表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者様は魔法使いです!  作者:
プロローグ
1/10

いろいろな始まり

『今よりも少し昔、世界は魔者の侵略を許した。

それまでは絶対的な壁となっていた、雲に届かんばかりの山々も、魔王という存在の前では無意味だった。

人間には扱うことのできない数々の魔法。それらを使い、魔者たちは人間を滅ぼさんばかりに暴れ回った。

しかし、いつの時代にも英雄というものは存在する。

人々から勇者と呼ばれた彼は、普通の人間には決して使うことの出来ない魔法と、どんなものも切り裂くと言われた刀、そして3人の仲間たちと共に魔王に立ち向かった。

―――と、言われている。

勇者たちと魔王の戦いは、彼らしか知らない。しかし、結果は…あれから数十年しか経たないというのに、これほどまでに栄えたこの街を見れば一目瞭然だろう。』

―――『世界の歴史 近現代編』




***




彼は、ゆっくりと目を開いた。

血のような、あかい瞳。

人では有り得ない、人以外だとしても、違和感を抱かせるような。そこに映るのは、緑。繁雑な木々が、目の前に広がっている。

ぢ、ぢ、と美しいとは言い難い鳴き声を響かせながら、羽を持つ魔物が飛んでいく。

隠す気など微塵もない七色の羽根が、彼の目の前を過ぎていく。

彼は呟いた。『我は生きている』その言葉は、広がる。

空気を伝うことなく、時間さえも無視して、一瞬で彼に従う者の脳に。

『生きている。目覚めた』

ざわり、と空気を震わせる音がする。彼らは歓喜する。王の復活に。

歓喜は広がる。驚いた魔物が鳴き声をあげた。不思議な合唱。


それは唐突に止んだ。森には何の音もない。


しん、と冷える。


産声。

赤子独特の、熱を孕んだ声。己の命をまわりに知らしめんと、生きようと、大気を吸い込む。放つ。

彼はその熱い命を抱いた。一瞬、声が止み大きな瞳が見開かれる。

赤と、緑。彼の赤と、森の緑。

「イヴ」

赤子の名を、彼は呟いた。誰に伝えるでもなく。それは人の名である。

遥か神話の昔、山の向こうに立った原初の人の名である。

しばらくして、二色の瞳は閉じられた。




***




森の中を少女が走っていた。年の頃は10代後半だろうか。ところどころが黒く汚れているものの、可愛らしいデザインのワンピースを身にまとっている。しかし、荒れた森の中だというのに靴は履いていなかった。何度か石を踏んだのかもしれない。白い足には血が滲んでいる。

「っ!」

全力で走っていた少女が、木の根につまずいて転ぶ。それなりに出ていたスピードのせいで、汚れと傷がさらに増えた。

それでもまだ、起き上がり走る。逃げ出すため。

「……おかあ、さん…」

荒い息の合間に、掠れた声で呟かれた言葉。それは決して、少女以外の耳には届かない。




***




「 」

少年は、小さくその名を呟いた。片時も忘れたことのない、彼女の名前。

無意識に手の中の銃を握り締める。力の無い少年が、彼らに対抗できる唯一の武器。考えを巡らせていると、がさり、と木を分けて彼らのうちの一人が現れた。

あかい瞳が、少年を探してか周囲を見回す。

その姿を視認して、少年は引き金を引いた。

銃口から放たれた弾が、あかい瞳を消し去る。

「はちじゅう、に」

息とともに、そんな数字が口からこぼれた。

そばの木の幹に付けられた傷を、ナイフで一本増やす。

「まだまだ、足りないね…」

そんな言葉とともに、少年は少しの休息を求めて目を閉じた。

初めまして。

完結させられるよう頑張りたいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