休み時間
連載小説二作目です。
幽霊はでてきますが、ホラー系ではありません。
ご了承ください。
どちらかと言うと、学園友情物語って感じです。
私は佐倉悠羽。この女子校稜ヶ崎学園の二年生。五クラスあるうちの一番最後五組の生徒だ。
今日の一時限目は社会。朝から眠くなる教科だ。
「……ZZZ」
案の定、寝てしまった。そのまま授業は進む。
キーン コーン カーン コーン
「ハッ……、ああ、寝ちゃってた」
二時限目は数学。割りと得意な教科なので、授業の内容は簡単に理解できる。
「この問題、できるやつはいるか?」
あの問題はちょっと難しいけど、大体の考え方はわかる。
「ハーイ」
なんて手を上げてみたけど、先生は全くの無視。それどころか、先生は私の後に挙げた委員長(アダ名)に解くように言った。
サラサラと書いてしまう委員長。すべて書き終わった委員長を、先生は褒めた。
「さすがだな、他の人が手を挙げなかった問題をこうも簡単に解くなんてな」
「いえ、こんな問題、簡単ですよ」
そう言って自分の席に戻る委員長。
「……私だって解けたのに……、まあ、しょうが無いか」
先生が無視をしたのも無理は無い。
実は、佐倉はこの二年五組に憑いている地縛霊で、未だ誰にも存在に気づかれていないのだ。
「今日は授業、ちょっとサボっちゃお」
二時限目が終わったあと、佐倉は教室を抜け出した。
廊下には、友達と話している人などが多くいるので、ぶつからないように気を付けて飛んだ。
以前、人を避けずぶつかりながら飛んだ時、体はすり抜けて大丈夫だったのだが、すり抜けられた人は寒気が止まらなくなって大変だった。
だから今では、ぶつからないように気を付けて飛んでいる。
階段を降り、一階下にある一年生の教室の前で止まった。
ついこの間、入学式を終えたばかりで慣れていないのか、廊下は静かだった。それでも、ある程度の人間関係はしっかりしてきたようで、廊下には少なからず話している人がいる。
佐倉はその人達のわきを通りぬけ、三組の教室に入った。
「へえ~、これが今年の一年生かあ~」
教室には友達と話してる人と、ひとりぽつりと座っている人が数人いる。
佐倉は、入口から一番遠くに一人座っている、黒髪のボブの子が気になった。その子は本を読んでいる。
「なんの本を読んでいるんだろう……?」
佐倉はその子に近寄って、本の表紙を覗き込んだ。
「シェイクスピア、マクベス」
「……え?」
「この本の題名ですよ。知りたかったんでしょう?」
「み、視えるの?」
女の子は本を閉じ、呆れた顔をした。
「当然じゃない。視えるから話しかけているんじゃないですか。私にひとりごとを言う趣味はないわ」
「……」
佐倉は視えているなら、と開き直って聞いてみた。
「……あなた、友達を作ろうとは思わないの? こんなトコロに一人で……」
女の子はそっぽを向いた。
「……いいのよ、私は」
それを見て、佐倉はなにか手伝ってやれることはないか、と考えた。
どうやって友達を作ろうか。と、そこまで考えて、まだ名前を聞いていないことに気が付いた。
「まだ、名前を聞いていなかったね。私、佐倉悠羽。死んだときは二年五組の生徒で、委員長やってたんだよ。あなたは?」
「……夜野原玲歌」
夜野原はぶっきらぼうに答えた。
キーン コーン カーン コーン
「もう、授業が始まっちゃった。じゃあ、また後で来るね」
「ちょ、ちょっと……」
夜野原は反論しようとしたが、すぐに先生が教室に入ってきたので、最後まで言えなかった。
佐倉は生徒たちの頭上を飛び越え、壁の向こうに消えていった。
(なんだったんだろう、あの幽霊……)
教室に幽霊が堂々と居たのにも関わらず、先生も生徒たちも授業を進めていった。夜野原もそれに習うことにした。
その後、いつもと同じように授業を受けたが、あの幽霊は現れず、無事に三時限目は終わった。
このお話は、伶歌が友達を作るところまでは続ける予定です。(その先はまだ未定ですが)
最期まで読んでいただけるよう頑張りますので、よろしくお願いします。