69 ヴァーシル家のルナリアーナ
シロナとレベッカには、城下町の住人がセレーヌ城の門を通った時点で、一人一人のデータを取得するよう指示していた。
シロナは結婚式が始まると同時に、表に出て、プログラムに強そうな魔法少女の注意をひきつけるようにしていた。
レベッカには裏でセレーヌ城の住人で絞り込めるコマンドを作成してもらっていた。
『想定より時間がかかってしまいました』
「ちょうどいいよ。俺もコードで引っ掛かってたから」
シロナはアンドロイド、レベッカも元々ゲームのキャラだ。
セレーヌ王国の住人について調べるのに、時間がかからなかった。
「如月カイトの分際で、みんな! あいつを殺せ!」
海道が冷汗を浮かべながら叫ぶ。
ゴォオオオオオオオオオオ
「!!!!!」
青い炎がセレーヌ城の住人を焼き尽くしていく。
『エラー、エラー』
『稼働不可、稼働不可、停止』
一斉に同じようなことを呟いて、光の粒になっていった。
シロナが顔をしかめる。
『彼らはAIとして独立して生活することもできました。セレーヌ城で自由に過ごせたんです。なのに、こんな扱い、ひどいです』
淡々としながらクルミを睨みつける。
「だって、AIは人間じゃない。魔法少女でもない。利用しない手はないでしょ」
クルミが当然のことのように言い返していた。
『利用って・・・その言葉嫌いです』
「でも、こうやって一気に消滅させられるリスクもある。勉強になった」
「海道様、あとは私たちだけでも大丈夫かと」
フィオーレと戦って、怪我を負っている魔法少女が腕の傷を癒しながら言う。
「どうか先に逃げてください」
「こっちの魔法少女だって13人います。負けませんから」
「・・・・・」
炎の中から魔法少女が数人出てきた。
「ありがとう。でも君たちの主としてかっこいいところ見せなきゃね」
「13人、全員、その男と契約してるの?」
隣に降りてきたリルムが、海道を指さす。
「まぁね。主として契約するのに上限が無いみたいだから。できる限りやったよ」
「・・・・・」
「・・・・・」
魔法少女と戦士たちが顔を見合わせる。
自分の魔力がどれくらいかわかっていないのか?
「13人の魔法少女と契約する、海道様はすごいってことだ!」
「メルが自慢しても意味ない」
「でも、本当のことですわ。海道様は力があります。特別な存在です」
魔法少女たちが、海道の周りを囲みながら武器を構えていた。
「まぁまぁ、俺はこいつと違って、もてはやされるのは苦手なんだよ」
海道が余裕の笑みを浮かべながら言う。
「じゃあ・・・」
「魔法少女戦争って、魔力で戦うの」
ルナリアーナが唐突に、言葉を遮った。
剣を杖に変えて、歩いてくる。
「まだ、私たちが生まれていない、はるか昔に、決まったルールなんだって。主の魔力によって、契約できる人数が決まる。カイト様の魔力なら100人くらい余裕だけど、私は別の人と契約した」
「ルナリアーナ」
長いまつげを下に向ける。
「は?」
「私は元々魔女の家系だったから魔法少女について、少しは詳しいの。それでね、魔法少女戦争だって割り切ってたし、仲間は死ぬのは辛いし悲しいけど、受け止めきれた。でも・・・・」
両手を広げて、黒い魔法陣を展開する。
「カイト様を侮辱するのだけは許さない!」
赤いピアスが煌めいた。
短い髪が揺れる。
― 冥界門強制開門 ―
ルナリアーナが両手を広げて唱える。
ウォォオオオオ
― 封封封 ―
メルが必死に唱えていたが、何も起こらない。
キィアアアアア
魔法陣の中から、黒い影の人影が現れた。
瞳は赤く光り、長い髪を持つ女のように見える。
悲鳴のような声を上げていた。
「誰だ? 魔神じゃないな」
『贄だよ。おそらく魔女裁判で断罪された者』
カマエルが声をかけてくる。
「どおりで魔力が重いな。贄か・・・恨みも深いだろう」
『まさか、七陣魔導団ゲヘナに魔女の家系の者がいたとはね』
腕を組んで、ルナリアーナの様子を見つめていた。
『XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX』
黒い女が何かを話している。
「そう。この子たちを全員殺して」
『XXXXXXXXXXXXXXX』
