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1話

 国王、徳臣幸成との謁見から一週間。

 空の下に国王から遣いの者が送られ、正式な権限や義務が課せられていた。


 一つ目、有事の際には、国の求めに応じなければならない。


 これはつまり兵役義務の事である。


 二つ目、神谷空を独立部隊【零】の部隊長とし、空に部隊の指揮権、一定の兵の徴収権を与える。


 これはほぼ自由に寡兵する事が可能になったということ。しかし、この部隊の主な目的が他国の民を軍に受け入れるかどうかを判断することであるため、猫人の際はイヴェール・フォレの第一師団長、八生の許可が必要との事。


 三つ目、四大都市と王都に拠点を持つことを許可する。また、都市間の移動も許可する。


 これにより、移動の制限がなくなった。

 これだけの破格の条件が空に対する期待の大きさを示している。


(えらい力が入ってるな。まあ、流石に拠点まではくれなかったか)


 当の本人はいたって気楽に考えており、さらには拠点を与えられなかった事を惜しんでいた。権限を頂いた上に物も与えてもらえるほど上手くはいかなかった。


 そして、現在。彼ら【零】は実質イヴェール・フォレの自警団と化していた。

 王都では空たちに対する信頼度が上がる事はなく、そのためイヴェール・フォレで発生する様々な問題に対応、解決して過ごしていた。

 この都市での拠点は以前八生に与えられた屋敷である。もっとも、部隊の人数が少ない今だからこそ、ここで間に合っているのだろう。彼は仲間たちがこの屋敷に世話になりだしてから、どうせならという事でここに元々仕えていた使用人たちを部隊員としてまとめて雇っていた。

 屋敷を利用する者が多くなったおかげで以前より騒がしさが増しているが悪くないと思い始めていた。

「さて、今日も稼がないとな」

 そこで問題となるのは資金である。

 給料として王国から一定の金額が支給されているものの新たに使用人たちを雇い入れ100人規模の部隊を養うにはいささか心もとない。そのため、別途で金を稼ぐ事が必要となった。

 その手段の一つとして、【零】に依頼される仕事の報酬。魔物を狩り、剥ぎ取った素材を売る事。これらを修行として行いつつ効率よく稼いでいた。だが、彼らの場合、実力のあるものが多いために狩る量が普通では考えられない量になっていたため、収入のほとんどが剥ぎ取りによるところが大部分を占めるようになっていた。


 彼はと言うと、いつも依頼は仲間に押し付けて、剥ぎ取りの稼ぎと称した修行を行うのがここ最近の日課である。だが、たまに来る賞金首の討伐の依頼や、緊急性が高く重要な物は彼自身も参加していた。逆を言えばそれ以外は七海たちに任せていた。そのせいで押しつけられる側は自分たちのトップに早く追いつくための修業時間をとるには隊の中で班編成をしてローテーションを組んで行う事を強いられていた。


 まず、飛来を長とした以前率いていた傭兵団の7名の班。次に七海を長とした使用人の中で特に戦闘に対して適正のある者10名の班。そして、光を長とした來未や魔導師たちといった魔法への適性が高い者を集めた班。このように準や、小太郎も自分たちの得意分野を活かした班編成をしていた。流石に、翔と來未は幼すぎるため、他の班の一員として技量を磨くという事が本人たちに確認を取った上で振り分けられていた。とは言え、素直に自分の至らなさを認め、指示に従い、さらには決して鍛錬を怠らない二人は遠くない未来に大任を任されるだろう。

 そして、今日の空は珍しく依頼を受け、それの調査を行っていた。最近、王都や四大都市周辺の狩場――修行の場――で人間が命を落とすことが事件が多発していた。


 ここでこの世界での死亡率について説明しておこう。今は真猫帝国との戦争中であるため、戦死がそれをかめている。もっとも現在は膠着状態にあるため、その数は落ち着いてはいるが。だが、これに関しては兵士、つまり、戦を生業とする者たちが命を落とすのであって、志願したり徴収されない限り一般人には関係ないのである。

 では、その一般人は何で命を落とすのか?

