第6話 「初任務」
任務開始日。
スピーカーから起床の合図とともに起きた。
支度し食堂で朝食をとった。
俺は緊張していた。
そして、嬉しくもあった。
戦闘電子課の目の前に着くと入口からオオハシ教官が出てきた。
「もしかして、緊張してる?」
オオハシ教官はニコッとした。
「はい、うまく任務をこなせるかどうか…」
すると俺の肩をオオハシ教官は軽く叩いた。
「大丈夫。君の成績はトップクラスだ。心配する必要はない」
「君は任務を達成して帰ってくる。 私が言うのだから問題なんてない」
そう言うと用事があると言ってその場をあとにした。
オオハシ教官の言葉のお陰でなんとか自信を取り戻すことができた。
「はい! 頑張ります!」
任務をすることになった俺達は作戦会議室へ連れて行かれ、それ以外の者は訓練をするようだ。
会議室へ行く途中にタテイシ先輩に会った。
「頑張れよ、ナオト! お前の活躍見てるからな」
そう言ってタテイシ先輩は戦闘準備室に行った。
作戦会議室に着くとカミヤ教官がいた。
「よし。では始める」
「今回の作戦は我々の前線の部隊が敵から猛攻を受けているため、敵の部隊にマップデータや位置座標データなどを送っている部隊管理コンピュータを破壊すべく君たちの先輩がいる106電子分隊が政府の第7データ管理センターに侵入しセンター内の部隊管理コンピュータを破壊するという内容だ。」
106電子分隊…もしかして、タテイシ先輩があの分隊にいたりして。
「君たちには管理センターのセキュリティを無力化するためデータ管理センターに電力を供給する各送電所を一時的に無力化してもらう」
「送電所は全部で10ある」
真剣な眼差しでカミヤ教官が行った。
そして、俺達もまた真剣に話を聞いていた。
「無力化の方法は送電所までステルス輸送機に乗って空から送電所に侵入し送電所内にある送電を管理するコンピュータの前に立つだけでいい。あとはすべてミラースーツがやってくれる」
「第1目標はナオト、お前だ」
「は、はい!」
まさか、目標の順番も成績順だとは…
俺はビックリした。
「それと、HALO降下は軍の頃、配属先関係なしに訓練したはずだ。もし訓練していないのなら手を上げてくれ」
もちろん上げる人はいなかった。
なぜなら、HALO降下は軍の最低訓練事項だからだ。
「任務が完了したら。ヘリで君達を回収する。回収地点は降下したところと同じだ。マップにも表示されるから迷うことはないだろう」
「それとこのミラースーツは運動性能も多少上げる機能も搭載している」
ニヤニヤしながらカミヤ教官は言った。
「では、早速着てもらう」
そう言うとカミヤ教官は俺達を戦闘準備室へ連れて行った。
戦闘準備室へ着くと目の前には大量のロッカーや武器保管庫があった。
「右端のロッカーが新規入隊者のロッカーだ。自分の名前を探してそこからミラースーツを出し着替えるんだ。マスクとヘルメットはまだ付けないで持ってろ」
俺が探そうと入口側の一番目の名札を見るとそこには「シンジョウ ナオト」と書かれていた。
「こ、このロッカーってもしや、成績順…なのか」
そう思い、ロッカーを開けると袋に包まれたミラースーツが出てきた。
俺はミラースーツを袋から取り出し着た。
全員が着替え終わるのを確認するとカミヤ教官が武器を持って外に出るよう言ったので俺は武器を持って外へ出た。
「ミラースーツの着心地はどうだ? これから君たちにそのスーツの使い方を教えるがその前に初期設定をする。このスーツは着ている人間の体調管理や行動データを読み込み着ている人間に馴染むようになっている。しばらく使うとすぐに実感するぞ。ではまずマスクを装着しヘルメットをかぶれ」
俺は背負っていた武器を地面に下ろしマスクとヘルメットを装着した。
すると目の前に文字が現れた。そこには「認識中」と表示されていた。
「今、お前たちには認識中という文字が見えるはずだ。まあ、当たり前だがそのマスクにはヘッドアップディスプレイ機能も搭載されている。そこに必要な情報全てが表示され君たちの戦闘をアシストしてくれる。便利だろ?」
自慢げにカミヤ教官は言う。
自慢げに言ってもみんなヘッドアップディスプレイを使ったことはあるし戦争時なんかは常に片目に表示装置をつけていた時もあった。
「認識完了。各システム稼働開始」
女性の声が聞こえた。
すると目の前に現れていた認識中という文字が消えてマップ画面が左上に小さく表示された。
「どうだ? すごいだろ。使い方は覚える必要はない。ステルス機能を使いたければ心のなかで言えば機能するし敵になりたいと心のなかで思えば敵になることもできる。とは言え、今のところこの2つしか機能は搭載していないからこの2つの機能しか使えないな」