「うん。私のことは心配しないで。大丈夫だから」
ルナリアーナは見たことのない表情をしていた。
「な、何よ。海道様、ここから脱出する方法はありますよね・・・?」
「何も・・・無い。俺たちは・・・・今から死ぬ」
「え・・・・・」
「死ぬんだ・・・・」
絶望的な表情で、息を詰まらせながら声を絞り出していた。
「やって」
ルナリアーナが杖を向ける。
いやああぁぁああああああ
女が13人の魔法少女の目の前を通ると、生気が吸い取られていく。
すぐに光の粒となり、消えていった。
「うわ・・・・・・」
「残りはあんたね。カイト様を侮辱した罪、ただではころしたくないの。ねぇ、XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXしてくれる?」
ルナリアーナが海道の目の前に立つ。
「何してって言ったかわからないよね? まず皮を剥いで、四肢をゆっくり引きちぎってって言ったの。それからね・・・あとは内緒」
「た、助けてくれ。きさら・・・」
海道は震えて、何も動けなかった。
『XXXXXXXXXXXX』
「ぐっ・・・・」
体勢を低くして、一気に剣を海道の胸に刺した。
「・・・・!」
海道がこちらを見て、驚いたような表情のまま消えていく。
「終わったな」
「え、カイト様・・・・あの・・・」
正気を取り戻したルナリアーナが頬に手を当てる。
「拷問なんかルナリアーナに合わない」
「・・・・・・」
ルナリアーナが何かを言いかけて、俯く。
「これで結婚式終了だ。みんなよくやってくれた。怪我人の手当てをしてやってくれ」
「は・・・はい!」
魔法少女と戦士たちが慌ただしく動き出す。
「あの・・・カイト様」
ガルムとルーシィが手を繋いで駆け寄ってくる。
2人も掠り傷一つなかった。
「怪我はないみたいだな」
「はい! ガルムと戦えることが幸せで」
「夫婦って実感はないのですが」
「殺伐とした結婚式になってごめんな。いつか、魔法少女戦争が無くなって戦う必要なくなったら、また改めて結婚式に呼んでくれ」
頭を搔いた。
ルーシィがふふっと幸せそうに笑う。
「とても素敵な結婚式でした。こんな結婚式、後にも先にも私たちにしか経験できない。ね、ガルム」
「まぁ、変わり者同士の結婚式なので」
「ルーシィ! ブーケトスだけでもやろうよ」
ティナとフィオーレが大きな花束を持って、ルーシィに声をかけていた。
「ここには魔法少女がたくさんいる」
「ねぇねぇ、ブーケトスって何?」
「花嫁さんが投げたブーケをね・・・・」
魔法少女と戦士たちの華やかな声が響いていた。
聖堂の瓦礫に光が差し込んでいく。
「わ・・・私・・・・」
シュンッ
ルナリアーナが杖を消すと、真っ黒の人型の女が消えていた。
『魔女の家系、純潔の血を引くヴァーシル家の者だね?』
カマエルがルナリアーナに近づく。
「ごめんなさい・・・黙っているつもりは無かったのですが、魔女は代々息をひそめて生きていかなければいけなかったので。私が召喚した者は、数百年前魔女裁判で殺されたルーナという者です」
「そうか」
「ごめんなさい! ヴァーシル家のこと、カイト様には話さなきゃって思ってたのですが・・・呪われた家系と言われているので、なかなか言えず・・・」
「いや、別に全てを聞き出すつもりはないって。ルナリアーナはルナリアーナだ。ありがとな。さっきから魔力がブレているだろ。今はゆっくり、休んでくれ」
「・・・・はい。ありがとうございます」
ルナリアーナが胸につけた赤い宝玉を握り締めて、頭を下げる。
盛り上がっている魔法少女のほうへ走っていった。
『今回の七陣魔導団ゲヘナは粒ぞろいだね』
カマエルが笑いながらリンゴを齧っていた。
『ヴァーシル家ってまだ魔法少女出してたんだ。そっちにも驚いたよ』
「そうだな」
体を伸ばして、扉のほうを歩いていく。
「せーの」
パサッ
魔法少女たちの声に、振り返ると、高らかに投げたブーケが美憂の手に渡っていた。
照れ笑いする美憂に、ティナが何か話しかけている。
ファナがほっとしたように、表情を緩めていた。
戦闘があったとは思えないほど、和やかな空気が流れていた。




