07 次男[2]
「でも、本当に乙女ゲームみたいだよ、お兄ちゃん達」
「それ慰めになってないから」
それが私のパッケージを眺めての感想だ。傲岸不遜な顔つきの真哉、眼鏡の柄を右手で押し上げて含み笑いの篤哉、それに竜哉の3人が映るパッケージは他の乙女ゲームと遜色ない。兄弟なのに全く似てないので二次元に持ってきてもキャラクターとしてちゃんと確立している。発売したらきっとかなり売れるだろう。
「かなり受けると思うけどなぁ…」
「なんで??」
「だってお兄ちゃんこれまでどれだけ告白されたと思って」
外見だけで告白するなんて浅はかにも程があるけど、それは内面を無視できるほど魅力があるとも言える。そんな兄と恋愛が出来ると聞いて買わない人なんていない気がする。
「俺が望んだ訳じゃないよ」
篤兄を見たということは篤哉は望んでたってことか。道理で落ち込んでない訳だ。
「でも恋愛はしたいと思ってたでしょ??もしかしたら内面まで見てお兄ちゃんを好きになってくれる人が現れるかもしれないじゃん??」
彼らの内面を見てくれる人は少ない。しかし、恋愛ゲームとなればカッコいいのは当然なのだ。だからきっと皆彼らの中身を見てくれるはず。そんな人が増えれば私としても万々歳、お兄ちゃん達も外見にコンプレックスを抱くことなく恋愛ができるだろうと。あの外見がコンプレックスに感じるって人からしたら贅沢な悩みだけどね。
「へぇ…そう」
冷たい目が私を嘗める。彼の氷のような表情に私は寒気を感じて体を固まらせた。
竜哉は人と接する時は笑顔だけど、時々驚くほど冷たい顔をする。笑顔の合間に時々見せる冷徹な表情。それは黒と同じく彼の顔立ちには似合わないのだけど、私はその顔が彼の一番いい顔だと思っている。見た者の背筋を凍らせる冷徹な表情。恐怖さえも感じさせるその顔に私はどうしようもなく惹かれる。わからないけれど彼の無表情には不思議と人を虜にさせる何かがある。なんともドMホイホイな顔だ。本人はそんなこと知らないだろうけど。
竜兄は猫のように細めて私を見た。