表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンは攻略する派、です  作者: 踊るかっぱ
7/11

7、抜け出す。補欠から-2

 三島事件より三日後……

 


「何か……きもい」


 開口一番失礼極まりないことを言うのは親友、佐野 浩介である。


「しょうがねぇだろ。調合師ってのは無条件に手先器用になっちまうんだよ」

「ホント、何テクだよな……スキル使ってもできる気がしないわ……」


 有吾の作業速度は、瞬発的な速さではない。ステータス的に速さでこなすのではなく、無駄を省いた正確な動き、が調合師の専売特許なのだ。


 今の有吾ならシャーペン五本を片手で同時にペン回し出来る。

 繊細というか、思った通りに指先まで意のままに動くのだ。


 傍から見れば、やはりキモい。

 わきわき、うねうねしてるんだもん。

 

「有吾ちゃん! ほらほらサボらないッ。午後お出掛けするんでしょ? 午前中で回復薬(ポーション)百瓶ノルマだからねぇ〜」

「はは、マジすか。手厳しいっス。まぁ何とか間に合うと思います、ミンさんを追い抜くつもりで……」

「あらぁ言うようになったわねぇ〜」


 ミンさんは俺の教育担当だった人だ。

 おばさんと言うと怒るのはテンプレだろうから、ミンさんと呼んでいる。


 現在、作業場には俺と浩介を除いたらおばさんしかいない。

 みんな凄い勢いで喋ってるけど相変わらず化け物見たいな速度で手を動かす。


「ミンさんや、有吾ちゃん午前中上がりなのかい?」

「そうそう。なんて言ったって今日は有吾ちゃん【勇者の人】と、おデートするらしいわぁ〜」

「くぅぅうう、作業場の唯一のオアシスをぉお。有吾ちゃん誰だいお相手は?!」

「盛かねぇ……」


 誰か、容赦ねぇ。


 つか、どこから情報漏れした。 


 こっちとしてもデートって言われたら否めないんだが。周りから見たらそういう風に捉えられてしまうのだろうか。

 取り敢えず社交的にこういう場では答えないとイケない暗黙の闇ルールがあるので、興味なさなげを(よそお)い言った。


「【勇者組】の倉橋っていう盾女です。護衛にぴったりだからってグランさんに言われたんで、お願いしました」


 俺がそう言うと、作業場が騒がしくなった。


「え?! 【勇者組】の倉橋さんってバルナバ第一王子に求婚されてたあの娘?!」

「茶色い髪の女の子でしょ!? わぁ有吾ちゃん自ら、修羅場に行ってしまうのね……」

「バルナバ王子も、良い男よねぇ〜。で~もやっぱり有吾ちゃんには劣ってしまうわね〜」 

「発情期かねぇ……」


 発情期って、俺は種馬ですか。


「うむ。これは、予想以上の発火力だな」

「浩介ッオメェが犯人かッ!!」

「ほらほら、有吾ちゃん。手止まっちゃうと倉橋とデート出来ないよ〜?!」

「あぁ?? 別に、したかねぇよッ!!」

「ツンデレヒーローとか(笑)」

「オーケー。浩介、お前にヤンデレのデレ抜きバージョン体験させてやる」

「いやいや、それ、ネタ無しの寿司と変わんねぇじゃんかよッ」

「お前に丁度いいじゃねぇか」 


 


