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戦国異聞  作者: 椎根津彦
邂逅の章
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小競り合い

 首から下げた携帯のアラームが鳴っている。もう六時か……って今日休みじゃないよな。


昨日の打ち上げ飲みすぎ……そもそも参加してない!!

飛び起きた。辺りを見渡したが何度見渡しても何も建物がない。

…此処はどこなんだ。 

 

 建物が何もないし印象としてはド田舎だ。道路も舗装されてないし、周りは山と野原だ。

遠くでワーっていう喚声と、たまにパーン、パーンと銃声の様な音が聞こえてくる。

改めて自分の格好を見た。武者行列のときのままだ。鑓も足元に落ちている。…というか、軽自動車にぶつかられなかったか、俺。

俺、死んだのか?死んでない?体に特に異常はない、少し眩暈がするだけだ。

…これからどうすればいいんだ?とりあえず……音のする方へ行ってみよう。


鑓を手に取り、俺は方向も分からないまま歩き出した。道は小高い丘の方に続いている。

丘に近付くにつれて喚声も近付いてきた。しかし、足の裏が痛い。武者行列で、履きなれないわらじなんて履いているからだ。

脱ぎたいのはやまやまだけど、替えの靴なんてある訳がない。

丘の一番高いとこに出た瞬間、破裂音がしてびっくりしてしまった。思わず首をすくめながら見渡すと、目の前に広がる光景に茫然とした。

戦争だ。しかも戦国時代の合戦だ。

思わず道の脇の藪の中に隠れて目を凝らした。あれは……足軽か?

 

 向かい合う集団同士が、やたら長い鑓でお互いを叩き合っている。これは……本物だ。

本当に叩き合っている。俺は無意識のうちに嫁に電話していた。

つながらない。2度目にふと気付く。電波がない。

でもこれは…すごい光景だ。

俺はまさか、戦国の世ってやつに来たんだろうか?

ド○えもんでもいないと無理だろう?ワクテカってやつですか!

そう考えるとちょっと興味が出て来た。本物の合戦を見る機会なんてないのだから。でも、どうやって帰るんだ?

…しかし、すごいな。これが合戦か。


 足軽の集団の片方が、根負けしたのか、ばらばらと崩れだした。一人、二人と逃げていく。それに釣られて皆が逃げ出した。

根負けしなかった方は勝ち鬨をあげ、鑓を揃えて根負け組を追い始めた。さらに勝ち組の後から、十騎程の騎馬武者の集団が二つ、根負け組を追い始めた。

やはり馬は速い。あっという間に逃げる集団を追う勝ち組を追い抜き、彼等に追いつき、蹴散らし始めた。負け組側も対応するように騎馬を出してくる。

勝負あったな。何となくそう思った。冷静にこの状況を見る事の出来る自分にも驚いている。

俺が見ている方向を仮に北だとすると、東に勝ち組、西に負け組だ。俺のいる丘の下の原っぱで戦闘が行われている。

俺のちょうど正面辺りで足軽同士はぶつかっていた。鉄砲で撃ち合う段階は終わった後なんだろう。まあ、いまは撃ち合おうにも負け組は押されまくっているからな。

お互い百人位の規模って感じで、いわゆる小競り合いってやつだろうか?


いつ帰れるか分からんけど、もっとでかい合戦もみてみたいなあ、なんて考えていると、丘の麓、要するに俺の足元の茂みが急に動き出したのだ。

二十人ほど、鉄砲を持っている。


 動き出した鉄砲の集団は、追いまくっている勝ち組に向けて発砲している。斜め後ろからいきなり撃たれた勝ち組は大混乱していた。既に鉄砲の集団達は第二射の準備をしている。

この時代の銃は単発で、しかも銃口から弾を込める前装式という方式の銃だ。それにしてはやたら装填の動作が速い。多分、早合といわれる弾と火薬を一緒にして紙に包んでまとめたものを使っているのだろう。もう第三射目の装填中だ。

鉄砲集団の応援で、追いまくられていた負け組は息を吹き返していた。勝ちと負けが逆転している。

今まで逃げていた方が今度は逆に相手をを追い散らしている。

…すごい。本当にすごい。

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