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家の中に、入ってはいけない部屋がある

作者: あお〜い
掲載日:2025/12/15

この家には、入ってはいけない部屋がある。

 正確に言えば、「入ってはいけない」と言われた覚えはない。

 不動産屋は鍵を渡すとき、何でもない雑談のように言った。

「間取りは、気にしないでくださいね」

 それがどういう意味なのか、引っ越してから何度も考えることになる。

 玄関、リビング、寝室、風呂、トイレ。

 ここまではいい。

 問題は、その先だった。

 夜、布団に入ってから数えると、六部屋ある。

 朝、コーヒーを飲みながら数えると、五部屋になる。

 どちらが正しいのか、確かめようとすると、

 いつも途中で数がわからなくなる。

 廊下の突き当たりに、扉がある。

 白くて、取っ手も普通で、鍵もかかっていない。

 なのに、そこを「一部屋」として数えようとすると、

 なぜか視線が逸れる。

 無意識に、数を飛ばしてしまう。

 最初におかしいと思ったのは、友人を呼んだ日だった。

「いい家だね。で、部屋は五つ?」

「……六つじゃないか?」

 そう言った瞬間、友人は黙った。

 しばらくして、首をかしげながら言う。

「いや、五つだな。今、何か言おうとした気がするけど」

 その夜、廊下の突き当たりに立った。

 扉は、そこにあった。

 逃げ出したくなるほど怖いわけでもない。

 開けたら何かが出てくる気配もない。

 ただ、強く思った。

 ――ここを部屋だと認識したら、

 何かが「完成してしまう」。

 取っ手に触れた瞬間、背中に冷たい感覚が走った。

 そして、はっきりと理解した。

 この部屋は、

 誰かが入ったあとに、部屋になる。

 鍵は、内側から掛かっていた。

引っ越しから一年が経った。

 今では、この家は四部屋しかない。

 そう思うことにしている。

 廊下の突き当たりには、壁がある。

 少なくとも、そう見える。

 たまに、知らない鍵が机の上に置かれていることがあるが、

 拾った覚えはない。

 数えるのを、やめただけだ。

 それで、十分だ。

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