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6話

ちょっとした尺度の説明です。

次回、開戦です!

では、どうぞ

 任務が下されるまでの期間に整えられた武器と防具、そして己の体。また、まだまだ数も少ない部隊ゆえにすべての人員にナフィやヴィーゼケルウス――緑色の体毛に覆われた鹿――が割り振られ、歩兵が存在しないため移動速度も異様に速い。

 そのため、すでに黒星砦前まで到達していた。

「では、門番に門を開けるよう、要請してまいります」

 もちろん、砦であるため頑丈な門によって守られている。今回の計画ではこの砦で一日休息をとったのち、強襲する予定である。

 そこで、光が率先して交渉をしているわけだが、なかなか帰ってこない。光の方を見ると何やら険しい表情をしている門番達が騒いでいる。


(やれやれ面倒だな)


 空はため息をつくと、光に近づく。交渉が難航している理由は予想できた。事前に部下に注意した通り、自分たちの事を良く思っていない者たちが多いのだろう。そして、この時期だ。新参者で猫族でない部隊を砦内に入れるのに不信感を抱いているのだろう。だが、彼としてはそんなものは知った事ではなかった。だから、多少強引にでも休息の場を提供していただこう・・・・・・・・・と思っていた。


「光、少し下がってろ」


 光の肩に触れ、下がるように伝える。

 門番達はより一層表情を険しくする。それは笑顔で柔らかい対応だった光とは打って変わり、冷たい視線を向ける空に対しては先ほどよりも態度が悪くなる。だが、その様子を見て空は口元にうすら笑いを浮かべた。


「なあ、こいつから用件を聞いてるだろ。大人しく言う事を聞いてくれないか?」


 光を指さしながら言うが、相手は素直に聞いてくれる気はないようだ。


「貴様らのような得体のしれない奴らをこの中に入れられるか! 休みたければ野宿でもするんだな」


 見下したように言うが、彼の笑みはますます深くなるばかりだ。


「そうか。なら仕方ない、な」


 最後の語尾には喜色が表れていたが、反対に門番達の顔色は青くなっていった。


「じゃあ、少しお願いをするとしようか」


「な、なにをするつもりだ。や、やめろーっ!」


 辺りに野太い声が響いた。


 ――閑話休題。







 数分後には砦にいた者は全て空の指示に従っていた。空が交渉していた時の様子だが、周りにいた者たちが震え上がったとだけ記しておく。ここでは全ての者と書いたが、全員と交渉をしたわけではなく効率よく上官らしき者たちと優先して交渉していった。その結果、部下にあたるものは皆間接的にではあるが空に従う事となった。


 そして、今現在は交渉中に偵察を行っていた七海を含めて机を囲んで作戦会議中である。


「では、七海さん報告を」

 光の促され、落ち着いた様子で答える。


「敵の規模は一万から一万五千。内訳は弓兵が三千、魔導兵が千、歩兵六千から八千、騎兵が三千から四千。また、これが本隊かとは思われますが、四方3㎞ほど離れた場所に600名ほどの大隊が布陣している模様です。そのため、本体を囮にしているかと」


 自分の考えを不安げに空を見上げながら言う。


「分かった。ご苦労だったな」


 七海の報告を聞き終えると、何かを考えるかのように顎に手を当て七海を労う。もちろん、七海がとても嬉しそうな表情をしていることは気づいていない。

 今、彼の頭の中では戦力とそこから考えて、可能な戦術を組み立てられていた。

 今一度確認するため光の方を向いて、問う。


「こちらの戦力と、今この場にいる全員の以前聞いた時と変わった点があればその報告を頼む」


「はっ、了解いたしました。ではまずこちらの戦力ですが、あまり思わしくありません。この部隊の総数は全七百二十三、内百二十三名を守備兵力として屋敷に残してきました。つまり、この時点で敵の大隊一つと同等の数しかありません」


 苦々しそうな表情で告げる。空以外の皆もその圧倒的な兵力差を感じ、辺りの雰囲気は暗い。


「そして、能力ですが私と飛来は熟練度が三十程度上昇し、他の主要メンバーは四十から六重ほど上がっています。ここに三國兄妹はいませんが、二人も含めて皆最低でも百五十は超えています」


 その報告に空は少し驚いた表情を見せる。


「ふむ、そうか。お前らよく頑張ったな。しかし、三國兄妹も連れてくるべきだったか?」


 そうこの場には三國兄妹はいない。屋敷に残してきたからだ。それを言い出したのは空であった。まだ、二人が幼い事、そして、万が一何かが起こった時のために実力者である二人を置いてきたのであった。


「まあいないものは仕方ない。ちなみに光この世界の平均的な兵士の熟練度はどの位なんだ?」


「? この世界ですか? ええと、一般的な兵士が六十から九十未満でしょうか。部隊長クラスが八十から百、旅団長が百から百十、師団長が百二十前後、国のトップクラスで百九十前後というところかと」


 何が言いたいのか、光も空も分かっているようで二人の口元には笑みが浮かんでいる。


「ふむ、つまり俺たちは数では負けているが質では勝っているというわけか。だが、この差はでかいな一人百人倒してもまだ全部倒しきることは出来ないか。さて、どうするか」


 そのように一人考え込む、もちろん、この場にいる全員が考えてはいるが空は周りの音が気にならなくなる位集中する。


(ここから考えると、殲滅は不可能。後は撤退に追い込む方法を考えるか。どれが有効か。あれでいくか)


「よし、決まった。よく聞け、これは命令だ。反論は許さない。絶対に従い守れ、だが、これに従う限りこの戦いは勝てるだろう。迷うことなく付いて来い!」


『はっ!』


 皆立ち上がり敬礼して答える。準の態度がここ一か月で皆にも伝播したようだった。

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