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勇者様は魔法使いです!  作者:
出会い
9/10

8 名前

「さて、」

紅茶と茶菓子を机に並べ、男は切り出した。少女は緊張した面持ちで頷く。

「料理はできるか?」

「できないです…」

「掃除は?」

「お、お掃除は得意です!」

男は一度、部屋の中を見渡した。あちこちにある読み終わった本の塔は、今にも崩れそうになっている。

「ここで働いてもらおうか」

そう結論づけると、少女は驚いた表情を浮かべ、首を傾げた。

「いいんですか?僕のこと嫌いじゃないんですか?」

10日前なら、嫌いだと言い放ってしまえただろう。しかし、


『勇者は、自分の身を呈してでも。誇りを捨ててでも。何があってもみんな(・・・)を救うべきだ』


男は、少女の中にも勇者を見たような気がした。

だが、言葉にはしない。

「気が変わっただけだ。もちろん、期待にそぐわなければすぐに追い出す」

「え、ゆ、勇者様のために頑張ります!」

張り切る少女を眺めながら、具体的な内容を書き出していく。

仕事内容は、この家の清掃。住み込み。三食付き。給料(おこづかい)は日に10テルンもあれば十分だろう。

「勇者様、何を書いているんですか?」

紙を覗き込んでいた少女が、男に尋ねる。文字は読めないのか。

「契約書だ」

『文字の勉強をさせる』と一文を加え、下部に名前を書く。

「名前くらいは書けるか?」

そう尋ねた男は、ふと少女の名前を知らないことを思いだす。そういえば、名前を忘れたとさえ言っていたかもしれない。

「あ、あの、僕……」

「そうだったな。失念していた」

それでも名前がないのは不便に過ぎる。男は近くにあった本を手に取った。

まず、著者名を見る。『和沙』と、東飾文字で書かれていた。仮称とはいえ、男の名前はまずいだろう。

題名は、『メビウスの輪』。こんな本持っていただろうか、と男は一瞬疑問に思う。

「勇者様?」

不思議そうに、少女が声をかけてくる。

「お前の名前はメビウスだ。いいか?」

「はい!なんでもいいです!」


***


『勇者』の家を、少し離れたところからじっと眺める人間がいた。

茶色の髪に、同色の瞳。なんの特徴もない、平々凡々な顔立ち。

「天乃……」

ぽつりと言葉が漏れた。

「………」

人影は、踵を返して去っていった。

ヒロインに名前がつきました。

とりあえず一章は終わりです。

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