笑いながらカミヤ教官は言った。
「それとその腕に付いている端末はハッキングやそのマスクが壊れた際の代用だ。まあ、今の君たちが使うことはないだろうな。よし、じゃあ、早速銃を持ってステルス輸送機に向かってくれ、無線連絡は兵士サポート課が行うからな」
いよいよか。俺は気合を入れた。
――――――ステルス輸送機内
俺達は降下の合図を機内で待っていた。
みんな、沈黙していた。
俺も何度か戦場にたったことはあった。
でも銃の扱いが悪くあまり前線などでの任務は無かった。
しかし、今は違う。
オオハシ教官がしっかり訓練してくれたおかげで銃は使えるようになった。
いよいよその成果が試される時だ。
「間もなく、第1目標地点だ。降下準備!」
イヤホンから機長の声が聞こえた。
俺は立ち上がりハッチの前に立つ。
そして仲間と握手を交わした。
「よお、ナオト、俺だよ、俺」
聞き覚えのある声がイヤホンから聞こえた。
「お、お前もしかしてタツヤか?」
俺は驚いた。
「ああ、お前の担当だ」
無線連絡は兵士サポート課がやるからもしやとは思っていたがまさかなるとはな。
まあ、話しやすいからいいかと俺は思った。
「それと、これからは本部と呼んでくれ、そのスーツに本部応答せよって言うと自動で繋がるから。まあ、分かるよな通信科だったんだから」
「ああ、分かるよ」
「それと、敵に本拠地がバレるのを防ぐため無線の使用は極力避けろって言われてるから。分かったか?」
「ああ、じゃあ、いっちょ行ってくるよ」
「頑張ってな~。健闘を祈る!」
サポート課こと本部からの無線を最後にハッチが開き降下の合図が出る。
「GO、GO、GO!!!」
誘導員の掛け声とともに一気に外へ飛び出しすぐに体勢を整えた。
外は薄暗く風がとても気持ちよかった。
瞬く間に速度が上がり地上がどんどん近くなってゆく。
そこには、送電所と思われる施設が見えた。
俺はパラシュートを開き送電所から少し離れた森に着地した。
「各システム異常なし。マップ及び武器弾数を表示します」
そう言うとマップと武器の残り弾数が表示された。
「便利だな~。これからよろしくな?」
「よろしくお願いします」
俺は驚いた。
スーツが喋った。
「お~い。お前喋れるのか? お~い」
だが応答がない。
もしやと思いさっきと同じ言葉を言った。
「よろしく」
「よろしくお願いします」
どうやら特定の言葉には反応するようになっているようだ。
隠し機能なのだろうか? なかなかユーモアのある開発者だ。
いや、そんなことしている場合ではない。
俺は森を抜け送電所の入口に着いた。
入口には警備の兵士3人が立っていた。
俺はステルスと心の中で言うと瞬く間に背景と同化していた。
俺は近くにあった木を揺らした。
「ん?なんだ」
「ちょっと見てくる」
「ああ、頼んだ」
そう言って、一人の兵士がこちらに近づいてきた。
他の兵士からこちらが見えないのを確認すると相手を捕らえ首を締め気絶させた。
そして俺は心の中でここに倒れている敵と全く同じ姿になりたいと思った。
「コピー開始。データ収集中」
そう言うとスーツが敵の戦闘服に変わった。
まさかと思いおもむろに鏡を取り出すと顔までそっくりだった。
さらに声に出してみるとコイツの声そっくりだった。
俺は驚いた。
「お前すげぇ~よ」
そう言うと「ありがとうございます」と言ってきた。
俺はすぐに彼らのところへ戻った。
「おかえり~、でどうだった?」
兵士の一人が聞いてきた。
「いや、何も無かった」
と俺は言った。
「はぁ~、だるい~」
もう一人の兵士が壁にもたれかかりながら言った。
「おいおい、やめとけ、見られたらどうする」
俺は役を演じきるためすぐに注意した。
「分かったよ。まあ~もうすぐで交代の時間だからな」
ラッキーと俺は思った。
このままだとやばかったからちょうどよかった。
しばらくすると交代が来た。
俺達は中へ入れられ兵舎へ向かった。
「スマン。先に行っててくれ、俺、急に腹が痛くなって」
よくある方法だったがまあ、バレることはないだろうと思った。
「分かった。行ってこい。俺達は先に寝てるからな」
そう言って彼らは寮へ戻った。
俺は監視カメラが付いていることを知り、トイレに言ってトイレ内でステルス機能を発動させてからトイレから出た。
俺は左上に表示されているマップを見ながらコンピュータルームへ向かった。
通りがかった部屋から何やら話している声が聞こえた。
「例の兵器は完成間近と聞きました」
「ああ、あれが完成すれば我々の勝利だな」
「いや、まだ敵の本拠地が分かっていないらしのです」
「そうか、まあ、完成すれば奴らも終わりだろう」
例の兵器?なんのことだ?
