04 長男[2]
真哉の容姿はカッコいいというよりは美しい。芸術的なまでに整った顔立ちはどこか中性的でいて、しかし体つきは男らしく引き締まっている。長い睫毛、切れ長の目、薄い唇、長く細い足、さらにひきこもり体質なのが祟ったのか幸をなしたのか肌も白くどこか高貴さを演出している。これで金髪だったら王子様間違いなしなのに。黒髪なのが残念。黒髪でも十二分に美しいですけど。高校に入ってから妙に仕草や声が色気を帯びるようになり、彼の一挙手一投足があまりにも…エロいので妹の私でもドキッとくる。況んや普通の女子をや。
そんなどこか近寄りがたいオーラを纏った彼を人は“孤高”と認識し、遠くから鑑賞することを好む傾向にある。彼は動物園の動物と例えていたが、私だったら美術館の美術品と表現するだろう。じっくり鑑賞して美しさに酔いしれるのが彼の楽しみ方なのだ。それは暗黙のルールでもあり、彼を狙うライバルを牽制するためのものでもある。そうして遠巻きにされていた彼にコミュニケーション能力が必要される訳がない。むしろ彼が話しかけようものなら事件にまで発展しかねない。だから真哉は迂闊に動くことも出来ないという悲惨な状況。
きゃあきゃあ騒ぎ立てられるのも困るが遠くからじっと見つめられるのも居心地が悪いだろう。いつでもどこでも注目の的ってのは精神的にくるものがある。それで真哉がひきこもりになったというわけではないけれど理由の一端ではあるだろう。彼だって苦労してるのだ。
「真兄も大変だね」
「も??お前は何も苦労してないだろう」
「あ…そうだね。ところで、キャラの性格もお兄ちゃんと同じなのかな??」
少しイラッとしたがそこは大人な私。流して疑問を口にする。
「さぁ??わからん」
「難攻不落って言ってるぐらいだからそうなんじゃね??」
真兄との会話に割り込む篤兄。
「まぁ、このキャラがお兄ちゃん達の性格そっくりだったら恋愛は無理でしょ」
「失礼な言い方だな」
「じゃあ、お兄ちゃんこれまで彼女できたことあるの??」
「……」