1-1 小学生の記憶
僕も大悟も2年生になり、年下の子たちと手を繋ぐことになった。2年生になっても大悟とはクラスが一緒だった。
「今日大悟休みなんだってー。」
「隼人寂しいんじゃない?」
「寂しいよ。大悟に逢いたい。」
「僕がいるじゃん。」
「理玖と一緒でもなー。」
「何それ!」
そう言いながら理玖が笑う。僕も笑っていると担任の葉月先生が入ってきた。
「みんな席に着いてー。出席取るよ。」
「今日は大悟くんは風邪でお休みです。隼人くん、連絡帳とプリントを帰りに持っていってあげてね。」
「はーい!」
1時間目は算数。大悟は僕の斜め前に座っているので、いつもは分からない問題の答えを教えてもらえるのだけれど、今日は休みなのでそれをする事が出来ない。僕は当たらないことを祈りつつ、教科書を眺めていた。チャイムが鳴る。当てられなかったことに安堵しながら、次の時間の体育に向けて体育着に着替えた。
「隼人、今日はペア組むよ。」
理玖である。今日の体育は僕の得意なサッカーだ。理玖はサッカーが苦手なので、得意な僕と組むことで、何かしらの恩恵を受けるんだろう。多分。
あれよあれよと授業は終わり、あっという間に帰りの時間となった。今日は拓郎もいないので、帰る方向が一緒な理玖と一緒に帰ることにした。
「理玖、帰るよ。」
「あっ、待ってよー!大悟の連絡帳持ってないでしょ?」
「あ、そうだった。職員室行かなくちゃ。」
職員室。先生は机に向かって今日の国語の時間にやった漢字テストの採点をしていた。声を掛けると、「あぁ」と一言だけ発した後、僕と理玖に向かい合う。
「大悟くんの連絡帳ね。あと今日配ったプリントも全部入ってるから大悟くんに渡すんだよ。」
「はーい。」
「先生、彼氏いるの?」
「理玖くん、そういうプライベートな事聞かないの。いるよ。」
「いるんですか!?」
何故か隣の中島先生が立ち上がった。理玖が笑っている。
「いますよ、彼氏くらい。」
「いるんだ…知らなかった…。」
「とりあえずこれ届けてね。気をつけて帰るんだよ。」
「はーい。」
連絡帳類を自分のランドセルに入れ、職員室を出る。校庭では、拓郎たちがサッカーをしていた。
「おーい、隼人ー、理玖ー、サッカーやらねぇ?」
僕と理玖の姿を見かけて、拓郎が大きな声で僕たちを呼ぶ。
「今日は帰るー!明日ねー!」
理玖がそう叫んで校門を出る。僕も理玖を追いかけていった。
「今日の給食の杏仁豆腐美味しかったねぇ。」
「隼人、杏仁豆腐好きだもんね。」
「大悟の分まで貰えたしね。ラッキー。」
僕と大悟と理玖の家は大きな橋を超えたところにある。僕より小さい、多分1年生が橋をふざけあいながら渡っている。
「危ないねぇ。」
「走る?」
「走らない。人がいっぱいいるところでは走らないって言われてるしね。」
「そうだね。ゆっくり帰ろう。」
理玖と大悟は、何処か僕と波長が合う。逆に拓郎や雄飛たちは、今でいう「陽キャ」なのでたまに話してて疲れてしまうことがある。
「そういえばCD買ったんでしょ。どうだった?」
「良かったよ。すごくうるさいんだけどね。」
「うるさいんだ。今度貸してよ。」
「大悟の家行ったらうち来る?今日はお父さんもお母さんもいないけど。」
「行く!」
そんな事を話していると、大悟の住むマンションに着いた。オートロックなので、入り口で部屋の番号を押して呼び出さなきゃいけないのだが。
「あれ、大悟んちって何号室だっけ?」
「何号室だっけ…。ポスト見て見れば分かるんじゃないかな。」
2人して郵便受を見に行く。1105室が大悟の家だった。
「いつも裏口から入るから分からないよね。」
「そうだね。あ、隼人でーす!大悟くんにプリント持ってきました!」
「はーい。入ってー!」
玄関先に出てきたのは大悟のお母さんだった。今日は仕事が休みだったらしい。
「これ、連絡帳とプリントです。大悟大丈夫ですか?」
「うん、だいぶ熱も下がってきたから明日には学校に行けると思うよ。上がってく?…って言っても風邪うつしちゃったら大変か。明日会えるのを楽しみにしててね。」
そう言って大悟のお母さんが僕と理玖の頭を撫でる。いつもそうだ。僕の頭が撫で心地がいいらしい。よく分からないけれど。
「じゃあまた明日ね!」
「ありがとうねー!」
マンションを出る。まだまだ空は明るかった。
「じゃあうち行こうか。」
「うん!楽しみ!」
僕の家は12階建の6階にある。エレベーターで6階に登り、降りてすぐ右に曲がったところに僕の家がある。
「ただいまー。」
「お邪魔しまーす。」
「あら、隼人おかえり。理玖くんも一緒なんだ。」
「あれ?お母さん今日は仕事じゃなかったの?」
「今日は午前中だけだよ。さ、理玖くん上がって。今ジュースでも持っていくね。」
「ありがとうございまーす!」
僕の部屋に入り、まずは今日の宿題を片付ける。僕は国語と社会。理玖は算数と理科を終わらせて、お互いに見せ合った。いつものパターンである。
「あー、ここ分かんないや。理玖これわかる?」
「えっと、ここをこうすれば…」
「なるほどー。流石算数得意な理玖。」
「それほどでも無いよ。隼人だって字きれいじゃん。」
「そうでしょ!もっと褒めて!」
「図に乗らない。」
僕の頭にチョップを落とす。お母さんが部屋に入ってきた。
「はい、ジュースとお菓子。あら、先に宿題終わらせてるんだ。珍しい。」
「いつも違うの?」
「いつもは先に遊びに行ったりするからね。」
「宿題なんて写せばいい…痛っ」
「自分の力でやるの。それが普通よ。」
そう言いながら母は出て行った。そんなに頭叩かなくても。




