03 長男[1]
美形というのは全くもって厄介だ。それが私が15年間彼らと暮らしてきての感想である。
私、橘麻哉の兄はそれこそゲームになってしまうほどカッコいい。二次元でも三次元でも変わらない美貌は女の子を魅了して止まない。彼らの行くところに人だかりあり、通りすがれば10人中10人が振り返る、それが橘家の三大美青年であり、私の兄達なのであった。
「で、この恐ろしきゲームが本当に3日後に発売されることがわかったのだが…」
橘家のリビングは相変わらず重苦しい空気に支配されている。
真兄は腕組みをしながら難しい顔をして私たちを見た。
「篤兄みたいな元から注目を浴びてるようならまだマシけどコミュニケーション能力が欠如した真兄とかは困るよね…」
「そうだな」
「あれ、否定しないんだ」
「顔目当てで集まってくる奴らととるコミュニケーションなどない」
「確かに」
真兄の言葉に納得して頷く兄弟達。他の兄2人にも心当たりがあるようだ。
「真兄、女の子から人気は人気だけど絶対に話しかけられたりしないもんね」
「俺ほど動物園の動物に共感できる人間はいないと思う」
「ぼっちだもんね」
「その言い方は傷つくからやめろ」
女の子に大人気だという点はうちの兄達に共通しているが、どう人気なのかについてはそれぞれ異なる。
真哉の場合、彼は“鑑賞物”として人気だ。