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ダンジョンは攻略する派、です  作者: 踊るかっぱ
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1、プロローグ

 俺は、八雲(やくも) 有吾(ゆうご)、今年の8月で18歳、教室の番長席に位置しているが、然程クラス内における影響力は無い。勿論、ぼっちでもない、地味面でも無い、ド普通の高校生。


 目の前にいるのは、佐野(さの) 浩介(こうすけ)、昼休みを迎えていつもやって来て、昼食を共にする。別段、意表を突くような怪しい関係ではない、ただ、幼稚園から続く腐れ縁なだけだ。


「なぁー有吾」

 

 力なく浩介が言った。


「ん? また与太話か、なら止めてくれよ」

「良いじゃねぇかッ、シモな話をしなくてお前は高校生名乗れんのか?」


 俺は齧ったパンを咀嚼し終えるまで、いつも通り、浩介を無視した。


「で? その様子だと、俺が勧めたウェブ小説にハマったな?」

「あぁ、特にケモノっ子マジやべぇ。何であんなに漢を欲情させる設定があるのか、俺は未だに不思議でならない」


 ラノベに成通している男子高校生の日常的な会話などこの辺が限界値だろう。下ネタ、時々、勉強だるい、で1日の会話が終わる。これはもう自然の摂理だと思う。そう有吾は自己完結した。


「ケモノっ子にメイド服なんてのはどうだ?」


 俺はそう言って、片手で操作していたグーグル先生の画像ページを見せつける。因みに有吾の学校は休み時間は携帯電話オッケーの学校だ。


 しかし、浩介は、


「チッチッチッチ、甘いな有吾」

「ナニ?!」


 浩介の携帯の待ち受け画面に映し出されたのは、全身に白い毛を纏いつつ、ヘソや二の腕は肌を露出させ、一糸まとわぬケモノっ子の画像がそこにはあった。


 しかし、妙に掛けた部分がある。想像で描いたような、まるで自分の欲求をさらけ出したかのような。


「ペンタブで描いたのか、それ?」

「よく判ったな……」

「まぁな、つか、ホント良く出来てるな、徹夜か?」

「あぁ、すげぇだろ」

「あぁ、すげぇよ」


 ほんとこいつなんでも出来るよな、と心の中で嘆息し、再びパンにかじりつく。無味のパン生地が妙に舌を刺激する。昔から浩介は広い分野で、ある程度応用が効く、ハイスペックな野郎だった。目上の人に対してコミュニケーション能力もあるし俺の親も浩介を褒めていた。まぁ、羨ましい奴な事。

 

「……の割に喧嘩したことねぇよな」

「なんかイったか?」

「……字が違う」


 俺らの会話が一旦終わりそうになった時、教室の扉が静かに開く。それと同時に空気を破壊するチャラ男の声が教室を駆け抜ける。


「おい、三島くーん、おっそーい」

「ちゃんとメロンパン買ってきたよね? 前みたいに先客に取られたら赦さないよー?」

「あ、今日、サイフ家においてきちゃったー、ツケで良いかな?」


 上から柊木(ひいらぎ) 春樹(はるき)。短髪のつんつんヘッドに制服は着崩す野球部の主将。顔立ちは整ったイケメン。とにかくぴーぴーうるさい。

 次は、柴原(しはら) 星矢(せいや)。ボクシング部のエースで筋骨隆々のムッキの権化。長い髪をポニーテールにて後ろで縛っている。イケメンだから妙にマッチする。

 最後に、河原(かわはら) 優木(ゆうき)。三人の中では最も知的で、美形。いや、学年の中でもかなりの優良物件らしい。部活もサッカー部で、一年から試合に出てるらしい。


 そして、三島(みしま) 未知(みち)。三人から執拗に纏わり付かれるぼっち。名前から、良く女に間違えられるが、容姿も童顔で身長も百五十センチあるかないか、可哀想な事に新学期早々パシリになった。いつも、おどおどもじもじしていて、見ている分には不快では無いが、直接話すとなると、伝えたい事が伝わらなくて、俺としては少し関わり辛い。


「……あれ可哀想だよな、幾ら何でも」


 浩介が耳打ちする様にそう言った。


「じゃあお前が助けてやれよ、あの運動部イケメン3強相手に……」


 あいつ等3人は(たち)が悪い事に、全員容姿端麗。3年の運動部スリートップと呼ばれている。あの3人を敵に回すと、校内の女子の大半を敵に回す結果になりかねないので、誰も何も言えない。


「でもよ、異世界転生したらああいうぼっちポジションは絶対無敵になれるんだぜ? 有吾変わってやれよ、チーレムだぞ」


 1日でこいつも良く染まったな、と嘆く有吾。

 しかし、浩介の言うことも半ば間違いでもない。

 

「本当に異世界転生したら、な。でもよ俺らはどうなるんだよ、モブか?」

「じゃねぇーの? いや、モブ以下かもな。俺ら男だし、かませ犬役でもねーから、描写無しで終わるかも」

「うわ、あれか? ステータスも中くらいでコメントし辛い奴か?」

「あぁ、そんでもって、なんの魔法使えるかも、作者考えるの面倒で、ステータスが出内可能性もある」


 机に乗り出し、人差し指をビシッと立てる浩介。

 頭を抱え、うぉぉおお、と心の中で叫んでみる。

 

 そうしてから、間もなく、教室から音が消えた。異様に静かだ、物音一つしない。有吾は不意に顔を上げると、の○太くんの机の中に入り込んだ様な、幾何学模様が浮かび、空間が歪曲していた。

基本的に有吾はダンジョンの主にはならない、と思います。あくまで攻略、に尽くす路線で行こうかと思います。

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