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第4話 「志願」

今日から俺達は反政府組織である「国民守備隊」になった。

訓練は直接戦闘に関わらなかった元通信課の俺たちも含まれた。

その訓練は思った以上に過激だった。

前にレジスタンスの攻撃を見ていた時、念入りに訓練されている部隊のようだった彼らはここで訓練を受けているんだという事が身にしみた。


そしてこの訓練は俺達がどれほどの実力を持っているのか確かめるための訓練だった。

今回受けた訓練は体力トレーニングと射撃訓練だった。

体力トレーニングはともかく、射撃がまるでなっていなかった。

射撃訓練などを担当しているオオハシ教官にこっぴどく叱られたあと居残り練習をするハメになってしまった。


「はぁ、最悪だ~」

ガクリとベンチで落ち込んでいる俺の目の前に缶コーヒーが現れた。

上を見上げるとそこにいたのはタツヤだった。


「まあ、これでも飲んで元気だせよ。俺の勘だとあのオオハシ教官は厳しいけど多分優しい人だと思うんだけどね~」

タツヤはそう言いながら缶コーヒーを俺に渡した。


「それと俺たち通信課だけだぜ、あんな初歩的な射撃訓練」

落ち込む俺に水を差すような事をタツヤは言った。

俺は更に落ち込んだ。


「あ、いや、お前はその、まあ」

自分の発言に問題があったことに気づいたタツヤは慌てて誤魔化そうとした。


「もういいよ。確かにあの程度のこともできなきゃな」

そう言うと缶コーヒーを一気に飲み干し教官の待つ射撃場へ向かった。


射撃場に着くと入口にオオハシ教官の姿があった。

「よし! 来たな。早速はじめるぞ」


「はい! お願いします。オオハシ教官!」

軽く挨拶するとすぐに射撃場に入った。

射撃場には誰もおらず静かだった。


「君が集中できるように誰も居ない時間を取った」

オオハシ教官のはからいに俺は驚いた。

訓練の時は怒鳴り散らしてた怖そうな教官だったがまさか俺のためにここまでするとは思ってもいなかった。

まさかタツヤの勘が的中するとは驚きだ。


「そのかわり、お前ができるまでビシバシやらせてもらう」

その言葉に俺は気合が入った。


「はいッ」


――訓練が終わった頃には時計は深夜の2時を指していた。

部屋に戻った時にはタツヤはベットに横になっていた。

俺は起こさぬように静かに寝巻に着替えた。


「今日はご苦労だったな」

俺はビクッとした。


「あ、起こしたか? ゴメンな?」

俺はすぐさま謝った。


「まあ、気にすんな。でどうだった? そっちの方は?」


「ん~、なんとか的には当たるようにはなったな。あそこまで付き合ってくれた教官に申し訳ないな」

そう言って俺はタツヤのベットの向かい側にある自分のベットに横になった。


「お~、よくやったな。お前にしては上出来だな」

ニコニコしながらこっちを見てきた。


「まったく、気取りやがって」


この会話を最後に2人は眠りについた。



翌日、スピーカーから流れる起床の合図とともに俺は起きた。

昨日は遅くまで練習していたこともあって起きるのが辛かった。

時計を見ると6時を指していた。

タツヤはどうやら俺より早く起きてどこかへ行ったようだった。

俺はすぐに支度を済ませ食堂へと向かった。

食堂に着くと教官の姿があった。


「おはようございます」

すぐに俺はオオハシ教官に挨拶した。


「昨日はご苦労さん。あそこまで出来ればみんなについて行けるから安心して大丈夫だよ」

本当に優しい人だと実感した。訓練の時は怖いけど…


「ありがとうございます。俺、頑張りますのでこれからもよろしくお願いしますッ」


するとオオハシ教官はニコッとした。


「こちらこそ。それともう少し楽にしていいよ。堅苦しいのは嫌いでね」

そう言って食堂をあとにした。


俺はテーブルに座りカレーを食べているとタツヤが誰かを連れて食堂に来た。


「お、いたいた。席いいかな?」

