06 次男[1]
「篤哉聞いてくれ!!“美形は滅びろ”、“イケメンは敵”とハブにされ続けてきた俺の嘆きを!!ぼっち学園生活を送らされてきた俺の悲しみを!!男は触らぬ神に祟り無しとばかりに俺を避けるし、女だってただ見てるだけで知らん顔だ!!何が美形に生まれた時点で勝ち組決定だ、俺は一度だって美形に生まれて得したことなんてないぞ!!」
「あー、とりあえず落ち着け兄貴」
篤哉が真哉の相手をしている間に私は説明書をもう一度読み直していた。
「あ、これ私の好きな声優さんだ」
「って言うことは麻哉ちゃん、そのキャラの声は俺の声とは違うんだ??」
私がフリーになったので話しかけて来た橘家次男、竜哉。彼は基本静寂を好む。騒がしいのは苦手なのか兄弟内で言い合っている時も彼だけは一歩引いた立場にいる。物腰も落ち着いていて、知的かつ穏やかな笑顔を絶やさない。瞳にはいつも冷静の色を湛えていてどんな時も冷静沈着。真哉より年下というのが信じられない兄だ。
「そうだね。見た目も少し違うし」
パッケージに映る竜哉(正確には竜哉をモデルにしたキャラクター)と本物を見比べる。顔身体共に一卵性双生児並に瓜二つ。ただし、
「髪色と目の色のこと??」
「そう」
“絶恋”のキャラクター皆が黒髪黒目だったら映えないと思ったのだろう。彼らは兄弟でない設定にして、髪と目の色を変えられていた。
真兄は明るい金髪に青い目、竜兄は髪目どちらも栗色になっている。篤兄は黒髪黒目のままだけど。
「こう見ると栗色の方がしっくりきてる気がするね。…染めようかな」
「うちの高校染めるの禁止」
「そうだっけ」
後輩として先輩に忠告する。
確かに竜兄は栗色が似合うけどさ。というか前々から似合うだろうなと思っていたけど。
年上の男の子に使う言葉じゃないけど、彼の顔は“可愛い”。少し垂れて人より幼く見える目尻とか華奢な体つきは外見に繊細さを醸し出している。だからと言って女の子に見えるってわけじゃないんだけど。お母さん似だからかな??そのため竜哉の顔は黒よりも少し明るい色の方がしっくりくる。穏やかな柔らかい笑顔の似合う顔に黒ってのは似合わない。黒でもカッコいい顔をしてはいるけれど。大学生になったら染めるのを勧めようと思っていたのにまさかこんな風に実現するなんて。
明るい栗色の髪と目をした竜兄は美形度二割増だ。パッケージの彼は伏し目がちで何かを憂うような表情だ。それはまるで恋煩いに悩まされる恋愛ゲームのキャラ。完璧様になっている。