02 絶恋[2]
「で、“絶恋”が何なの??」
「…まぁ、見ればわかる」
と真兄は“絶恋”のパッケージを開いて説明書を私に渡した。
「“絶恋~難攻不落の生徒会~”ナニコレ…“主人公の少女麻由は生徒会の秘密を知ってしまい、強制的に生徒会に入れられてしまう”」
恋愛ゲームによくありそうなシチュエーションだ。これのどこに彼らが絶望する要素があるのだろうか。
「“生徒から絶大な人気を誇る魅力的な生徒会の先輩達は過ごしていくうちに段々と主人公に引かれていく―――。”」
主人公魔性の女。主人公が好きになるわけじゃ無くて攻略対象の皆さんが主人公を好きになるのか。…逆ハーレムの予感。
「“難攻不落と称される絶対にオチないと噂の生徒会メンバーを主人公はおとすことができるのか!?”」
ああ、だからあのサブタイトル。難易度が高いと豪語する恋愛シュミレーションゲームは珍しい。少し興味が湧いてきた。
「“橘学園生徒会の先輩達3人”か…先輩しか出てこないんだね」
後輩キャラ、結構好きなんだけどな…と少しガッカリする。私は末っ子で弟がいないから、ワンコみたいに慕ってくれる後輩キャラに弱いのだ。リアルに年上キャラが3人もいたらいくらイケメンでも飽きる。
「それに3人はちょっと少ないかも」
普通、乙女ゲームの攻略可能キャラは5,6人ぐらいが妥当なのに。その代わりに分岐が増えて攻略が難しくなっているのだろう。流石は難攻不落。
ん…??今なにかが頭に引っ掛かった気がする。
「“その先輩は…生徒会長、真。副会長、竜。書記、篤”………あっ」
ビビッときた。
パラパラと人物紹介のページをめくる。さらに説明書を閉じてパッケージの表をもう一度まじまじと見て確信した。
「わかった。このゲーム、お兄ちゃん達をそのまま攻略対象にした乙女ゲームなんだ」
どうりで兄達が焦るわけだ。そりゃ自分がゲームにされて攻略されるなんて知ったら絶望もする。そうか納得。さぁ、これで私も謎が解けてすっきり…
沈黙。
「えええええええええええええええええええええ!!!!????」
私の声はご近所中に響き渡ったそうな。