タツヤはそう言うと席についた。


「そちらの方は?」

タツヤの隣りに座った女性について質問した。


「ああ、この人は総合サポート課の先輩のアユミさん。ちょと兵士サポート課について教えてもらってたんだ。」


「同じ課になるかわからないけど、よろしく、ナオトくん!」

俺と同じ20代ぐらいの清楚な女性ことアユミさんはニコッとした。


「よろしくお願いします」


「ところで同じ課になるかわからないってどういうことですか?」

と聞くとタツヤがすぐさま答えた。


「お前、掲示板見なかったのか? ほら、あの割り振り表が貼ってあったやつだよ」


「いや、見てないけど」


「そうか、でもどうせいつか分かることだしな」

どうせいつか分かると言われてもとても気になった。


「そんなこと言わないで説明してくれよ」

俺がそう言うとアユミさんが話してくれた。


「ここに来てまだ配属先決めてないでしょう?」


「でも、前は通信課だったから、ここでも通信課なのかな~と思ってまして」

そう言うとアユミさんは申し訳なさそうに答えた。


「そ、それがね、ここには通信課なんてないの」


「そ、そうなんですか」

どにでも通信課ぐらいあると考えていた俺は驚いた。


「でも新しく来た君たちには入りたいところを選べるから。とは言っても必ず希望した課に入れるとは限らないから」


「まあ、詳しくはこの書類を見れば分かるよ。掲示板のところにあったやつ。ちなみに俺は兵士サポート課に入る予定。まあ、名前の通り兵士をサポートをする人って感じかな?」

タツヤがポケットからA4サイズの書類をだし手渡した。


そこには「新規入隊者配属可能リスト」と書かれていた。

書類には、俺達が希望できる部署が書かれていた。

どうやらタツヤが入るところは直接戦闘に関わっていないから戦闘関連の訓練は無いようだ。


「ん?」

適当に部署のリストを見ていると気になるところがあった。


「この戦闘電子課ってなんですか?」


「ああ、これ? この課は電子兵として戦場に立つ兵士を管理、養成する課よ」

とアユミさんが言った。

電子兵…確か、特殊な加工がなされた戦闘服を身にまとい、姿を変え敵になりすましたり、ステルス機能を使い敵に見つからないように潜入や情報収集などをする兵士のことだったな。

俺も実は電子兵になりたかったんだよな。

もしかしてあの襲撃の時に見た男も電子兵だったりして。

それにこの課、オオハシ教官が所属してる。


「俺、この課にしようかな…」


「ん? お前が戦闘電子課だと、まあお前、近接格闘やコンピュータの扱いに関してはピカイチだったしな。でもお前の苦手な銃を使うんだぞ?大丈夫か?」


「ああ、大丈夫だよ。オオハシ教官がいるしね」

俺はそう言うと空になった食器を戻しに行った。


その日、俺達は第2講義室に呼び出された。


「掲示板を見た者は知っていると思うが君たちは配属したい部署をこのリストから選ぶことができる」

とメガネをかけた中年ぐらいの教官は言う。


「予め決まっている者はこの部屋を退出時にこの箱に志願書入れてから退出すること。それ以外の者は明日の12時までに兵舎、教官室前の箱に入れること。以上」

メガネをかけた教官が話し終わると俺は箱に紙を入れて講義室をあとにした。


「お~い、で結局、戦闘電子課にしたのか?」

後を追ってきたタツヤが聞いてきた。


「ああ、お前は兵士サポート課に?」


「もちろん!でも配属の発表はしあさってなんだよな~。それに確実にその課に入れるかわからないし、発表まで地獄の訓練があるしな」

ダルそうにタツヤが言った。


「まあ、すぐだよ。それにお前は配属されたら訓練はしないんだろ?」


「まあね。でもその課に入れるか分からんし」


「大丈夫だ。絶対入れるって。よし! それまで訓練がんばろうか!」

俺が肩をポンと叩くとタツヤは頷いた。



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