悩んでいたが、ルナリアはそれ以上に周囲の視線を気にしていた。


「確かにそうね。よかったら、奥の部屋で話させてもらってもいいかしら?」

 にっこりと笑ったエリッサが提案すると、カナも周囲の状況を改めて確認してから頷く。


「それでは、こちらへどうぞ」

 そう言いながらカナは他の受付嬢たちにアイコンタクトを送る。

 私は話を聞いてくるから、騒がしい周囲と、外の冒険者の対応をお願い――という意味を持っており、全員がそれを理解して即座に行動を始めていた。






「――さて、それでは早速お話を聞かせてもらっていいですか?」

 部屋に入り、扉を閉め、全員が座ったのを確認すると早速カナが話を振る。


 三人は顔を見合わせて頷き、まずはエリッサから話をすることとなった。


「まず、私たちのパーティが幼体黒鉄竜と戦っていると何か大きな気配が近づいてきていることに気づきました。もしや成体の黒鉄竜が来たのかと思って、すぐにそちらに意識を向けるとそれ以上の巨体がいたんです」

「……それは?」

 そこが最も重要であるため、カナが身を乗り出して質問する。


「――ベヒーモス」

「ベヒーモス? ベヒーモス! ベヒーモス!?」

 三回同じ名称を口にしたカナだったが、それが持つ言葉はそれぞれ違った。


 一度目は単純に聞き返し、二度目は驚いて、三度目は困惑の声だった。

 幸い扉を閉めていたため、ホールまで聞こえていなかったが、普段から周囲の発言に注意深い受付嬢たちの耳にはうっすらではあったが届いていた。


「そう、ベヒーモスが表れて私たちに狙いを定めたと感じたので、とにもかくにも急いで逃げ出したんです。最初のうちはのっそりと動いていたから、逃げ切れると思っていたの……」

「と、ということは……?」

 その時のことを思い出すと恐怖がよみがえったのか、硬い表情になるエリッサ。

 ダメだったのか? でも、今目の前にいるのはなんで? 大丈夫だったのかな? など色々な考えがカナの頭の中をぐるぐる回っている。


「徐々に動きが早くなってきて、私たちもダメだと思いかけたところで――こっちの二人がいたの」

 そこでエリッサは言葉をとめて、笑顔でハルたちに説明をパスする。


「最初は大きな音が近づいてくるのとともに、逃げてくるエリッサたちを見た俺とルナリアは当然後ろから追ってくるベヒーモスに驚いたよ。そして彼女たちが俺たちの身を案じて逃げろと言ってくれたのもわかっていた」

 説明を引き継いだハルの言葉に聞き入り、ごくりとカナが息を飲む。


「だけど、一緒に逃げたとしても追いつかれるのは時間の問題だった。ルナリアの故郷を危険な目にあわせるわけにはいかないしな。なら、俺が選ぶ選択肢は一つ――止めるしかない」

 ハルの言葉にカナは大きく目を見開いている。


 自分の身体の倍以上はある凶悪な高ランクの魔物――ベヒーモスを相手にして、動きを止めようと思う。

 そんな考えのCランク冒険者がかつていただろうか? いや、いない!


「まあ、なんやかんやで止めることはできたんだけど、硬くて全然ダメージが通らない。そこで、俺とルナリア、足を止めたエリッサの三人で協力してなんとかダメージを与えることには成功したんだけど……まあ、たおせるはずもなく」

「ダメージを与えた!? いや、倒せないのは当たり前ですよ! それよりも、効果的な攻撃を当てたほうがすごいですよ!」

 ここまでくると、カナは興奮しているようだった。


「ま、まあ、それでなんとか動きを止めさせて、エリッサの仲間たちを追わせないようにはできたんだ。そして、エリッサの仲間には近くの冒険者の援護を集めるように頼んだ。そして、集まった冒険者の一人が強くて、その人のおかげでベヒーモスを倒すことができたんだ」

 どこか歯切れの悪いハルの言葉にカナは一瞬動きを止める。


 ざっくりとした説明の中で、ベヒーモスを倒したというありえない言葉が聞こえてきた気がしていた。


「あ、あの、ベヒーモスを倒した、とおっしゃいましたか……?」

「あぁ、俺たちがじゃなく通りがかりの誰かがだけどな」

 肩を竦めて通りがかりの誰かという部分を強調するハル。

 しかし、カナにとってはそんなことは既にどうでもよかった。


「ベ、ベヒーモスを倒した……ベヒーモスを……ま、まさか! ということは、もしかして外にいる人たちは!」

 なぜこの人数で冒険者ギルドにやってきたのか、それに思い当たったカナが焦ったように急いで立ち上がった。



*****************

名前:ハル

性別:男

レベル:3

ギフト:成長

スキル:炎鎧4、ブレス(炎)3、ブレス(氷)4、ブレス(毒)1、ブレス(闇)1、

     竜鱗4、鉄壁1、

     耐炎3、耐土3、耐風3、耐水3、耐氷3、耐雷2、耐毒4、

     氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、

     皮膚硬化、腕力強化4、筋力強化4、敏捷性強化2、自己再生

     火魔法3、爆発魔法3、水魔法2、回復魔法1、解呪、

     骨強化3、魔力吸収3、

     剣術4、斧術2、槍術1



加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


*****************

名前:ルナリア

性別:女

レベル:-

ギフト:オールエレメント

スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法3、雷魔法2、

     水魔法1、光魔法2、闇魔法1

加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


お読みいただきありがとうございます。

ブクマ・評価ポイントありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