 ◇ ◇ ◇




 もう疲れた。

 体力が唯一の取り柄なのに息が切れそう。


 ノルマと浩介を排除するのにやたら時間が掛ったよ。


 ふぅすっきり。


「あのぉー、八雲くーん? おーい。顔色すごい悪いよー。お出掛けやめとこっか?」


 中腰で折り曲げ、膝に手をつき靴を履く有吾を覗き込むのは学年で最もスタイルのいいと云われる、倉橋 レナ。


 セミロングの栗色の髪を垂らし、強調された胸元は、はちきれんばかりのプロポーションを魅せ、有吾を十二分に魅了した。


 そして、左手に持った銀色の盾が恐らく彼女の万具(オールツリー)だろう。


「あー、うん。平気だよ。全然ほらもう元気元気。って事で倉橋さん、今日は、どうか宜しくお願いします」

「元気ならいいけど。まぁ任されたっってことで、いっか。うん、うぃーっす」

「うぅ。何か、情けない……

 女の子に守ってもらうとか、お母さんごめんなさい」

「あれ? わたし悪者なのん?」

「どっちかって言うとサキュバス?」

「???」


 この人は動作の1つ1つがエロいな。

 ボン、キュ、ボンで、仕草が男子高校生の劣情を掻き立てる。


 バルナバ王子が婚約を申し立てたのも頷ける。


 まぁ、エロけりゃ良いってもんじゃないけどね。

 

 心が篭ってない愛なんて女の人にアッサリと見抜かれる。

 byミンさんと職場の人々より


「そうそう、八雲くん。ステータスカードを見せッコしよーよー」


 王宮から出る門に向かう途中、前ぶりなく倉橋が口を開いた。


「何も面白いもんなんか無いっすよ、泣きますよ、笑っちゃうくらいに」

「まぁいいじゃーん。いいじゃーん」


 強引に奪われた。

 マジパネェ、倉橋さん。色々と。


 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前 倉橋 レナ  女 18歳

種族 人間

戯職 盾の勇者

Lv 19      GUILDPOINT 1003

        RANK C


体力 2050

耐久 3550[+9900]

気力 1200

俊敏 1150

魔力 1150[+2500]

抗魔 1050[+2500]


国宝万具(ニックオールツリー)【イージスの盾】を装備時のプラス値。


【スキル】

 :防御強化LvMax

 :遠隔防壁Lv82

 :魔力回復LvMax

 :翻訳修正Lv8

 :身体強化

 :耐性強化


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 今更コメントする気も沸かないので、彼女のステータスについては華麗にスルーする。


「……八雲くん、凄いねー。大丈夫! グランさんにしっかり守れって言われてるから安心していいよー。盾女、倉橋! 頑張るぜー!」

「親切な倉橋さんが滲みるわ、マジ頼まれて下さい」



 倉橋さんは笑顔の絶えない、太陽みたいな娘だった。無邪気でエロ目線で見ていたちょっと前の俺は、今、罪悪感に苛まれている。


 何やかんやで、王宮を出て、歩いて小一時間で有吾の目指す目的地に近くなった。


 今日俺が出掛けるのは、図書室で調べた成果を発揮する為である。


 これで駄目なら俺は永遠、裏方薬草コネコネの弱いままだろうね。

 こう見えても相当腹括ってます。


「ん、じゃあこの辺でいっか。倉橋さんは周りを警戒して欲しいんだけど。あと出来ればなるたけ見ない方がいいよ」

「? りょーかい? 魔物を八雲くんに近づけさせなくてー、見なければいいのね? 作業にはどんくらい掛かりそうー?」

「多分、半日くらい……ごめん」

「うへぇー、マジかー。別に良いけどそれならどこか泊まった方がいいんじゃなかったー? ねぇ?」


 わざと悪戯ぶった様にこちらを見る倉橋。

 俺が女の子免疫ないからからかってるよね。俺、童貞だけど彼女は居たよ。ギリで。義理じゃないよ。まじだ。、と目で無言の訴えをする。


 現在、有吾と倉橋が居る所は、街から少し外れた森。薄気味悪い様な物騒な所ではない。

 木々の間隔は適度に開いており、地面には日光が差し込む、モンスターの殆どいない初心者コース。


「倉橋さんがちゃんと仕事してくれたら、御礼に何でも言うこと1つ、聞きますよ」

「えぇっ!? いいの!? どっちかって言うと、私が言うべきセリフな気がするんだけどー、甘えてもいいの?」

「はい、どうぞ」

「よし! じゃあ、八雲くんが作業やってる間に考えまーす。魔物を通さない程度に悩んでまーす。ほら、行ってきなさいなっ!」

「じゃあ、よろしくお願いしました」


 手を振る彼女の姿が小さくなっていって俺は、時間を気にして歩を進めた。

 

