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第2話 「襲撃」

「こちら偵察隊、ターゲットの搬入を確認」

検閲管理局裏側の向かい側にあるビルから地上を眺めていた男は不安げに答えた。


「了解、待機せよ」

男のいるビルの部屋には緊張や不安などが織り交ざった複雑な空気になっていた。


「隊長ッ、必ず成功させましょう!」

隊員の一人が言った。


「ああ、何が何でも成功させる」

彼の額には汗が流れていた。


――――――5時間前


反政府組織・作戦会議室


「これより、作戦の内容を説明する」


「まず、管理局裏側の向かいのビルに電子兵で形成された偵察隊を送り、今回のターゲットである機密文書の搬入を待つ」


「搬入が確認され次第、突撃部隊が正面から攻撃」


「そして、敵が正面に気を取られている隙に待機していた偵察隊がアンカーが先端に付いたワイヤー射出機を使い、向かいの管理局へ侵入」


「なるべく戦闘や敵との接触を避けるんだ」


「そして、ターゲットを回収する」


「これで作戦完了だ」


「いいか諸君、失敗は許されん、絶対に成功させるんだ!」

真剣な目付きで部下に目をやる。


「以上!解散っ」

部隊長は部屋をあとにした。




――――――




「よし、あとは突撃隊を待つだけか…」

男はポケットからタバコを出し火をつけた。


「こちら突撃隊。間もなく到着する! 待たせたな」

無線から待ちに待った言葉が飛び出してきた。


「待たせすぎだ。まあ、派手にやってくれよ」

タバコを消すとワイヤ射出機と銃の準備にかかった。




「こちら突撃隊ッ。攻撃を開始、予想以上の抵抗に合っている。急いでくれ」


どうやら、連中はかなり訓練されたエリートのようだ。突撃隊隊長の言葉はそれを物語っていた。


「よし、さっさとやるぞ」


男はワイヤー射出機を窓を開け、窓枠に固定し向かいの管理局の窓に向けてワイヤーを射出した。

バリンッとガラスが割れワイヤーの射出が完了するとすぐさまワイヤーに電動滑車を固定し窓から身を乗り出し壁を蹴った。


すると瞬く間に検閲管理局の窓についてしまった。


「いや~、スリルあるっすね」


あとからきた隊員はまるで遊園地のアトラクションに乗ってきたのかのような顔をしていた。



――――――同時刻、管理局裏口


管理局の裏口に無数の軍車両が止まっていた。

そこからぞろぞろと銃を身構える歩兵が降り、すぐさま管理局へ入っていった。


「いや~、まさかの自体だな」

タツヤは車両内のコンピュータに目を向けながら苦笑いしていた。


俺もまさか戦闘が起こるとは思っていなかった。

てっきり復興の手伝いだけと思っていたのだ。


「まあ、俺達は通信担当だから実害はないからなぁ」


確かに、俺達には実害はない、しかし戦闘している連中はそうではないだろ。

でもみんな実戦を経験している兵士だ、ただの訓練兵ではない。

そう簡単にやられる奴らじゃない。


「こちら国家保安隊だッ。攻撃をを直ちに中止せよ。君たちは重大な犯罪行為を行なっている」

車両の外から拡声器の声が聞こえた。

しかし相手は呼びかけを無視し攻撃を続けている。

彼らの狙いは正確で次々と重軽傷者を出していた。

でも何かがおかしい。

なぜ奴らは攻め込んで来ないのだろうか?

まさか…


「…ちょっと行ってくる」


「お、おい! どこ行くつもりだよ」

質問に答える間もなく俺はすぐさま建物内へ走った。



管理局内はやけに静かだった。

俺の予感はどうやら的中したようだった。

警備の者は撃たれ、床に倒れていた。

どうやら、何かを運んでいる時に静音ピストルでやられたのだろう。


ふと前に目をやると廊下の窓が割れそこからワイヤーが伸びていた。

すぐさま近くの窓からワイヤーの先にあるビルに目をやった。


「あっ」


俺は思わず声を出してしまった。

ビルの窓から男がこっちを見ていた。

男はニヤリと笑い部屋の奥へと消えた。


「まっまずいっ クソッ」

慌てて無線機を取り出す。


「大変だ、持っていかれたぞ! 敵は管理局の裏側の向かいのビルだ!」


「な、なにぃ!? す、すぐに後を追え。こちらも後を追う」

隊長が驚いたかのような声で言った。


俺はすぐさま走った。

階段を一気に下り男を追った。

ビルの入口についた頃には男は車に乗った時だった。


その瞬間、後ろから「乗れっ」という声が聞こえた。

タツヤが車両の運転席から顔を出した。

助手席に座るとすぐに猛スピードで連中のあと追った。


「ふぅ、無線聞かしてもらったぜ。 全く、お前ってやつは勘が良すぎだっての」

苦笑いしながら思いっきりハンドルを切る。


追われている事に気づいた連中は一気にスピードを上げた。


「ふふ、なめてはもらってはいかんぜよ。この車の馬力をッ!」

タツヤは思いっきりアクセルを踏んだ。目付きは真剣そのものだ。

俺は他の車にぶつかりそうでとてもヒヤヒヤした。


「うぉぉッ あぶねぇじゃねえかよ」

俺は思わず声を上げてしまった。

しかしタツヤは前を見ながら大丈夫と言わんばかりの笑顔とグッドサインで答えた。




「まだ、ついてきます。早くしないと追いつかれますよ」

後ろの席に乗っている隊員は言った。

そしてターゲットを乗せたワゴンはかなりのスピードで国道を走っていた。



「ああ、わかってる。おい、頼んだぞ」

男は助手席に座る女隊員に言った。

女隊員は頷きマシンガンを助手席の窓から覗かせた。


「あと、もうちょっとで 可動橋に着く、それで終わりだ」

そう言うと一気にアクセルを踏んだ。




「うわっ、クソッ、あいつら撃ってきやがったぞこの野郎!」

防弾仕様のフロントガラスに火花が散る。

俺はガンホルダーからハンドガンをだし、応戦した。


「おい見ろよ、あいつらあの橋に行くつもりだぞ、たしかあの橋は…」

タツヤは焦った様子で言った。

そう、あの橋は可動橋なのだ、もしやとは思っていたが奴らはあの橋を本当に渡るつもりだ。

だったらすぐにでも止めないと逃げられる。


「クソっこの野郎、駄目だ、向こうのほうが早い」


パンッ


大きな音が耳に響く。


どうやら、こっちの車のタイヤが銃に撃たれてパンクしたようだ。


タツヤはすぐにブレーキをかけた。


俺は吹き飛ばされそうになったが幸いシートベルトがそれを阻止してくれた。


ワゴンは橋渡り、橋はその行き先を分断した。


「…クソッ、逃しちったな」

タツヤはニコッとした。


「本当に申し訳ない、俺がもっと早く気づいていれば防げたんだ」


「いや、そんなことないって」


「ぶっちゃけ、俺は検閲にも政府にも反対だしな」

ポンと俺の方を叩いて彼は車を降りあとから駆けつけてきた仲間の方へ行った。


実際、俺も彼と同じような気持ちだった。

だた、これが任務だったからこなしただけだったのだ。

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