05 長男[3]
俯いたまま固まる真兄。
真哉は心が繊細なので傷付きやすい。ガラスのハートなのだ。彼は美しい顔を曇らせ、小さくなってソファーに座り込んだ。
橘真哉は外見こそ大人びているがその実中身は子供っぽい。まだ心は中二のまま成長が止まってるんじゃないのかと思うぐらい精神年齢が低い。それだからか妙に偉そうにしたり、かと思ったら妙に従順だったり優しかったりとたいへん不安定な状態。まさに思春期。
そんな真哉のことを俺様と言う人もいるけど実はそれはただ中学生男子みたいに突っ慳貪に返してしまうからそう見えてしまうだけなのだ。あの容姿だから様になってるだけで。俺様だけに。
真哉は俯いていた顔をガバッとあげて私を睨んだ。
「ああそうだ!!俺には彼女どころか友達すらできたことはない!!」
今にも涙が溢れそうな瞳を見て私は焦った。
「ご、ごめん。言い過ぎた」
私は真兄の涙には弱い。なぜなら真兄の泣き顔が一番色気が際立つから。ついときめいちゃうんだよ。そしてそれ見たさにまた苛めたくなるんだよ。
「……うっ」
「あーあ、麻哉また真哉泣かせたー」
「またって何だ!!またって!!人聞き悪いこと言わないで!!」
泣かせたのは数えるほどだから!!あれ、数えられる時点で悪いのか??
というかなぜだ!?なぜ謝ったのに泣く!!
「俺に優しくしてくれるのは女ではお前だけだ…妹!!俺にはお前しかいない!!」
「やめて、近寄らないで、触らないで」
私の方に泣きついてくる真哉。この人が現在のリビングにいる兄弟の中で一番の年長者です。驚くべきことに。
孤高の王子様、橘真哉は家ではこのようにただの寂しがりやのひきこもりです。