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寿司処旬亭 異世界営業譚  作者: ムラサキあがり
第一章;秋(オータム)
3/14

「青コートの試験」

ホント文章能力がたりない・・・

暖かい目でお読み下さいm(_ _)m

秋雨。

珍しく聖都に雨が降っている、雨の日は魔物(モンスター)も大人しく、人間への被害は少ない。収穫物への被害は否めないが・・・。


飲食店も同じく、雨は客足が鈍い。だが基本的には営業している。万が一という可能性があるからだ、寿司処旬亭も例外なく定休日の水曜日(ウンディーネ)以外は雨でも雪でも営業はする。ただし、客が来るかどうかは別問題。


不意に店の戸が開く。


「いらっしゃいませ!」


店主は入ってきた客に目を向ける、その客は昨日も来店した青コートの男だった。


ここで店主の紹介をしておこう。


店主の名前は『冴島(さえじま) (しゅう)

年齢は29歳、AB型、利き手は両利き

趣味は釣りと食べ歩き

かなりさっぱりとした性格、寿司への情熱はかなり熱い。自分の寿司を求めて日々精進中


「今日はどうされますか?」

「温燗一本。・・・」


青コートは何やら考えこんでいるようで口元に手を当てている。愁は返事をし、温燗用に徳利を温め始める。

しばらくの沈黙ののち青コートは意外な言葉を愁に発した。


「今日はお前にやってもらいたいことがある、軍艦を頼む。ネタはそうだな・・・、ウニ」

「ウニですね、この時期だとエゾバフンウニになりますが?」

「それで構わん、ただし・・・」


わざと言葉を詰まらせた青コートは驚愕の一言を愁に言い放った。それは普通の寿司屋ではかなり難しい注文だった。


「海苔は使うな」

「えっ!?」


愁はその注文に驚きを隠せなかった。普通軍艦というのはシャリの周りに海苔を巻き上のネタが溢れないようにする寿司では基本の作り方、他にも形が崩れやすいネタを海苔でカバーするという理由もあるのだが。


「ウニの握りではなく?」

「軍艦だ。」


さて、困った。軍艦に海苔は必需品。しかし青コートは軍艦に海苔を使うなと言っている。お客様のニーズ、つまり青コートの客が満足する方法でウニの軍艦を作らなくてはならない。愁は頭を悩ませる。

一方、青コートは無表情で店主の解答を待っていた。しっかりと仕込のされたネタが目の前のケースにズラッと並んではいるが目を閉じ出来上がった温燗を注ぐ。


「わかりました、少々お待ちください」


愁の中で答えがでたようで早速調理に取り掛かる。この軍艦に海苔は使えない、そういう条件を提示されている、愁はキュウリを手に取り桂剥きを始めた。そして整ったシャリに桂剥きにしたキュウリを巻きその上にウニを乗せた。


「お待たせしました、ウニ自体に味がついているのでそのままお召し上がり下さい」


驚いた。条件はかなり厳しいものを提示したつもりだったが僅かな時間で思考を巡らせ、提供した。海苔の代わりにキュウリの桂剥き、青コートはその寿司を口にする。

潮の香りが強いウニをキュウリの瑞々しさが軽く中和している。・・・絶妙。

海苔を使ったウニの軍艦は香りが強すぎるというイメージをこのキュウリの軍艦が払拭してくれた。それが青コートの感想だった。


「・・・よく気がついたな」

「ウニも海苔も元々潮の香りが強いですが、その軍艦が当たり前と思っているお客様の方が圧倒的に多いです。今回、海苔を使うなという条件だったので水分の多いキュウリを使うことでその香りを少し中和してみたんです」

「良い発想だな、では次だ」


次?

確かに一問とは言っていなかったが・・・


「『キサガヒ』を貰おうか」


キサガヒ、聞いたことがある人はいるだろうか?しかしこれは立派な寿司ネタの名前なのだ。ただ、この名前で注文する人はいない。

極僅かしか・・・


「これは先ほどより簡単だぞ」


青コートはニヤリとした感じで言い、温燗を注いで飲み干す。


「キサガヒ・・・キサガヒ・・・、はい!お待ちください」


愁は貝を手に取った。殻をむき、身をとりだしフチに切り込みを入れそれを

まな板に叩きつけた。

すると、縮んだり動いたりしながら身が開く。まるで華が咲いたように。


「お待たせしました、旬にはまだちょっと早いですが」


そう言い愁が青コートに出した寿司はアカガイ。


「・・・よく『キサガヒ』が『アカガイ』だとわかったな。こんな注文法、する奴などいないだろうに」

「神話での呼び方ですよね、アカガイが神格化された名前」


キサガヒとは日本神話に登場するアカガイが神格化された名前。正式名は『キサガヒヒメ』


「以前聞いたことがあったんです。たしか『ハマグリ』にも神格化された名前があったとか?」

「『ウムギ』のことだな」

「お客さんもよく知ってましたね?俺の世界の神話なのに」

「日本神話くらいは知っている」


そう言いながらアカガイを口にする青コート


「・・・ホン玉か?」

「はい。うちはバチ玉は使いません、ホン玉の方が味も風味もいいですから」


愁はそう言って青コートに笑顔を見せる。

青コートも心なしか嬉しそう、愁にはそう見えた。


「・・・お前、名前は?」


青コートは愁に名前を尋ねる、この店を常連にしようと決めた瞬間だった。ここなら俺が満足できる寿司がでてくるだろうと。


「寿司処旬亭 店主 冴島 愁と申します」

「シュウか、覚えた。これからはちょくちょく寄らせてもらう」

「はい!ありがとうございます!」


寿司処旬亭に初の常連が出来た瞬間だった。

外の雨はもうあがり、雲の切れ間からは3つの月のうち2つが見えていた。


青コートは帰り道、笑みを浮かべていた。こんなに満足した食事は久しぶりだった。聖都に来て以来、折しも満足といえる食事はできてはいない。

それをこの店は叶えてくれた、それが嬉しかったようで不思議と足元も浮わつく。


「・・・月が綺麗に見えるな、いい夜だ」





エゾバフンウニ(蝦夷馬糞海胆) 別名:ガゼ ガンゼ

オオバフンウニ科に属するウニの一種で一属一種

旬は秋から冬 精巣・卵巣ともに生殖腺が食用。


アカガイ(赤貝) フネガイ目フネガイ科

旬は12月〜3月

代用品として使われるのは

サトウガイ=バチ玉(場違いから)

アカガイ=ホン玉

名前の由来は呼吸色素がヘモグロビンと同様に鉄ポルフィンを補欠分子団とするエリトロクリオンの為、血液が赤い。

日本神話で神格化。

古事記ではキサガヒヒメ

出雲国風土記ではキサカヒメノミコト



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