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ダンジョンは攻略する派、です  作者: 踊るかっぱ
8/11

8、抜け出す。補欠から-3


 精霊食って、最強になって


 えーっと……よく考えたら不味いことしたな……


 『保存液』掛ければ『精霊』は食えるって事になった。


 この世界の理論をブッ壊したんだ。


 そもそもの話、『精霊』を食うって言う発想が湧くかは別として


 『体質』とか『保存液をつくる技術』等、色々問題があるだろうけど、この方法は世に広まると不味いよね。


 兎にも角にも、直ぐ様王宮に帰って資料を隠滅する。図書室の本は別にいい、見られると不味い資料は全部俺の部屋の金庫にぶち込んである。


 主に俺のノートだよ。

 今日の計画があられもなく記されてる。

 字が汚いことを除けば翻訳修正で容易に看破される。


「とりあえず、おっかねぇからさっさと帰ろう」




 ◇ ◇ ◇




「あれー? 随分早かったねー、とは言いつつももう外真っ暗だけどねー!」


 倉橋さんは微笑みながら、森を出ると、こちらに気付き即座に振り向いた。取り敢えず、怪我はしてないようだ。ピンピンしてるし、疲労で疲れている様子もない。さすが、勇者スペック。


「お勤めご苦労さまです。女の子をこんな時間に一人にしてすいませんでした」

「いいってーいいってー。八雲くんよわいんだからー。んで? 成果の方はどうなのさっ? 八雲くんの予定してた時間より随分早かったみたいだけど」

「まぁ、ぼちぼちっすねー」


 倉橋さんがニヤニヤとこちらを覗き込むように視線でなめ回す。

 相変わらずエロいな、この人は。


「へぇー。ぼちぼちねー……。で、これからどうする? そのまま帰る? そ・れ・と・も――」

「さぁ、帰りましょう」


 むぅ〜っと言って口をハムスターのの様に膨らませわざとらしい仕草をする。


 名残惜しい森を後にした。

 道中に出くわしたゴブリンを盾でぶん殴って二百メートルくらい吹っ飛ばした、女の子にチートステータスを持つ有吾もドン引きした事もありつつ。


 一行は歩みを進めた。




 

 王宮が見えてきた頃に、突然倉橋さんが俺の背中を引っ張った。


「倉橋さん! 息できねぇっす。マジギブ」

「あれー。八雲くんもしかして忘れてない? 約束の事ー???」

「ふぇっ? カップラーメンは硬麺派ですよ」

「うわっ、下手くそすぎっるでしょ、その(とぼ)け方ー! ついでに私は時間オーバーの軟麺派ー!! まぁいいけどさーぷんぷん!」


 向き直り、倉橋さんと向かい合う。

 本当に腕組みをしてプンスカしている。


 コホンと咳払いをし、有吾は用意して置いた『切り札』切る。

 

「突然ですが倉橋さん。人差し指と人差し指を合わせるのは好きですか?」

「うんっ! 序でに私は、自転車の前籠に乗って空を飛んでみたい派ー!! って何で、八雲くんが、私の趣味映画鑑賞で好きな映画まで知ってんのさっ!?」


 倉橋さんは目を見開き丸くして俺の両肩をがっしりと掴み大きく揺する。本当に脳が揺れる感覚がするね、これ。ステータスの耐久高くなかったら豆腐ぶちまけてたかも。


 因みに倉橋さんが某映画の名シーンに憧れているのは浩介情報だ。歓ぶから、と云われる押し付けられたのだが。

 

 他の頼みもあるんだが、な。


 今なら俺が、倉橋さんにやってやれる。


 取り敢えず、重力魔法がどんなものかエロ番長様で試させてもらおうじゃないか。


「えっとまぁ、細かい事は気にしな言って方向で、で自転車も無いっすけど空高く飛ぶだけで、今回は勘弁してくれますか?」

「えぇーって言うのは冗談ー! 全然、いいよ!!! ていうか、ほんとに飛べるの?! 飛べるならほら、ね、はやく……しよ?」


 エロ番長の望みを叶えるべく俺は、「りょーかいしました」と業務返事した。


 魔法は『イメージ』だよね。今更だけど魔法使えんのかね、俺。めっちゃキザな台詞吐いたけど、魔法使えなかったら大赤っ恥だよ。

 自然と鼓動が早くなり、脈が加速していくのが分かる。


 何となーく漫画に出てきそうな重力使いのイメージを沸騰させつつ力を込める。

 

