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プロローグ~真夜中の革新~

 あたりは暗く闇に染まる。しかしそこは都会の街灯やら車のライトやらで明るく騒がしい。


 その様子を上から見下ろす青年が一人。


 黒いY―シャツに黒のジーパンを履き、全身黒に身を包み喧騒とは離れ、闇に溶け込んでいる。その顔は月明かりによってのみ照らされ浮かび上がる。


 誰もが振り返ってしまうような美貌の持ち主である。だがその眼つきの鋭さが近寄りがたい雰囲気を醸し出す。


「いつも騒がしいな」

 青年はそっとつぶやく。声からは嘲り、憎しみのようなものも感じられるがその表情からは窺うことはできない。




 青年はあるマンションの屋上に立っている。いつからかここに来ることが日課になってしまった。

 毎日ここにきては飛び降りようとするが決心がつかず、立ちすくんでしまう。


「俺は怖いのか」 

 独白し、自嘲気味に笑う。


「かもしれないな……」

 自問自答する。だが答えは見つからない。

 青年は嘆いていた。


 この世界はつまらない、と。


 そこに突風が吹きつけ青年の体を壁際まで押し出す。


「今が死にどきなのか」

 静かに呟き、壁に手をかける。


 ここから飛び下りればまず助からないだろう。

 だが青年は思う。ここで生きて何が楽しいのか、と。


 一呼吸し見下ろす。通行人も多く、交通量も多い。

「アンタらはどんな反応をするのだろうな。せいぜい楽しませてくれ」


 見る者をぞっとさせるような笑みを浮かべ告げる。助かる保証はないのになぜ死後の事を言うのだろうか? それは青年しか理解することができない闇である。


 一歩また一歩と歩を進め、ついに落ちる寸前というところの到達する。体を傾け落ちる体勢になった時に再び風が吹く。先程より強い風で痩身の彼はいとも簡単に元の屋上に引きずり落とされる。


 不思議なことに彼が毎晩しようとすると、このような事が起こりなかなか死ねずにいる。だが彼にとってそれは生き地獄でしかない。


「俺には神様、いや死神でも憑いてるのか……」

 やはりその呟きに答える者はいない。聞こえるのは風の音のみ。

 興がそがれ部屋に戻ろうとする彼。しかしそこの先程までなかった扉があった。


「面白い」


 その声は歓喜に満ちていた。迷わず扉に手をかけ、開け放つ。

 そこから見える光景は見たこともないもので、


 彼が待ち望んでいた〈異常〉であった。


 

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