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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第五章 『RAID6』へようこそ

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67 300年ぶりの結婚式④

「本当に私がやっていいのかな?」

「いいの! リサは幼い頃からの親友だもの」


「じゃあ・・・・・・」

 ルーシィと仲が良い魔法少女リサが、聖堂の扉の前でベールダウンを行っていた。


「ルーシィ・・・」

 光が差し込み、ベールを脱いだルーシィの晴れやかな姿が見えた。

 ラインハルトがさりげなくリサをエスコートする。


「すごく、すごく綺麗だね。きっと・・・・」

 リサが言葉を詰まらせる。


「ありがとう。リサ、これからもよろしくね」

「もちろんだよ。ガルム、ルーシィをよろしくね」

「あぁ。任せてくれ」

 リサが感極まって、泣きながら下がっていた。


 ルーシィは涙を少し上を向いてこらえているように見える。


「新郎新婦、入場です!」


 ファンファーレが鳴り響く。


 賢者の声と共に、ガルムとルーシィが聖堂に入って来た。

 

 ワアァァア


 パチパチパチパチ


 魔法少女と戦士たちが、立ち上がって拍手をしていた。

 城下町の者たちもひしめき合うように聖堂の中に入って来ている。


 楽器隊が美しい音楽を奏でていた。


 2人が赤いカーペットを一歩歩くごとに、魔法少女たちが花びらを散らす。

 ルーシィが嬉しそうに手を振った。


 祭壇の前で2人が来るのを待っていた。


『カイト』

「あぁ、わかってる」

 カマエルが近づいてきて、耳打ちしてくる。


「動きがあるな」

『結婚式は通常通り進めるよ。できれば、誓いの言葉まではおとなしくしててもらいたいね』

「まぁな・・・・」


 参列者の中には、こそこそ連絡を取り合っているような城下町の住人がいる。

 どこかに魔法少女が紛れているらしい。


 ファナが2階からステルス性の矢を構えているのが見えた。

 ティナとラインハルトが門の前にいながら、周囲を見渡している。


 ~ン


 バイオリンの音が鳴り終わった。


「新郎ガルム、新婦ルーシィ、前へ」

「は、はい!」

 緊張していたが、怖がらなくていいと小声でカマエルが言う。

 魔神の繋がる七芒星の魔法陣が蒼く光った。


「!!」

「驚かなくていい。手は打ってる。今は、結婚式を進めるぞ」

 口だけ動かした。


 音楽は、思った通り眠くなる効果を含んでいるようだった。


 椅子にいる魔法少女、戦士たちには無効化の魔法を付与している。

 眠くなる演技をしろとは伝えていた。


 腐るほど読んだ聖書を広げて、定型文を読み上げる。


― 新郎ガルム=ザファイア あなたはここにいるルーシィ=ネレを

 病める時も 健やかなる時も

 富める時も 貧しき時も

 妻として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか? ―


「誓います」


 ガルムの声が透き通ったように響く。


― 新婦ルーシィ=ネレ あなたはここにいるガルム=ザファイアを

 病める時も 健やかなる時も

 富める時も 貧しき時も

 夫として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか? ― 


「はい。誓います」


「・・・2人に祝福を、カマエル」

『あぁ』

 ルーシィの表情が、リリスと重なる。


 カマエルが2人の傍に降りてきた。


『確かに、誓いを聞き届けた。魔神カマエルの名の元に、君たちが夫婦となることを認める』

「カマエル様・・・?」


 2人の頭に手をかざして、苦々しくほほ笑む。


『俺は魔神だ、壊すことが得意だが・・・魔法少女戦争だけは止められないんだ。もう、魔法少女戦争なんか無ければいいのにな。祈ってるよ。平和が訪れ、死が2人を分かつまで、共に幸せに暮らせることを・・・』


「・・・・・・・・」



 ドーン


 ― 闇無限盾ディーズ ―

 

 シュウウウウウウ


 聖書に手を置いたまま、片手で巨大な盾を展開した。

 聖堂の外からぶち込まれた大砲を、吸収する。


「きゃっ」

「ルーシィ、大丈夫か?」

「う、うん。ちょっとびっくりしただけ」


 ルーシィがティアラを取って、魔法少女の服に変えた。


「私たちも、戦闘態勢に」

「そうだな」

 ガルムが剣を抜いた。

 


「ふはははは、結婚式なんてのんきなことを。まぁ、その王とやらが私の魔法を弾いたのは驚いたけどな。お前のことは雑魚だと聞いていたからな」

 赤いフリルのついた服を着た魔法少女が、肩に大砲を担いで飛んでいた。


「・・・・・・」

 ルピスを出して、コードを刻んでいく。


「これから魔法少女メル様が七陣魔導団ゲヘナ全員を皆殺しにしてくれる!」


 聖堂にいた城下町の住人の身なりを解いて、魔法少女が飛び出してくる。


「メルは派手好きだからなぁ」

「クルミ、準備は?」

「OKだよ」

 4人の魔法少女が宙に浮いて話していた。

 一人がモニターを3台空中に出して、コードらしきものを呼んでいる。


「はい。解除。メル、いいよ」


「くくくく、馬鹿な奴らだ」

 メルという魔法少女が、聖堂で寝たふりをしている魔法少女と戦士を見ながら笑った。


『魔法少女様、指示を』

 道具屋の者、ケーキ屋の者、子供たち・・・。

 聖堂にいる城下町の住人が、ロボットのようにメルのほうを見上げた。


「手始めに、ここに居る魔法少女を全員殺せ」

 