 それは、その者が就く職業にもよるが、全般的に共通するのが病死や餓死、栄養不足による短命、寿命など。そして、商売をしたり、物を運んだりとする場合に道中、賊や魔物に襲われたりと彼の元いた世界、少なくとも現代の日本と比べると死は身近なものなのである。


 この事から命を落とすのは珍しいことではない、ではなぜ彼が動くほどのことに発展しているのか? それはいくつか不思議な点があることと彼の個人的な理由からである。

 まず、その不思議な点とは?


「今回もこんな森の奥地で見つかりますか……」

 依頼に付いて来ていた自分の班を率いる光が不思議そうに顎に手を当てながら言った。

 そう遺体の見つかる場所が第一の疑問。

 ここは以前空が森の主を倒したグランケルドの森。大木が立ち並ぶ中、魔物に殺されたと見える若い男。体の一部が食われている。若い男だと分かるだけ原形が保たれているだけこの男は幸運なのだろう。もうすでに息はないが。

 そして第二の疑問がこの一連の事件で発見される遺体の出で立ちである。

 多発する事件の遺体の共通点は皆猫耳や犬耳が付いていないため、このあたりでは珍しい和の民か、鷹の民なのだろう。これだけでも十分奇異な事なのだが、服装がこの世界では見かけることのない物であった。

 だが、空だけは最初に発見された遺体を見たときに気づいた、気づいてしまった。


 最初の男は彼の元いた世界でよく見かけたスーツを着ていた。次は学生服を着た男女。次々と上がる遺体を見るうちに彼は一つの推論を立てた。これは先の戦いで学生服を着た男と戦ったことが大きいのだが、それは……この遺体たちは彼の元いた世界の住人ではないかという事である。

 この奥地にいるのに武器も何も持っていないこともその手助けをした。おそらく彼らは自分と同じく扉を通ってきたが運悪くここに出て魔物に襲われたという事だろう。これが彼自ら動こうという気にさせた理由であった。

 だが、一方でこの一連の事件がそのような真相だとは彼以外気付くことは出来なかった。さらに彼自身もこいつらは運が悪かっただけと淡泊に受け止めており、真相を話しても信じてもらえないだろうと早々に結論付け仲間たちには一般人が不用意に危険な場所に近づかないよう喚起するように指示し、彼自身は八生と会って、同じことを他の都市の騎士団や警備の者たちに警戒するように伝えることを頼んだ。

 このようにして彼は今回の件の不自然さにこの世界の者たちが慣れるまで、放置するという方針を取っていた。

 そうこうするうちに次第に遺体が発見されたという報告も少なくなっていった。これについてはあちらの世界で政府が何かしらの方策を取ったのだと考えていた。


 それから数週間、彼は常に修練を行い続けた。新しく就いた職の力にも慣れ、自らの技量も高まり、【刺突】等の技能を使いこなすようになっていた。








 ◆◆◆


 現在、神谷空のステータス。


 神谷空 二十歳 鬼神 熟練度、二百八十四 生命力、二千六十一 精神力、二千三百三 魔力、二千百九十四

 【状態異常無効】【身体強化術・極】【神刀術強化】【生与術】【魔強化・強】【成長促進】【人刀一体】【瞬突】【剣舞】【五連斬】【一閃】【十字斬り】【飛斬】【刀技強化】【闇属性魔法強化】【威圧・極】【黒魔道無唱可】【見切り・極】【邪耐性】【魅了・強】




 ◆◆◆




 使える技能も増やし、更に強化し、補正値もさらに上げていた。だが、魔物を何千という数を討伐しているのに、熟練度がおよそ三十しか上がらないところを見ると、いくら【成長促進】があると言っても熟練度が上がりにくくなっているのだろう。だが、熟練度以外の部分が恐ろしく上昇しているため、嘆く必要はないだろう。

 そして、実力に身あるだけの威圧感、風格も身に着け、このイヴェール・フォレでは知らぬものなどいない人物になっていた。さらには巷では『黒の貴公子』や『黒鬼』など二つ名が囁かれるようになり、王猫国最強の人物の一人として数えられる存在になっていった。


順調に空のチート化が進行しております。

天才の彼は一体どこまで成長するのか。

一緒に見届けていただけると嬉しいです。

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