5、まさかの……発見
俺ら、クラス十一名が異世界に召喚されて1週間の時が流れた。
【勇者組】と【英雄組】、【後衛組】の奴等はぐんぐん実力を伸ばしステータスでは、三日足らずで有吾は遠く及ばなくなってしまった。
正直な話、現実問題として彼らに追いつくのは無理だと判断し、自分に出来る事をするべきだと、いい加減、有吾自身でけじめをつけなればならなかった。
話すのも面倒なので、一週間のステータスの伸びを示せば、ひと目その差がはっきりするだろう。
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名前 佐野 浩介 男 17歳
種族 人間
戯職 弓の勇者
Lv 23 GUILDPOINT 1020
RANK C
体力 1250[+9500]
耐久 1250[+9500]
気力 1500[+9500]
俊敏 1250
魔力 1250[+9500]
抗魔 1250
※国宝万具【重弓華鳳】を装備時のプラス値。
【スキル】
:通常速射LvMax
:魔力回復LvMax
:翻訳修正Lv3
:身体強化
:全属性補正
:火矢威力(大)
:望遠眼
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チートも程々にしておけよ、と言いたい所だが、浩介も【勇者組】では飛び抜けた実力を持っている訳ではない。
【勇者組】の他の三人も似たような化け物じみたチートステータスになっている。王宮の敷地である訓練場を見に行ったが、もう【勇者組】は四人での戦いは、達人乱舞の如く、連携が取れており、付け入るスキが全く無かった。
槍の勇者であるクラスのムードメーカー柊木と、馬鹿で単調が唯一の売り、柴原の接近型武器で前にで、学年で最もぐらますなボディーを持つ茶髪セミロングの倉橋が盾で防御を担当。
王宮の屋根の上、高さ百メートルはある灯台の上から、肉眼では捉えられないような場所から援護射撃する、弓の勇者。佐野 浩介。望遠眼で、浩介は一キロ先の標的をも射抜けるらしい。
どう解説しようと、俺を抜いた全員はただのチートだった。
そんな化け物勇者達の鍛錬に付き合っているのはギルドマスターのグラン・デュオラ。
彼らとは、グランのステータスよりも二桁近く離れているのに四人同時に、同格に渡り合うグランの実践経験は相当なものだろう。
グランが、四人の攻撃を流しながら、カウンターをいれ、防御のフォーメーションも抜かりなく鍛錬しているようだった。
ただ、グランは額に玉の汗を浮かべ表情も顰めて、余裕は無さそうだった。
因みに。どうでもいいが、八雲 有吾の1週間みっちり鍛錬を積んだ(実際は薬草をすり鉢で延々と薬草をコネ回しただけだが、一応)。
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名前 八雲 有吾 男 17歳
種族 人間
戯職 調合師
Lv 4 GUILDPOINT 20
RANK F
体力 200
耐久 30
気力 30
俊敏 30
魔力 30
抗魔 30
【スキル】
:調合速度LvMax
:調合精度LvMax
:翻訳修正LvMax
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翻訳修正がMaxになっているのは、回復薬を作る為に作業場のパートさんと世間話しまくってるからである。他の調合系スキルも同じくすぐにスキルレベルはMaxまで登りて詰めた。
とにかく、パートのおばちゃんの会話量が尋常じゃない。もうそれは、文字が流れるように、もう、頭で処理しきれない次元で飛んでくる。
まぁ今では半分以上は受け答えできるのだが、それでも喋っているパートさんは俺の倍速で作業をこなすのだ。
世間話は別腹なのだろうか、有吾は必死に悩んでいた。
なら自室でやればいいじゃないか、とも思うかもしれないが、薬草の青臭さが残ったままだと夜の睡眠に支障をきたすし、一人では至極つまらない作業なので、誰でもいいから会話を作ってくれるだけでもありがたいのである。
ギルドポイントが20になっているのは、一日五十本、一週間で……まぁ何本でもいいや、それくらい大量に作りまくった回復薬を軍に納品した御礼であり忘れる事のない初ポイント。
有吾にグランが後世に刷り込まれ残るレベルの憐れみの表情をしたのだ。この20ポイントは絶対に反してやる。
ギルドポイントはそのポイント数でランク分けされ優劣が決まる。
有吾には全く無縁そうに見えるが、他者はそう思わないため、一覧表をこっそりメイドさんから土下座して貰ってきた。
と、言う訳で三分で分かるランク表を発表だぜッ。部屋には俺しか居ないけどなッ。
[〜RANK解説〜]
SSS 別称:トリプルクラス
【解説】五万ポイント以上。
ここに位置付けられる人はマジで、勇者や英雄の末期。強過ぎて教会に敵視されるので、通常は何処かの国に雲隠れしているらしい。
SS 別称:ダブルクラス
【解説】一万ポイント以上。
トリプルクラスと同じくここのクラスはまともな身体の作りをしていないのが大半。
S 別称:シングルクラス
【解説】七千ポイント以上。
帝国軍の一般兵、百人分に相当する戦力と言われる。ギルド支部に1人ほど派遣されている。
A 別称:マスタレベル
【解説】六千五百ポイント以上。
強い。上に三つランクが在り、掠れるように見えるが、通常、S以上の奴らは滅多にいないので、ここが一般的な最高ラインと言われている。
B 別称:プロフェッショナルレベル
【解説】三千ポイント以上。
主力になり実力、経験とも中々。無茶なダンジョン攻略で無ければ、Bの奴等がいれば安心。
C 別称:ノーマルレベル
【解説】千ポイント以上。
出掛けるときは気を付けろ。まだ君達には未来がある。
