糸
掲載日:2013/08/31
その人は、全てを布に例えていた。
「人生ってのはな、布みたいなものなのさ」
ポカリポカリと煙草の煙をその人は吐き出しながら、俺に教えてくれた。
「一つ一つの糸を見ても、その人の人生ってのは分からないんだ。ただ、全体をみると、それは美しい絵になる。だから、そうなるように、しっかりと生きなさい」
「…分かった」
それが、俺の人生の指針になったのは、言うまでもない。
ただ、その人が誰だったのか、それがまったく思いだせない。
「もしかして、神さまだったのかもな」
そう言ってくれたのは、俺の同級生だ。
幼馴染で、幼稚園から高校の今までずっと一緒だ。
「そうかもしれないな」
必要なのは、日々をしっかりと生きること。
それに、友人だ。
糸は意図、つまり、どう過ごすかを考えろと言うことなんだと、俺は考えていた。
彼はそう言いたかったのかは分からない。
でも、きっとそうなんだろうと思う。
今度会った時に、聞いてみたいと思うが、神さまならば、きっと会う時は死ぬときだろう。