 ジジジジ ジジジジジ


『承知しました』

『魔法少女様の命令に従います』

 聖堂で立っていたセレーヌ城の住人が、いつの間にか両手に武器を持っていた。

 老人・・・子供でさえ、剣を持っている。


 人工知能搭載のアンドロイドの機能を乗っ取ったか。

 

「いけ!」


 うおぉおぉぉぉおぉぉぉ



 メルが叫ぶと同時に、一斉に魔法少女、戦士たちに襲い掛かっていった。


 ― 祝福のアロー ―


 ザァァッ


 ファナがすかさず、シールド展開の矢を放つ。

 半径20メートル以内にいる仲間のステータスを底上げする矢だ。


 シュッ


 魔法少女と戦士たちが起き上がり、住民の攻撃をかわしていた。

 すぐに攻撃態勢に入る。


 待機していた空軍第4部隊が空から降下してくる。

 

「!?」

「まさか、今の寝たふり!?」

 飛んでいた魔法少女の一人が呟く。


「結婚式をぶち壊した罪は大きいからね!」

「覚悟しなさい!!」

 ノアが大剣を持って、飛んでいた魔法少女に襲い掛かっていった。

 フィオーレが反対側から炎に包まれた槍を回している。


 ― 毒泡姫シャボン


 アクアが祭壇の傍に来た住民たちに、死の毒の魔法を広げていった。 


『がはっ・・・』

 住民たちがその場に倒れていく。

 アクアの魔法には、対アンドロイド戦用のウイルスも含まれていた。


「やった」

 アクアが小さく呟く。


「あらま」

「クルミ、あいつら戻せる?」

「簡単なウイルスだから、多分除去可能」 

 モニターを3台広げた魔法少女がコードを読んで解析しようとしていた。


 すっとシロナが上を見上げる。


『コード解析なら負けませんので。全てブロックします』

 シロナが睨みつけながら、自分の周りにモニターを展開した。


「うわ、アンドロイドの魔法少女」

 クルミが顔をしかめる。


「クルミ大丈夫なの?」


「あんたの相手は私だから」

「わっと」

 フィオーレがクルミに話しかけていた魔法少女に槍を突き刺す。

 槍は避けていたが、炎に巻かれていた。


 ― 浄化クリア ―


 サアアァァァ


 冷たい風が、炎を鎮める。


「びっくりした」

「向こうがその気なら、こっちも勝負といきますか」

 クルミが飛んだままコードを流していた。


 パリンッ


 ガシャンッ


 魔法少女と住民との戦闘で、ステンドグラスが割れていった。

 聖堂の扉から、ゆったりと男が入ってくる影が見える。


「海道様」

 メルが突然、攻撃の手を緩める。


「みんなよくやってくれてるよ。続けていてくれ」

「はい!」

 メルがリルムの剣をかわしながら、嬉しそうに頷いた。


「海道・・・・」

 ガラスや椅子の散らばったカーペットを歩いていた。

 住民たちは戦闘しながら、海道が通る道を作っていた。


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

 俺の顔を見て、勝ち誇ったような顔をしていた。


『ん? カイトの知り合い?』

「あぁ」


『ふうん、じゃ、見学させてもらうよ』

 カマエルが軽く飛び上がった。



「如月カイト、久しぶりだな。あれ? 妹ちゃんも魔法少女になってたって聞いてたんだけど、死んじゃった?」

 耳にこびりつくような声だった。


「お前も契約したのか・・・?」

「そうだよ。俺は魔法少女の主となった。魔法少女戦争だなんて、こんな面白い世界があったんだな。3年間通してぶっちぎりの学年1位、全国模試にも載る俺に、相応しい世界だと思わないか?」


「・・・・・」


 海道がにやりとする。

 戦闘の最中、俺と海道の間だけ時間が止まったようだった。


 奴の名は、海道悟という。


 中学時代、加茂と同様、俺をいじめて楽しんでいた。


 いや、こいつが直接手を出すことはなかったか。


 成績優秀、文武両道、全てを兼ね備えたこいつを、誰も悪い奴だとは思わない。

 思いたくないだけだろう。


 いい人の皮を被った、穢い人間だ。


「如月カイトが、七陣魔導団ゲヘナの王? 面白いジョークだね」

 笑いながら、白い剣を出す。


 海道悟は、中学時代から裏で俺がいじめられるように仕組んでいた張本人だった。

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