 すると俺と倉橋さんの足元に、直径で五メートルは在ろう水色の魔法陣が発生する。


 驚くエロ番長。しかしその反応は当然だろう。実力、経験とも異世界において遠く及ばない男が何時間か居なくなった後、魔法陣を使い自分を天高く舞ってやろうとしているのだから。


 周囲に集まった人の視線がイタイが取り敢えず無視する。

 こんな夕暮れを過ぎた時間帯にまじまじと向き合った男女が一体どんな魔法をかけているのか、事が終るまで終始、侮蔑と嫉妬の視線を感じた有吾。


 フワぁっと魔法陣が消失すると同時に両腕に違和感が取り憑く。恐らく、重力魔法のコントロール権限だろう。俺は、もう既に浮ける、と言うか二、三センチ地面から足が離れている。

 

 どうやら自分の重力制御は頭で出来るみたいだ。


 クイッと人差し指を突き上げるようにして倉橋の両脚と地面を乖離させる。


 二人の羽織ったマントが夜の空にフワフワと揺らめき、中二心を(くすぐ)る。野次馬も人が浮く魔法を見たことが無いのか物珍しそうに眺めていた。


「うわぁたぁ!! ほぉーひぇー!!」

「ちょ、倉橋さん興奮しすぎです。まだフィニッシュには程遠いですよ!?」

「ふぇっ?! も、もっと、しゅしゅごいの?!」


 まだ、地面から三メートル位しか離れていないが、やってみるとこれ結構、怖い。バンジーで空中で動かないまま、生殺しされている気分だ。バンジーやった事ないから知らんけど、床があると無いのでは恐怖の高低差が、いかんせん、大き過ぎる。


「怖かったら止めますから、遠慮しないで言ってくださいね?」

「だ、大丈夫大丈夫ー! 興奮しすぎて狂っちゃいそう、あぁ、良い。もっと来てッ!!!」


 一気に高低差をつくるとGの影響が有るかもしれないので、円を描くようにしてある程度のスピードを出し臨場感を出して誤魔化す。


 ここに来て調合師のスキルが役に立つとは有吾も思っても見なかった。

 重力魔法は指先ひとつの微妙なコントロールで加重、減重、進行方向が大きく変わってしまう。今は多分、自分を含めて二人を縦横無尽に動かすのが限界だろう。

 まぁ、最初なんだ。これから上手くなりゃいい。


「ふぅ、スカイツリーの高さは超えてないと思いますけど、そろそろ良い頃合いですかね」

「うん、うんー! 街がちっちゃーい! あぁ、私、幸せ……」


 俺らは向かい合う形で、晴れた夜空を堪能する様に眺めていた。


「俺らが今夜、一番星に近いですよ。きっと」

「うん! 絶対そうだねー!」


 俺は『頼まれ事』を果たす。あくまで事務的な作業だ。

 と、自分に言い聞かせる。


「……倉橋さん」

「んー? どったん? 真剣な顔しちゃってー? あらまぁ、告白かしらーえー照れちゃうなぁ!! もう!!」


 頬を両手で抑え体を一反木綿みたいにユラユラさせる倉橋さん。

 本人も俺も冗談なのは判っている。


「倉橋さんは何で俺がこんなこと出来るのか、って不思議にならないんですか? 可笑しいでしょ、だってほんのちょっと前まで女の子にボデーガードされてた奴ですよ?」

「そりゃ不思議だよー。でも聞かないで欲しいんでしょ? 八雲くん、そういう顔してるもーん」

「え? マジっすか」


 俺そんな顔してたんだ……。

 てっきり隠せているものかと思ってた。


「マジよー。だから安心して、皆には何も言わないから! あとその喋り方ー! 八雲くん。私の事、一個上の先輩として相手してるでしょー!!」


 俺に頼みを押し付けた本人は佐野 浩介で、浩介からの頼まれ事は『留年した倉橋さんのケア』だった。

 彼女は家庭の事情で海外に一年近く留学していて、俺らよりもひとつ歳上。有吾も、つい、敬語を使ってしまう。


「その……すいません」

「いいのーいいのー。ていうか佐野くんでしょ? 八雲くんに私のメンテナンスを頼んだの」


 アッサリと見抜かれていた。

 だから俺は無理矢理、隠そうとはしなかった。


「……はい」

「やっぱりかー。あの子も中々やりおるなぁー。はははー! 一本取られたぜっー!」


 浩介が気にしていたのは、バルナバ王子が倉橋さんに求婚してきた事と、後輩しかいない空間で、未知の世界に苛まれているかもしれないという事だった。

 