E 別称:見習い
【解説】五百ポイント以上。
死んでも責任は取らんし覚える気もない。とりあえず、鍛えたほうがいい。
F 別称:ギルド入って一ヶ月ここに居たら違う仕事した方がいいよ、の視線を送られる特等席。
【解説】五百ポイント未満。
しかもこのポイントは貯めるほど貯まらなくなる。故に同じモンスターを倒しても以前と同じポイントは入らない、と言う事になる。
つまり俺は、どの道「つまらねぇからここを出ていくぜッ」とか迂闊に口にすると路頭に迷って犬の餌になりかねないのだ。
と、一週間の整理がつくと、深い溜息を部屋に撒き散らすように穿き、ベッドに雪崩込む。
天井を仰ぎ、「何やってんだろ、俺」と言いたくなるのを堪えまた、深い溜息を吐いた。
結局、裏方止まりだったのか……
「…………?」
「おい、三島未知。その存在感消して近づくのやめろ。心臓びっくりして飛び出したらどうする」
「……あぅ。戻し……す」
相変わらず挙動不審で、視線が定まらない三島。
一週間ともに過ごしたが、こいつの隠密性と影の薄さのコラボの威力は凄まじいものだった。
半径一メートル以内にいたとしても目が合わないと分からない、というレベル。
固有魔法か何か知らんが、本当に心臓に悪い。
現在はベッド大の字になって、脱力している有吾の側に突っ立っている。
カラッと澄まし顔をして過ごしていた奴が疲労の顔を浮かべていていたのだ、少し気になったのだろう。
有吾もここ一週間、無理して取り繕っていたのを自覚していた。
無力で、無力の中でも劣等な存在で、自分はそれに不満に思っている。
傲慢かな? 少しくらい夢を見たっていいじゃないか、と思ったが、幾ら考えても、有吾の辿り着く結論は「今のままじゃ足手まといにすらならない」という無慈悲な事実だけだった。
「三島。先に風呂入っていぞ。一応沸かしておいた」
「あ……あありがとう……」
トトトーっと駆け足でお風呂セットを持ちバスルームへ向かった三島。
あいつもあいつでなかなか苦労しているようだ。河原と言う奴が腹いせでイジメを辞めていないらしい。
まぁ、俺が副委員長にご報告しておいてやったから今は沈静化しているみたいだが。
有吾は善意と利益を考えた行動だったと心に刻んでいる。
ルームメイトに一々暗い顔されても、今の俺ではとても手を貸せない。
なるべくなら快適な空間で時を過ごしたいものだ。誰も、そう考えるだろう
先ほど三島を助けた、有吾の行為は善意が無いと言えば嘘になり、恩を着せるためといえば、否とは言えない。
ふと、有吾はベッドから起き上がり冷蔵庫に歩み寄る。喉がいつの間にか、潤いを求めていた。
ランタンが薄暗く輝く部屋を進むと、ベッドと冷蔵庫の中腹付近で有吾は白い光を目にし、歩みを止める。
ステータスカードか?
光ってるって事は、つけっぱなしになってるな。
俺のは定位置の枕下にあるから……これは三島のか……
ったく、だらしねぇな。
有吾は頭をポリポリかきながら面倒くさそうに腰を曲げ、光の方へ手を伸ばした。
拾ったついでに見ちまっただけだ。
それくらい、バチは当たんねーよな。
ステータスカードを持った右手を返し、表示された文字を見て有吾の思考と身体が、幾分、膠着した。
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名前 三島 未知 女 18歳
種族 人間
戯職 魔術師
Lv 19 GUILDPOINT 508
RANK E
体力 100
耐久 90
気力 170
俊敏 180
魔力 1700
抗魔 1690
【スキル】
:隠密同心LvMax
:風陣加護Lv5
:風属強化Lv4
:翻訳修正Lv2
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ステータスカードを裏返したりペシンペシン叩くが、どうやらこのカードは壊れていない。
…………ん?………………………………………………………………おい…………………………は?…は?……え?…………………………………女?!?!!
☆登場人物紹介
佐野 浩介
プロフィール
年齢:17歳
性別:男
星座:こめつぶ座
好きなもの:ケモノっ子。夏の合同体育。早良 凛。
安全圏に入るとエロが爆発するが、異世界に来てからは、有吾の情緒不安定やドタバタで、オヤジ心が心の底のどこかに引っ込んだ。一時期、親密過ぎる有吾との関係性を疑われた時期があったが、昨夏、早良に告白され無実になった。非常に出しどころの良いキャラで、無駄な正義感もなく、かと言って過剰な復讐心もない、平遥ながら主人公ボジション剥奪を狙えそうな凄いやつ。
見た目は爽やかで、穏やか、友達や大切な者の為なら全力疾走する、熱い一面もその内、本編で……だせたらいいな。
〜クラスの会話〜
浩介✖凛
凛「ちょっと、浩介、どう言う事かなァ? ん?」
浩介「いや、りんりん。怒りの方向が俺なんすか? つかなんで怒ってる〜?」
凛「だ、だってっッ!! 私の姿を曝け出す前に本編で、ちょっとくらい出番あったっていいでしょッ?? それなのにぃぃ、(ぽこぽこぽこ)」
浩介「まぁ、そういう所が好きなんだけどねぇ~、(なでなで)」
凛「う、うっさいッ! 私が出るときは地の文で主人公を、倒して、私視点からスタートねッ!!」
浩介「よし、有吾。逃げろ!!」
二人はとんでもないラブラブカップルです。凛はぶりっ子とか駄々っ子ではなく、浩介と二人になるとこうなる感じにしようかなーっと思います。
名は体を表す、と言うように、凛とした態度で平然としている娘の筈です。
凛の浩介に惚れたシーン、回想、書けたらなぁ……。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
では、また次回話で。