第1話 「政府の思惑」
「お~い、起きろ」
肩を揺さぶられた。
「んん~ はぁ~」
「ほら、疲れてるのはわかるが朝飯食わないと体がもたねぇーぞ!」
いつまでも寝ている俺にしびれを切らしたのか上官が起こしに来た。
「す、すみません」
そう言って俺はすぐに食堂に向かった。
「だいぶ良くなってきたな」
「ああ、よくなったもんだな」
「みんなのおかげだな」
食堂へ行くと皆の話題は復興に関してだった。
俺は、シンジョウ ナオト。
戦争時、俺はコンピュータの知識が豊富だったため軍の通信課に配属された。
そして、今は臨時復興支援隊として使っていない基地で寝泊まりをしながら戦後の復興を手伝っている。
「よお、ナオト」
同じく通信課だった同僚のタツヤが食器を戻し椅子に腰掛けてた俺に話しかけてきた。
「ちょっと屋上行かない?」
タツヤはポケットからタバコを見せた。
「分かったよ、付き合うよ」
そう言って屋上へと足を進めた。
「屋上へつくと街全体が見渡せた。 風が気持ちいい」
「いや~、だいぶ進んだな」
タバコを口にくわえながらタツヤは言った。
「ああ、綺麗になってるな」
ボロボロだった街には仮説の住居や施設が建ち並び道まで綺麗に敷かれている。
「国民に自由を~」
「政府反対、検閲反対っ」
ふと声のする方へ目をやると基地の向かい側にある役所の入口の門に人が集まっていた。
「おい、あれ、一体何の騒ぎだ?」
俺がタツヤに聞くと彼は驚いた表情で答えた。
「ええ!?、お前知らなかったっけ?」
彼はタバコを落としそうになった。
「ああ、知らない」
「そうか、検閲制度復活の話知ってるか?」
「ああ、知ってる」
「確か、テロや犯罪を防止するためだとか」
「おいおい、マジかよ。そんな分かりやすいウソ信じるのかお前は」
笑いながらタツヤは言った。
「信じるわけ無いだろ。裏では国民を思うままにしようとするためにやった行為だろ」
「おお~、わかってるじゃん」
ニヤニヤしながら言った。
軽くイラッときた。
「でも、あいつらよくあんなことできるよな」
「あんなコトって、アレのこと?」
役所の入口の門にいる反対集団に指をさした。
「ああ。武装もろくにしてないデモのくせによく検閲とかの妨害工作できるよなって。」
「んあ? お前そんな事まで知らないのか?」
呆れた顔で俺を見た。
「そんな事って?」
正直、何も知らない自分が悔しい。
「奴らはちゃんと武器を持ってる反政府組織なんだよ、ただのデモ隊じゃないんだよ」
「そ、そうなのか」
正直、びっくりした。ただの少数からなるデモ隊かと思ってた。
「わかった、わかりやすく話すよ。奴らはれっきとした反政府組織つまりレジスタンスってなわけ」
「うん。」
「政府は国民を簡単に言うと私物化したいわけだ。俺は政府も検閲も嫌いだけどな」
「つまり、政府は独裁政治をしたいと」
「そうゆうこと」
「その第一歩が検閲によるコントロールってなわけだ」
「洗脳でもする気か?連中は」
「そうかもな」
そう言うとタツヤは急に真面目な顔に戻った。
「さ、長話が過ぎたようだ。 戻るぞ」
タバコの灰をポケット灰皿に入れるとスタスタと階段の方へ向かった。
「お、おう」
俺もその後を追った。
翌日、基地に急に知らせが届いた。
「総員、至急 第一会議室へ集まれ」
スピーカーから大きな声で流れた。
朝っぱらからこんなの流れると正直つらい。
ーーー第一会議室ーーー
総勢300人ほどの人が集まるのには十分すぎる広さの会議室に俺たちは集められた。
「オホンッ、諸君らに集まってもらったのには訳がある。先ほど本部からレジスタンスが当地域を担当する検閲管理局を襲撃した」
基地長は深刻な眼差しで部下を見る。
「管理局の駐屯兵がどうにか対処しているがもちそうにないらしい」
「そこでだ、実戦経験豊富なこととこの基地から検閲管理局が近いため、我々が臨時で国家保安隊として検閲管理局の手伝いを頼まれた」
「詳しい作戦内容は後ほど分隊長が知らせる。諸君らに期待している、以上!」
解散した瞬間、あたりがざわついた。
「おいおい、まじかよ」
「また、臨時か」
「久々の戦闘だな」
「レジスタンスか…」
これからどうなるのやら、俺はすこし不安になった。