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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第一章 魔法少女戦争のはじまり
8/27

6 伯爵の槍(グレンスター)

「本来、主と魔法少女はともに戦うんだよ」

 ナナキが近くの岩に座って、小石を投げながら言う。


「武器くらい持っていてもいいと思うんだけどなぁ。ま、リリスなら一人でやるか」

「知り合いか?」

「かなり古くからの付き合いだね」

 ナナキが小石を高く投げて、木々を揺らした。

 はらはらと葉が落ちてくる。


「ロンの槍をめぐる戦いは、そんなに簡単なものじゃない。魔法少女は1000人以上、いや、裏も含めれば3000人は軽くエントリーしている。魔法少女が選ぶ主も、強くなければいけない。同等かそれ以上に・・・」

「そ、そうなの? どうして私に言ってくれなかったの?」

「花音が興味を持つからだって」


「私なら強い魔法少女になれるのに」

「強いだけじゃ勝ち残れない」

「でも・・・・」

 花音がツインテールを触りながら膨れていた。


「どうして君はリリスと契約したんだ? ロンの槍に興味でもあるのか?」


「まさか。うちにはロストグリモワールという本があったんだ。読んでいたら急に燃えて無くなったけどな。だから、ロンの槍も魔法少女もなんとなく知っていた」

 風が吹いて木々がさらさらと揺れていた。


「ただ、妹の美憂を巻き込みたくなかった。深い理由は無い」

「・・・・なるほどねぇ」

 ナナキが少し驚いてから、足をぶらぶらさせる。


「本物だとすれば、ロストグリモワールがどうして君のところに?」

「さぁね」


「あれは・・・」



 きゃああぁぁぁぁ


「!?」

 突然、木々の音に交じって少女の悲鳴が聞こえた。

 花音がびくっとする。


「ほら、魔法少女ってそうゆうことだよ」

 ナナキが諭すように花音を見下ろした。


「なんかこの世界で魔法少女は勘違いされてるんだ。きらきらな衣装を着て、魔法を使って、みんなを救う正義の味方みたいな」

「だって・・・そうでしょ? 自分の信じる主をロンの槍に導くんだから」

「綺麗ごとばかりじゃない」

 ため息をつく。


「魔法少女が使う魔法は神から与えられた力、人間を越えた力だ。人間でいることはできなくなって、契約を交わした主が聖槍を手に入れるために戦う。魔法少女ってなんだろうって・・・」

 ナナキの目が暗くなっていく。


「ずっと思ってたんだ。答えは見つからない」


「私、本当になりたいの!」

 花音が真剣な表情で言う。


「Vtuberで有名になって、辛くて仕方がなかった人に光を与えられるようになりたい。魔法少女になるのは、誰かのためじゃなくて、自分のためなの」

「花音のことは知ってるし、心からそう思ってるのはわかってるけど」

「うんうん。だって、Vtuberも魔法少女も小さい頃から夢だもの」

 月が雲に隠れた。

 森がざわめく。


「でも、俺も花音が魔法少女になるのは反対だ」

「どうして?」


「花音がリリスと同じことができるとは思えない。これから起こることを見ろ」


「え・・・・」

 顔を上げる。


 おそらくリリスと契約したときから、俺の力も具現化できるようになっている。

 手に集中すると、魔力というのか得体のしれない力が溢れるのを感じた。


「リリス」


 リリスが空を飛んでいた。

 足元には魔法陣が描かれている。


 ― 伯爵のグレンスター


 ガガガガガガガガガ・・・


 うあああぁぁぁぁぁぁぁああああ


「っ・・・・・・」

「!!」

 木々の間を縫って、巨大な槍が現れた。

 先端には魔法少女たちが刺さっている。


 人形のようだった。


 串刺しになった魔法少女たちが、月明かりに照らされながら消えていった。

 魔法少女は遺体すら残らない。

 主たちらしき者の悲鳴が響いている。


「さすが・・・」

 ナナキが手を後ろについて感心してた。


「・・・・あ・・・あれが魔法少女・・・?」

 花音が口を押えて目を潤ませていた。


「・・・・みんな、死んじゃったの・・・・?」


 リリスが蝶のように飛んで、魔法少女たちが消えていく様子を確認していた。

 月の形をした杖の真ん中には、赤い宝玉がくるくる回っている。


「もう少しいると思ったんだけど、12人しかいなかった」

 茶色の髪をふわっとさせて降りてくる。


「わざわざ鍵を使って、バトルフィールドを展開しなくてもよかったかもね。100人くらいいればいいと思ったんだけど」

「か・・・悲しくないの?」


「ん?」

 花音が震えながらリリスに近づく。


「自分と同じ魔法少女を殺す・・・なんて」

「これはロンの槍を巡る戦争だもの」

 リリスがローブの裾を伸ばしながら息をついた。


 ― スコーピオン ―


 魔法少女が突然空から槍を持って突っ込んでくる。

 俺が手に魔力を溜めて剣を出そうとした瞬間、リリスが短く詠唱した。


 ― XXXXX ―


 ボウッ


「きゃぁああああ」

「ナコ!!!!」

 炎に包まれて消えていく。

 女が追いかけてきた。


「カイト、今、魔法を使おうとした?」

「してないって・・・」

「ん・・・怪しいなぁ。手から魔力を感じる」

 リリスが消えていく魔法少女を無視して、俺の手を掴んだ。


「ほら! 火属性の魔力」

「っ・・・・」

「私の目は誤魔化せないよ!」

 手を指で突きながら言う。


「カイトってば、やっぱり私に色々隠してる」

「お互い様だろ?」


「んー、まぁ、いいけど。私には隠し通せないんだから」

 少しツンとしていた。


「よくも、よくもナコを!!!」

「わ・・・」

 突然、20代くらいの女が、泣きはらした目でリリスの胸ぐらを掴んだ。


「ナコは私の親友だった! 出会ってから15年間もずっと、私のことをわかってくれた! そんなナコを、あんたは一瞬で・・・」

「魔法少女に入れ込むこと自体、間違ってるの」

 リリスが女の手を払いのける。


「魔法少女は攻撃を仕掛けてきた時点で敵。やらなければやられる。魔法少女が死んだんだから、貴女は部外者よ」


「・・・・お前の主を殺してやる!!」

 女が空中に双剣を出して、襲い掛かって来た。

 リリスがすぐに杖で止める。


「これだから新人魔法少女は嫌なのよね」


「!!」

 女が気を失ってその場に倒れた。

 

「彼女も、し、死んじゃったの・・・・・?」

「気絶させただけ」

 リリスが淡々と言っていた。

 

「うぅっ・・・・・」

 花音がその場に座り込んで、両手で顔を覆った。

 ナナキが傍に来て、花音の背中をさすった。


「どうして泣くの?」

「だって、あんなに魔法少女が死んじゃった。知らない子たちだけど、可哀そうだよ。悲しいに決まってる・・・」

「そっか・・・」

 リリスが長い瞬きをして杖を消した。


「リリス・・・」

「そうゆう感情、昔は私にもあったのかな? もう、忘れちゃった」

 月を見ながら、すっと飛んで木の枝に腰を下ろしていた。

 平静を装っていたが、どこか寂しそうだった。

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― 新着の感想 ―
読みにきました。 魔法少女、脳内が勝手に◯リキュアを想像してしまいました 魔法少女は何人いるんだろう。気になる事が沢山です。 お話はこれから進んでいくみたいなので これからもがんばってください
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