 浩介も【勇者組】で鍛錬を共にする倉橋さんの事を、相当気にかけていたようだし。


 何故、今回の件を俺に一任したかは知らんが。


「じゃあさぁ、八雲くんにもうひとつ甘えていいかなぁ?」

「はい、出来る範囲でなら、倉橋さんのご期待に添いますよ。と言うよりまだ倉橋さんの頼み事はまだ聞いてませんもん。これは俺の独断専行ですから」

「ふふー!! そう言われれば、そうだったね!」


 にっこりと万遍の笑みを浮かべた少女の肌に星明かりが差し込み、より一層艷やかやに見える。


 ――、綺麗だ。


 ただ、単純に綺麗だった。

 月明かりに照らされた茶髪、整いすぎた容姿、こうして真正面から見てみると、ただのエロ番長なんてもんじゃない。

 喜怒哀楽、奇想天外、天真爛漫な少女の放つ妖艶な雰囲気は最もなものだった。


 倉橋さんの濡れた唇が動き出した。


「その、ね。明日の夜やるパーティー。その時だけでいいから、私と一緒にいて欲しいんだけどだめ、かな?」

「……俺は別に構いませんけど、そんな事でいいんですか?」


 急に倉橋さんがなにか言い伝えるのを忘れたかの様に戸惑った。


 何か、嫌な予感がしてきた。


「あーうん、えーっとー。そのパーティーで私、バルナバ王子に告白されるかもしれないからー。ヨロシクね? ダーリン役の八雲くん!!」

「…………………………………………え?」

「簡単に言ってしまえばー! 八雲くんにー、明日のパーティーで王子の求婚相手の私! 倉橋 レナを奪って欲しいのさっ!! 勿論、演技で構わないから、あっ、本気になってもいいんだよ? そして一回契約したら最後っ! 破棄はしませーん!!」

「えぇぇぇぇええ! マジすか、オフッ」


 いやいやいや、待て。何でこう、うまく進んでいる? いきなり俺が断われない状況に陥って


 展開がまるで仕組まれてるみたいに……


 と、その時、有吾の脳内にある男の像が浮かんだ。

 

「? ……まさか、浩介と倉橋さんは組んでいたのか?」

「(ニコ!!)」


 下をちょろっと出し、小首を傾げ、全部演技でしたと言わんばかりの顔をする倉橋さん。


 嵌められた、糞っ!!


 やりやがったな…………………


 浩介の野郎


 オッケー、あいつ、許すまじ。

☆登場人物紹介


 (たちばな) みすず


 プロフィール

 年齢:18歳

 性別:女

 星座:くじゃく座

 好きなもの:自己鍛錬、家族、料理、八雲有吾


 本編では【後衛組】で『蘇生師』。


 陸上部で黒髪ショートボブで副委員長という、テンプレートの権化と思われがちだが、真面目な性格に一途な面々が在り周囲から好感度めちゃ高のテンプレートのかたまりだったりする。オリジナルを好む作者も、やはりテンプレートには負ける。マジテンプレ最高『M・T・S』。勤勉で頭のいいキャラなのだが、少し、悩み性な所が有り、勝手に自暴自棄に陥りやすい。



 〜クラスの会話〜


 副委員長✖作者


作者  「どうもこんにちは」

副委員長「どうもこんにちわ」

作者  「えーっと、どうですか、異世界生活は?」

副委員長「ひとつ嫌なことが。いや、別に生活自体に不満があるわけではないんです。魔法って意外と便利ですし。あの、ナンパする人、多過ぎませんか? 私、外歩くたびに中口説かれるとか嫌なんですけど……」

作者  「えーっと、善処します。ギルドの人や軍人は魔物ばっかり見ていて目の保養が間に合っていないのでしょう」

副委員長「じゃあ私、魔物になります」

作者  「……そう来るとは。」



・浩介にすると、連続になる。

・相手が有吾だと素の副委員長が見れなくなる。

・倉橋さんになると、きっとエキスパートする。

・チャラ男は出す気ない。


 以上を加味し、作者が代打しました。

 (……ちょっと当番してみたかった)

 クラスの会話なのに。以後、自重します。イェッサー。


 次回は、三島か倉橋さんにしようかと思います。同時パターンもあるかもです。


 次回話から、フラレる王様、三島ちゃんをどうにかしていきたい。


 では!また!

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