 彼女は無理に漬け込んでこなかった。

 半日、森で籠もる奴を守るのに理由を尋ねない。


 きっと彼女なりの配慮なのだろう、そう考えると、有吾の歩みはより一層強く、しっかりと地面の感触をとらえた。

 


 暫くしてあるモノを目にした瞬間有吾は脚を止めた。


 空中に輝く、一玉の光り。


 図で見た通り『精霊』だね。


 バッグポーチからメッシュタオルを取り出し、瓶を1つ取り出し、キュぽんと空気の抜ける音が響く。

 メッシュタオルが湿る程度に『保存液』をポタポタと垂らす。


 大丈夫。大丈夫。


 出発前にハゲに祈って来たから平気平気。


 そっと『精霊』に近寄り、包み込む様に―――、


 光がタオルに落ちた。


 二秒、三秒、―――。


 光は消えない。


「はは……」


 感動のあまり乾いた声が漏れた。


「やっぱり、生きてんじゃねぇかよ……精霊ってのは」


 余韻にひたる暇は無い。この精霊もまだ死んでいないだけで、長く生きているかは分からない。


 勿論、この後どうするかって?


 喰います、


 喰います、


 喰います、


 レッツ、イーディング。


 異世界来て精霊食ったやつとか居んのかな……きっと居るよ、うん、俺は一人じゃない。


 調べが正しければ精霊の近くにいた動物が魔物になった記録がある。


 失敗すりゃそれは――、


 まぁ、悪い事は考えない事にするか。


 とか、そんな超男気は有吾にある訳がない。


 勿論、魔物にならない根拠が在るからこそ実行するのだ。



 思い出した、異世界に召喚された初日。

 あの場で召喚された11名は俺を覗いて昏倒していた。

 俺は酔った感覚すら覚えていない。

 何かの間違いかと思ったが違ったようだ。



 精霊の本ではないもう一冊の本に記されていた事実により、繋がった真実。



『ステータスとは【無関係】で【天性】に魔法の反動が軽減する体質が発現する事が、ごく稀に確認されている』


「さぁて、前人未到。世紀末救世主伝説になってやるぜ……」


 

 パクッ―――――――。




 ◇ ◇ ◇



 それから、多分、四時間ほど経過した。


「異世界でオークが美味しいって鉄板かもしれないけど、精霊が旨いってどういう事よ」


 もうかれこれ、五百匹くらい喰った。

 豚骨ラーメン味、サンマの塩焼き味、馬刺しの味、ボルシチの味、味噌汁の味、時には杏仁豆腐の味、アイスクリームの味。


 あれ、グルメ漫画だっけ、世界観。


 と、錯覚してもしょうがない。


 だって精霊うまいんだもん。

 多分、喰ったことあるの俺だけしかいないから語り合える友達いないけどね。


 後は、『減圧剤』を呑んで吸収を良くし、ステータスを上げることに尽くした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前 八雲 有吾   男 17歳

種族 人間

戯職 調合師

Lv 49       GUILDPOINT 20

          RANK F

 

体力 134250

耐久 95460

気力 49820

俊敏 28540

魔力 58460

抗魔 69840


【スキル】

 :調合速度LvMax

 :調合精度LvMax

 :翻訳修正LvMax

 :重力魔法Lv97

 :火炎魔法Lv79

 :回復魔法Lv63

 :探知詮索

 :全毒耐性

 :成長補正


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 やり過ぎた、これは不味い。


 調子乗りすぎて喰いすぎた…………。


 博打で金稼ぎすぎて若干後悔するアレだ。実体験ないけど、良い方向にやり過ぎた奴だ。喪失感が半端ない。

 まぁでもコレやばいね。


 早めに自重するように倉橋さんが待つ所へと戻った。

 登場人物紹介無しです。

 次回は副委員長やる予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