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14話

 空が少年と少女と闘っている頃、光たちは飛来たちと合流していた。

「おい、どうした? そんなに急いで。しかもお前らボロボロじゃねえか。何かあったのか?」

 飛来が驚いたように二人に問うが、二人は俯いて答えない。

「おいおいだんまりかよ。お前らの持ち場はどうしたんだよ?」

 呆れたように呟く。七海が涙を浮かべ、やっと答えた。

「ご主人様が……」

 その一言を聞くと、飛来は顔を強張らせた。


(騎士殿!? 騎士殿が一人残った、って事か?! まずい、いくら騎士殿が強いといっても二人が戻って来たという事は、この二人でも太刀打ちできなかったという事。七海の嬢ちゃんはともかく、光がやれる程となると。かなりの覚悟が必要だな。仕方ない……)


 頭の中でこれからの事を組み立てると、後ろに控える仲間たちに向かって指示を出す。


「三國兄妹、小太郎、俺に付いて来い! 俺たちは騎士殿の下に向かうぞ。光、七海、準はここで己の役目を果たせ!」


『はっ!!』


 敬礼し、飛来の指示を了承すると、指示で足りない部分を各々で考え補う。


「行くぞ!」







 彼らは砦と思われる場所にやってきていた。もちろん、それは作戦会議で見た地図に載っていたため、なんとなくそれと照らし合わせてきたのだが、それは既に原形をとどめていなかった。この時は光が魔法を使い砦内の敵をほぼ殲滅した後だったからである。

 城門は破壊され、辺りには霜が降っていた。白銀の世界、まだまだ暖かいこの季節には本来見ることのできないものが存在していた。

「すげえな。これは、光がやったのか? しかし、これでも倒せなかった敵となると相当だな。お前ら気を抜くなよ」

 腰の剣を抜き、いつ何時襲いかかられてもいいように構える。

 地面を踏みしめる度に凍った草花を踏みシャリシャリと音が鳴る。

 一歩一歩慎重に進めて行くと唐突に地面が揺れる。

「何だ? まさか……騎士殿!? 急ぐぞ」


 彼らが目的地に到着すると先程までの銀世界が一変し、漆黒の世界に広がる。

 そこで唯一動くのが彼らが主、神谷空であった。

 彼は彼らに振り向きもせず言う。

「アンタらが来たという事は何かあったのか?」

 心配してきたと言うのに逆に心配されるとは拍子抜けしてしまう。

「何かあったのかじゃねえよ。心配して損したぜ」

「心配? 何をだ?」

 キョトンとした調子で言う。

「はぁ、いや何でもない」

「そうか、そっちはどうだ? 終わったのか?」

「あ、いやまだだ。準たちに任せてこっち来ちまったからな」

「そうか、ならこっちはもう終わった。すぐに戻れ、俺もすぐに行く」

「ああ、わかった」







 飛来たちが去ると空は一人空を見上げていた。

「……」

 空には星が輝き、その空の下で彼は血を流し戦う。


(人間は愚かだ。さっさと逃げればここで死ぬことはなかったのに。本当に愚かだ……)


 彼は暫し少年と少女のいた場所を見つめると、瞳を閉じて黙礼すると立ち去った。







 結局彼が到着するのと、スピードの差により飛来たちが戦場に戻るのは同じになった。

 そして、すぐに彼は仲間たちに指示を出す。疲労の色が濃い光たちはさりげなく後ろに下がらせ、彼自ら前に出て、敵を屠る。

 戦意のある者、ない者関係なく葬っていった。すべての敵がいなくなる頃、彼は全身を血で染め上げ、両目は紅く輝いていた。

「これで終わりか……」

 そう呟いたのはちょうど最後の生き残りに鎌を突き立てるところ。

「意外と容赦ねえのな」

「ああ、後で何かあってからでは遅い」

 努めて、冷静に非情に告げる。飛来にはその姿が無理しているようにしか見えなかった。

 彼は鎌を引き抜くとこの戦いの終結を宣言した。


「帰るぞ」


 その一言に皆ぞろぞろと立ち上がる。

 彼に連なるは武器を、その両手を血で染め上げ、鬼の様に働いた戦士たち。

 だが、それでも自らの王と肩を並べるほど命を刈り取った者はいない。

 彼はまた一人この位どうってことないというように歩く。

 彼の顔に付いた血が流れ落ち、泣いているように見えた。





「ご主人様……」

 後ろでその様子を見ていた七海が空に話しかけようとするが飛来に肩を掴まれ止められる。

 光も力なく頭を振っている。

「やめとけ。今の俺らじゃあの人の隣に立つことは出来ねえ。それが出来んのはもっと強くなって同じ痛みが分かるようになってからだろうよ」

 飛来の言葉に七海はしゅんとなり、止まる。

「私に出来るのでしょうか?」

 その弱気な言葉を聞いて飛来は笑みを浮かべ答えた。

「あんたなら出来るさ。その意思がある限りきっとな」

 彼女の頭をくしゃくしゃと撫で、その泣きそうな顔を隠した。


 彼らは流れる星にさらなる力を願った。



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