だが話を聞いている場合ではない。
俺はすぐにコンピュータルームへと足を進めた。
コンピュータルームに着くとドアにはカードリーダーがついていた。
「どうすりゃいいんだ~、カードがないと開かないじゃん」
そう言ってカードリーダーを見ていると。
急に画面に「読込中」という文字とともに音声が流れた。
「セキュリティゲート管理システムにアクセス中。お待ちください」
何やら彼女はすごいことを始めたようだ。
しばらくするとドアが開いた。
俺はさっきっからずっとこのスーツに驚かされてきたような気がする。
中に入るとコンピュータの動作音とともに黒い長方形のコンピュータがずらりと並ばれていた。
「目標到達。コンピュータに近づいてください」
俺は指示どおりに近くにあったコンピュータへ近づいた。
すると目の前にそのコンピュータの情報が表示さた。
「アクセス中。コンピュータコード1632。認証」
「他の兵士の到着を待ちます」
するとタツヤの声が聞こえた。
「よし、着いたな。みんなも無事コンピュータルームに着いたようだ。じゃあ今からそっちに開始の信号を送る」
「ああ、頼んだ」
俺はそう言うと左下に信号を確認と表示された。
「アクセス続行」
彼女が言った。
「送電管理システムへアクセス。ウイルスコードをインストール中」
そう言うと右上にパーセンテージが表示された。
瞬く間に100%になった。
「ウイルスコード、インストール完了」
そう行った途端あたりが暗転しすぐに非常電源に切り替わるとともに警報がなった。
「警告。送電の制御が不能。過電流により一部機関が復旧不能」
送電所内にアナウンスが流れた。
どうやら無力化は成功したようだ。
「よし、一斉に送電が止まったから連中は相当焦ってるだろうな。今から30分間データ管理センターへの送電が止まる。むこうがうまくやっていることを祈るだけだな」
タツヤが言った。
「大丈夫。うまくやるさ。じゃあ、俺は回収地点へ向かえばいいんだな」
「そうだ」
タツヤが答えた。
俺はコンピュータルームを出て回収地点へ向かった。
途中、重装備をして警備の強化にあたる兵士もいればコンピュータルームへ駆け足で向かう者もいた。
だがステルス機能を使っているためバレることなく送電所を出て回収地点へ行く事ができた。
すると前の方からプロペラ音とともにヘリが近づいてきた。
「こちら回収班だ、任務ご苦労さん」
徐々に高度を下げ、ヘリは地面すれすれでホバリングした。
俺はすぐにヘリに乗り込むとヘリは基地へと出発した。
ヘリに気づいた敵は何発か撃ってきたがヘリの装甲を貫通することはできなかった。
「いや~、良かったな。大成功だよ。データ管理センターのセキュリティは見事停止。106電子分隊は目標の破壊に成功したってよ」
タツヤが言ってきた。
「良かった。俺の初任務が大成功に終わって」
「ああ、ほんとだよ。前線部隊の報告によると敵部隊、相当混乱してるらしいってよ。撤退してる奴もいるらしい」
ヘリは他のみんなも回収すると基地へ急いだ。
任務が終わったらなんだか疲れたような感じがした。
帰ったらすぐにシャワーを浴びて寝たいところだった。